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コラム

  • 円形足場とは?組み立て方や注意点を解説
    私たちが普段目にする建物のデザインは、その多くが直線的なデザインです。
    直線的なデザインは、建物をつくりやすいということ以外に、容積を大きく取れるメリットがあります。

    一方、代表的なものとして石油タンクやガスタンクなどの用途を重視した構造物では、
    曲線的なデザインが採用される場合があります。
    石油タンクやガスタンクは、外気の温度により内容物が膨張することがあるため、
    その圧力を均等に受けられる丸い形となっています。

    またホテルや商業施設などにも曲線を活かしたデザインが多く見られるようになりました。
    これら円形状の構築物を建設する場合においても、足場が必要となります。

    今回は、これら円形状の建築工事に利用される円形足場について解説します。
     


    ▼ 目次
     1.円形足場とは
       2.  円形足場の組み立て方
            2-1.  円形足場ではCADを利用し割り付けを行うと便利
            2-2.  足場を安定させるため建地は敷板の中央に
            2-3.  建地を伸ばした際の安定性を重視して設置する
            2-4.  足場の骨格を決める腕木
            2-5.  足場の固定は最重要ポイント
            2-6.  三角形の隙間にうまく足場板をはめる
        3.  円形足場を設置する際の注意点
           3-1.  落下防止の対策
         3-2.  足場を変更した場合の安全点検が重要
           3-3.  他の職人からの注文を確認する
       4まとめ

    1.円形足場とは

     

    一般的な足場は、最長1800㎜から300㎜刻みで直線的な形状のため、
    円形状に足場を組む場合は、直線的な足場板を細かく組み合わせなくてはなりません。

    円形の構造物に対して足場を組む場合は、建物の外壁を傷つけずに直線的な板を円形に設置し、
    さらに安全性を確保しながら作業性を上げることができるかどうかが重要です。

    2.円形足場の組み立て方

    円形足場を組み立てる上で問題となるのが、直線的な足場資材をどのように円形状に構成するかということです。
    ここでは、円形足場の組み立て方について説明します。

    2-1.円形足場ではCADを利用し割り付けを行うと便利



    円形足場を組み立てる準備として、足場の割り付けを行います。
    通常の足場であれば、割り付けは構築物の図面から計算することができますが、
    曲線的な構築物の場合は計算だけで足場を割り付けることは難しいでしょう。

    複雑な曲線に対して足場を割り付ける場合は、CAD(Computer Aided Design)を利用すると便利です。
    CADとはコンピュータ支援設計と言われる、コンピュータ上で図面を描くソフトウェアのことです。

    CADに図面を読み込み、円形状の外壁に対して既定サイズの足場板が接線と平行になるよう設置することがポイントです。

    CADを使うことで、図面上に描かれている円弧に対して簡単に接線を引くことができ、
    足場板の中心が接点になるよう配置することが可能です。

    配置した1枚目の足場板を基準に、建物を囲うように割り付けを行います。
    2枚目以降は建物側の角部が隣の板と重なるようにすると、足場と足場の間に三角形の隙間ができます。
    この時点では、この三角形の隙間は無視して割り付けを進めて下さい。

    最後の1枚が寸法的に収まらない場合は、サイズを変更して割り付け、
    全体を見てバランス良く足場板が配置されていれば割り付けは終了です。

    2-2.足場を安定させるため建地は敷板の中央に


    割り付けができたら、実際に現地で足場を組みます。
    まずは、足場の土台となる敷板の設置です。
    直線的な足場であれば、建物に対して平行に設置すれば良いですが、
    円形足場の場合は足場を割り付けた時のように円弧状に設置する必要があります。

    足場の割り付けを参考に、建地の下に敷板が来るように設置しなければなりません。
    敷板については細かな位置を調整する必要はありませんが、
    できるだけ建地が敷板の中央付近に来るように配置すると足場が安定するでしょう。

    2-3.建地を伸ばした際の安定性を重視して設置する


    敷板を設置後、建地の位置を決めるためジャッキベースを配置します。
    ジャッキベースは割り付けを参考に、ある程度調整ができるところに配置しましょう。

    ジャッキベースは、後の作業で建地の位置を微調整する必要が考えられるため、
    ここでは厳密な位置調整をする必要はありません。

    ジャッキベースに建地を設置したら、1段目の建地の高さを合わしましょう。
    足場を上に伸ばしていった時に、接合部が合っていないと不安定な足場となる可能性があります。

    円形足場の特徴として、通常の足場は1本の建地を左右で共有していますが、
    放射状の円形足場は外側の建地を、あらためて単管や腕木などで連結する必要があります。そのため事前に高さや位置を合わせておくことが大切です。

    2-4.足場の骨格を決める腕木


    足場板の幅に設置した2本の建地は「腕木」により連結します。
    さらに筋交いを付けることで、足場の骨格となり安定した状態になります。

    骨格が安定した状態で、実際の建物の外壁と足場の位置関係を確認しましょう。

    2-5.足場の固定は最重要ポイント


    足場の骨格ができたら、2段目以降の組み立てを行い、上に伸ばしていきます。
    この時に隣の建地と別途単管等で連結して、足場が倒れないように固定します。

    隣の建地と連結できない場合は、アウトリガーの取り付けや敷板などにジャッキベースを直接固定するなどで、
    足場全体が安定するように補強しましょう。

    2-6.三角形の隙間にうまく足場板をはめる


    建地に足場板を設置する際、割り付け時に三角形となっていた隙間にも、
    足場板を取り付ける必要があります。

    資材メーカーによっては、隙間の三角形に合う専用の足場板が提供されている場合もあります。
    しかし形が合わない場合は、足場板がはみ出てしまうため、通常の足場板を番線と呼ばれる針金などを使って固定します。

    番線は昔から足場の作業で使われている消耗品で、結束や緊結に使われているものです。
    昔は木材の足場の柱や梁の固定に番線を使用していました。
    現在の金属製の足場においても番線を使う機会は多くあります。

    最後に足場板のガタつきが無いことを確認し、隙間が広いところは層間ネットを設置して完成となります。

    3.円形足場を設置する際の注意点

     
    円形足場を設置した場合、注意点がありますので説明します。

    ・落下防止の対策
    ・足場を変更した場合の安全点検が重要
    ・他の職人からの注文を確認する


    3-1.落下防止の対策


    円形足場の注意点として、足場と建物の隙間が一定ではないことです。
    円形足場で安全に作業を行うために、足場の隙間に対しては落下防止対策の措置が必要です。

    落下の危険がある隙間については、層間ネットなどを設置して落下防止対策をしましょう。

    3-2.足場を変更した場合の安全点検が重要

    足場で作業を行う前に作業前点検を行うことが義務付けられています。

    円形足場では建物との距離が一定ではないため、一時的に足場板を外して作業を行う場合があります。
    足場の取り外しや取り付けは、足場の変更となるため作業開始前には必ず点検が必要です。

    3-3.他の職人からの注文を確認する

    円形足場に限らず完成した足場は、利用する鉄筋工や鍛冶工などの職人が
    安全かつ効率的に作業できることが求められます。

    特に建地が密集するところでは職人が作業しづらく、
    足場を組んだ後から「建地が邪魔で作業がやりづらいから修正して欲しい」と言った注文を受ける可能性もあります。

    作業に影響しないように足場の割り付け時から職人と打ち合わせをして、
    事前に依頼事項を反映するようにしましょう。
     
       

    4.まとめ


     
    今回は円形足場について解説しました。
    実際には、特別な理由がない限り円形状構築物は多くありません。
    しかし、足場の組み立て作業は、作業に必要となる形に合わせて組まなければならないため、
    今回紹介した円形足場の組み方を参考にして下さい。
  • 足場業界の今後や将来性は?現状から考える今後の展望   
    2018年6月に働き方改革関連法案が成立し労働基準法が改正されました。
    2019年から建設業など一部の業界を除き施行された、改正労働基準法の大きなポイントは、
    時間外労働時間の上限規制が明確に定められたことです。

    建設業や運送業、医師などに対しては法の適用に猶予期間が設けられていましたが、
    2024年4月以降は解除され、法律を遵守しなければなりません。

    一方、2020年に世界へ感染が広がった新型コロナウイルスは、私たちの生活に大きな影響を及ぼしました。
    感染拡大を防ぐため、人やモノの流れが停滞して経済活動に大きな影響を与えたのです。

    株式会社帝国データバンクの調査によると、
    2023年9月時点で2020年2月以降新型コロナ関連によって倒産した企業の累計は6600件以上にのぼります。

    今後、建築業界を取り巻く環境はどうなるのでしょうか。
    今回は、足場業界の将来性にも大きく関係する建築業界の現状から、今後の展望について解説します。

    ▼ 目次
     1.建設業界の現状
            1-1.  資材高騰
            1-2.  2024年問題
            1-3.  倒産件数増加
       2.  足場業界の将来性は?
       3.  今後に備えて準備すること
           3-1.  新3Kの実現
         3-2.  DX化による業務効率を上げる
           3-3.  資格取得制度を確立する
       4まとめ

    1.建設業界の現状

     
    建築業界の主な課題として、次のことが挙げられます。

    ・資材高騰
    ・2024年問題
    ・倒産件数増加
     

    1-1.資材高騰

    国土交通省が2022年6月に公表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によると、
    建設事業者へのヒアリングで「資材価格高騰による影響が出ている」と回答した事業者は約90%、
    そのうちの約60%が「影響が大きく出ている」と回答しています。

    また、一般財団法人建設物価調査会のデータによると、東京における2022年3月時点の建設資材物価指数は、
    前年同月と比較して14.9%増加しています。

    足場工事や建築に欠かせない鉄骨に使用する鋼材も価格が高騰し、
    この現象は「アイアンショック」と呼ばれています。

    アイアンショックが発生した原因の一つは、鋼材の急激な需要拡大です。
    新型コロナウイルスの影響で一時は減少した鋼材の需要が、世界の経済活動が徐々に戻り始めると同時に拡大し、
    世界規模で鉄鉱石不足となり、鋼材の価格高騰につながりました。

    1-2.2024年問題



    改正労働基準法の猶予期間が終わる2024年4月以降、時間外労働は原則月45時間以内、
    年360時間以内と制限がかけられます。

    大手企業をはじめとする各社は、2019年から働き方の工夫に取り組んでおり、
    就業管理を厳密化するなどして、法律を遵守する体制を整えつつあります。

    現場で働く人が無理な長時間労働を強いられることが無くなり、
    企業のイメージアップにつながるチャンスとなるかもしれません。
    一方、工事現場の日程管理や作業指示などを行う施工管理業務については、
    依然として担当者の負担が大きく、さらなる改善が必要です。


    1-3.倒産件数増加

    帝国データバンクが実施した調査では、2022年度の建設業における倒産件数は1291件でした。
    2020年度の倒産件数1167件や2021年度の1084件と比べると約10%から20%増加しています。
    その主な要因は「物価高騰」と「人手不足」とされています。

    新型コロナウイルスの感染拡大により工事の遅れや新規工事の受注が伸びなかったことに加え、
    ロシアによるウクライナ侵攻、円安などの影響で、鉄骨を始めとする様々な建設資材が高騰しました。

    資材が高騰しても入手できれば良い方で、1割以上高価な資材に変更しても予定通りに届かないといった事態もありました。
    このような事態によって、工事を中断しなければならない状況が続き、
    建設会社の負担が大きくなったことで倒産件数が増えました。

    また、建設業界の課題である人手不足も倒産の原因となっています。
    労働年齢の高齢化や給与水準の問題に加えて、建築工事の需要拡大により、
    施工管理者などの現場を管理する人材が不足している状況です。

    2.足場業界の将来性は?

    建築業の一部を担っている足場業界の将来性はどうでしょうか。
    建築業界とは切り離せない足場業界も、同様の課題があります。


    資材高騰については、足場工事で使用する資材の多くは、
    国内で賄っているため、円安による影響は少ないと考えます。

    深刻な問題は人手不足で、専門の職人(とび職)の高齢化による退職と若手の離職率の高さから、
    足場業界は慢性的な人手不足に陥っています。

     

    3.今後に備えて準備すること

      
    人手不足を解消するためには、現状分析が必要です。
    一般的に人手不足の中には「人材不足」も含まれているようです。
    人手不足は単に働き手が足りていない状態のことで、
    人材不足は必要な能力やスキルを持った人がいない状態のこと言います。

    足場の作業を行うとび職人は、専門的で高度な知識と技能が必要なため、一定期間の経験が必要です。
    ここでは、人手不足と人材不足に対応する方法について解説します。

    3-1.新3Kの実現

    人手不足・人材不足対策として、新3Kの取り組みがあります。
    新3Kとは、「給与・休暇・希望」の頭文字Kのことです。

    国土交通省は、建設業全体の働き方や待遇を支えて行くために、
    新3Kを掲げました。昔の3Kは「きつい、汚い、危険」とネガティブなイメージでしたが、
    新3Kによってイメージを払拭する動きがあります。

    給与については、一般社団法人日本建設業連合会から「労務費見積もり尊重宣言」が発表され、
    建築業全体の賃金を全産業の平均レベルに近づけるための取り組みを行っており、
    休暇については、働き方改革関連法案によって労働環境の改善に向かっています。

     

    3-2.DX化による業務効率を上げる

    次の課題として業務のDX化があります。
    足場作業を円滑に行うためには、作業者も必要ですが管理・監督者も必要です。

    現場の作業が終わってから事務所に戻って仕事をしていては、管理・監督者の時間的な負担が増えるばかりです。
    そこで、DX化による業務の効率化が必要になります。

    代表的なDX化としてはクラウドシステムの導入でしょう。

    資材発注や会計処理、工事の進捗報告などクラウドシステムで行うことで、
    現場にいてもスマホやタブレットを使って事務作業を行うことができます。

    また2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、
    取引先に個人事業主などの免税事業者が多い場合、会計処理を正確に行わないと税負担が大きくなる可能性があります。

    2024年1月からは電子帳簿保存法が改正され、請求書などは印刷して保管することが認められなくなります。
    今までの会計システムでは対応できない場合、新たな制度に対応したシステムの導入を検討しなければなりません。

    DX化によって現場から発注や経費処理、進捗報告などをできるようにして、人手不足・人材不足に対応する必要があります。


    3-3.資格取得制度を確立する



    とび職人になるには、「足場の組立て等特別教育」や「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」などの資格取得は不可欠です。
    また一人前の職人になるには、「足場組立解体作業主任者」や「鳶技能士」などの資格も必要となります。

    資格取得にかかる全費用を負担する、資格取得者による後輩の育成など、
    会社側が資格取得に向けてサポートする体制を作ることが重要です。

    4.まとめ

     

    難しい課題もある足場業界ですが、今後は現場での長時間労働規制や、DX化による業務効率の改善など、
    働きやすく魅力的な仕事になる可能性を大いに秘めているのも現実です。
    若手の育成も含め、誰もが働きやすい業界へとイノベーションし続けていくことが、
    足場業界の展望を明るくするのではないでしょうか。
  • マンション大規模修繕工事の市場動向は?今後の課題や予想について
    日本のマンションの建築は、大きく分けると2つの時期に集中的に行われてきました。

    1つ目は高度成長期です。日本の高度成長期は、1955年~1973年までの19年間の経済成長のことを言います。
    当時の日本は終戦から10年が経ち、自動車や電気・機械を始めとする産業が、海外からの最新技術を取り入れ、
    急速に経済が発展した時代でもあります。

    急速な経済発展を支えるために、多くの労働者が住むための住宅が必要となったのです。
    そこで国は1955年に日本住宅公団を設立し、画一的な板型RC造の集合住宅が何棟も連なる
    「団地」を日本全国の各都市に建設しました。

    2つ目はバブル期です。バブル期とは、1980年代後半から1990年代初頭までの好景気だった時代のことを言います。
    バブル期が誕生した背景として、莫大な不動産投資があります。

    当時建築されたマンションの販売価格は、数億円を超えるものも多く、「億ション」とも呼ばれていました。
    そのような高額マンションでも飛ぶように売れていた時代だったのです。

    そして現在では、当時建設した多くの大規模建築物の老朽化が問題となっています。
    そこで今回は、マンションの大規模修繕工事の現状について解説します。


    ▼ 目次
     1.マンションの大規模修繕とは
       2.  マンションの大規模修繕の市場について
       3.  マンション大規模修繕の課題と今後
        4.  マンション大規模修繕が必要な理由
           4-1.  中性化
         4-2.  塩害
           4-3.  アルカリ骨材反応
         4-4.  凍害
       5.  マンション大規模修繕での足場の必要性
       6まとめ

    1.マンションの大規模修繕とは

     
    マンションのような大規模な建築物には、一般的に鉄筋コンクリートが用いられます。
    鉄筋コンクリートとは、鉄筋を組んで周囲をコンクリートによって固めることで、
    強固な柱や床などを形成するものです。

    コンクリートは、圧縮に強く引っ張りには弱い材料です。
    一方、鉄筋は、圧縮には弱く引っ張りには強い材料です。
    コンクリートと鉄筋を組み合わせることで、建物に発生する圧縮や引っ張りの力に耐えることができます。

    また鉄筋は錆やすく、熱に弱いという欠点がありますが、コンクリートで鉄筋を覆うことで、
    鉄筋の錆を防止して熱からも守る役割があります。

    鉄筋コンクリートの法定耐用年数は47年とされており、寿命が長いことも大きな特徴です。
    しかし建物には地震や台風など、一時的に大きな力がかかることがあり、
    想定を超える大きな力が加わった場合は鉄筋コンクリートの寿命に影響があります。

    大きな力を受けない場合でも、鉄筋コンクリートのマンションは13年から16年の周期で
    定期的に老朽化した設備や躯体の修繕が必要です。

    マンションには多くの人が住んでいるため、定期的な修繕であってもその工事規模は大きくなり住人に負担がかかります。
    しかしマンションで長い間安心して暮らすためには、定期的に大規模修繕を行わなければなりません。

    2.マンションの大規模修繕の市場について

    高度成長期とバブル期に多くのマンションが建築され、現在もそれらのマンションを維持するために、
    定期的に大規模修繕が行われています。
    高度成長期とバブル期以外にもマンション建築は行われており、今後も新たなマンションが建設されることでしょう。

    国土交通省の審議会である住宅宅地分科会において、
    今後のマンションの管理適正化及び再生の円滑化のあり方について報告がありました。

    その報告の中で、築40年超のマンションは81.4万戸あり、10年後には約2.4倍の197.8万戸、
    20年後には約4.5倍の366.8万戸と高経年マンションが増加するとされています。

    参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」
    https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

    これらのマンションを維持するためには、定期的な大規模修繕が必要ですが、
    タワーマンションなどの出現により年々修繕の大規模化が進んでいます。

    また修繕工事の専門化や複雑化も進んでいる状況です。
    大規模修繕を必要とするマンションが増加する一方で、修繕工事のできる業者は限られています。

    3.マンション大規模修繕の課題と今後

     
    マンションの大規模修繕工事についてはいくつかの課題がありますが、特に深刻なのが周期的な修繕工事の実施です。

    国土交通省の住宅宅地分科会では、大規模修繕が必要な時期を迎えるマンションに対して、築40年以上のマンションの約4割、
    築30年以上のマンションの約2割が適切な時期に大規模修繕が実施できていない可能性があると報告されています。

    特に築年数の古いマンションについては、所有者の高齢化や管理組合の担い手不足、
    住人の修繕工事実施の同意など様々な問題があります。

    また古いマンションでは空き住戸もあり、修繕工事に必要な費用を準備できないこともあるでしょう。
    大規模修繕を必要とするマンションが増える状況に変わりはありませんが、計画的に修繕工事を行うことが課題となっています。


    参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」
    https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf
     

    4.マンション大規模修繕が必要な理由

     
    多くのマンションは鉄筋コンクリートでつくられています。
    マンションは大きな建物であるため、修繕工事も大規模になります。
    鉄筋コンクリートで建てられているマンションについて、大規模修繕工事が必要な理由を説明します。

    4-1.中性化

    中性化とは、コンクリートのpHが中性化することです。
    施工初期のコンクリートは強アルカリ性であり、鉄筋の腐食を防止する効果がありますが、
    時間が経つとコンクリートの中性化が進みます。コンクリートの強アルカリ性を低下させる要因として、
    酸性雨や熱などがあります。

    建物外壁部のコンクリートは、雨や太陽光の影響を直接受け、
    雨や太陽光に長期間さらされることによってコンクリートが中性化します。
    コンクリートの中性化によってpHが10程度になると、内部の鉄筋が腐食し始めると言われています。

     

    4-2.塩害

    塩害とは、コンクリートに浸透した塩化物イオンによって生じる鉄筋コンクリートの劣化のことです。
    塩化物イオンが内部に浸透し、鉄筋まで到達すると鉄筋を腐食させます。

    海辺の近くや海から離れていても海からの潮風を受けるような高層マンションでは、
    塩害が発生しやすいと言えるでしょう。


    4-3.アルカリ骨材反応

    アルカリ骨材反応とは、コンクリートをつくる時に一緒に混ぜた砂利や砂などの骨材の成分が、
    コンクリートのアルカリ性水溶液と反応して、骨材が異常膨張することです。

    骨材が異常膨張すると、コンクリートにひび割れなどの現象が発生します。
    アルカリ骨材反応によってコンクリートがひび割れてしまうと、コンクリートの強度低下や鉄筋腐食の原因となります。


    4-4.凍害

     凍害とは、寒冷地においてコンクリート内部の水分が凍結して膨張する現象です。
    長年の間、凍結と融解を繰り返すことによりコンクリートの劣化が進行します。

    マンションで凍害が発生しやすい部位としては、突出部や水が流れる経路、日射が当たる南面に発生する傾向にあります。
    凍害による劣化が進行すると、ひび割れの進行以外にコンクリートのはく離・はく落が発生して、安全性などに影響を及ぼします。
     

    5.マンション大規模修繕での足場の必要性

     
    マンション大規模修繕では、鉄筋コンクリートの劣化状態を確認して、
    劣化が進行する前に補修しなければなりません。

    コンクリートの劣化は主に外壁側から始まるため、修繕工事も外壁が中心となります。
    そのためマンションの大規模修繕工事には足場が必要となります。

    マンションの大規模修繕工事で組む足場自体は、新築時と大きな違いはありませんが、
    修繕工事の際には住人に対する配慮が必要となります。

    特に配慮しなければならないことは防犯対策です。
    マンション大規模修繕工事で建物全体に足場を掛けると、高層階の部屋でも容易に外から侵入することが可能になります。

    実際にオートロック付きのタワーマンションで、大規模修繕工事が行われた時に足場を利用した窃盗事件が発生したことがありました。

    大規模修繕工事時における窃盗事件防止の対策として、足場の出入り口を施錠管理したり防犯カメラを設置したりして、
    工事関係者以外は足場に立ち入りできないようにする必要があるでしょう。

    最近では、防犯ニーズの高まりから養生枠の需要も増えています。



    中央ビルト工業:「スカイフェンス」
    https://premium.ipros.jp/chuo-build/product/detail/2000355805/?hub=163&categoryId=58317

    不審者が建物内に侵入するのを防いだり、外部からの視線を遮断したりするためにも、しっかりと養生を行うことが大切です。

    6.まとめ


    高度成長期やバブル期に建築されたマンションの中には、
    老朽化で解体されているものもありますが、現存するものも多くあります。

    今後もマンション建設は行われるため、定期的に大規模修繕の必要なマンションは増加する傾向です。
    マンションに限らずどの建物についても、定期的に修繕する必要がありますが、
    マンションの場合は建物自体が大きいため、希望する時期に工事ができない可能性があります。

    マンション大規模修繕における足場工事のニーズは今後も増加傾向となるでしょう。
    そのため、多様なニーズに対応できる施策が求められています。
  • 【足場の歴史】足場工事はいつから始まった?
    日本の建築物は、直線的な材料である柱と梁を組み立ててつくられたものが多くあります。
    柱と梁を組み立てる工事において、高いところで作業を行う場合は、足場が必要となります。
    古くから建築物を建てる場合には、当然足場を組んで作業をしたことでしょう。
    今回は、足場の歴史について解説します。


    ▼ 目次
     1.そもそも足場とは何か
       2.  足場工事が始まったのはいつから?
       3.  足場の歴史
           3-1.  飛鳥~奈良時代
         3-2.  平安時代
           3-3.  鎌倉時代
         3-4.  江戸時代
         3-5.  近代
       4まとめ

    1.そもそも足場とは何か

     

    そもそも足場とは、人の足が乗る場所のことです。
    建設現場では、足場に乗って作業者が移動や作業を行います。

    人が作業や移動をするために、ある程度の強度は必要ですが、建設工事が終了すると解体されるため、
    建物に使われる柱や梁とは違って、簡易的なつくりとなっています。
    足場に求められる機能として、人が乗って作業や移動を行う以外に、組み立てやすく解体しやすいことが挙げられます。

    2.足場工事が始まったのはいつから?

    足場工事がいつから始まったという明確な記録がありません。
    明確な記録はありませんが、現存する建築物から推測されています。
    現存する日本最古の建築物は、奈良県にある法隆寺です。

    法隆寺は世界最古の木造建築で国宝であり世界遺産でもあります。
    法隆寺には、高さ32.5メートルの五重塔があり、建築時には大規模な足場を組んで工事が行われたことでしょう。

    そのため法隆寺が建てられた飛鳥時代には、本格的な足場工事が行われていたと推測されています。
    しかし日本の弥生時代には、高床式倉庫が多く建てられたとされており、それらを建築する時にも足場が必要であったと推測されます。

    高床式倉庫は床が高い位置まで上げられているため、梁や屋根などはさらに高い場所で作業しなければなりません。
    そのため、法隆寺建築以前から足場工事が行われていた可能性はあるでしょう。

    3.足場の歴史

     
    現存する日本最古の建築物である法隆寺が建立された時代から足場の歴史を振り返ってみましょう。

    ・飛鳥~奈良時代
    ・平安時代
    ・鎌倉時代
    ・鎌倉時代
    ・近代

     

    3-1.飛鳥~奈良時代

    西暦700年代の奈良時代の遺構から、建築時の足場跡と見られる「足場穴」が発見されています。
    奈良時代の建築物は、地面に直接柱を立てるのではなく、礎石の上に柱を立てるようになりました。

    礎石を柱の下に設置することで、より大きな重量を柱で支えられるようになり、
    高さがある大きな建物を建てやすくなりました。
    建物が高くなると高所での作業が必要となり、作業用の足場が必要となったのです。

    足場の材料は主に竹や木材で、日本では竹や木材が豊富にあったので、足場工事が普及したと考えられています。
    また奈良時代には清水寺も建てられており、「清水の舞台」の舞台をつくる時にも大規模な足場が組まれていたことでしょう。

     

    3-2.平安時代

    西暦700年代後半は、平安時代になります。
    平安時代になると寝殿造りと呼ばれる建築物が多くつくられました。
    寝殿造りは、高い建物ではありませんが、東、西、北に対屋 (たいのや) を設け、廊でつなぐ構造となっています。

    決して高くはありませんが、柱に長い梁を組むため、横方向に長い足場が必要です。
    平安時代においても、足場工事は行われていました。
    平安時代に書かれた書物として、竹取物語があります。

    この竹取物語の中に、「高いところに登る」という意味の「麻柱(あなない)」という言葉が使われています。
    「まめなる男二十人ばかり遣はして、あななひに上げすゑられたり。」と詠まれており、
    意味は「忠実な家来の男を二十人ばかり派遣して、高い足場を組んでその上に登らせた。」ということだそうです。
    [参考:日本建築史の研究・福山敏男/総芸舎](平城宮、山田寺他)

    当時多くの作業者が高い足場の上で、梁の組み立て作業を行っていたことが想像できるでしょう。

    3-3.鎌倉時代

    西暦1100年代後半は、鎌倉時代になります。
    鎌倉時代には、仏教に多くの宗派が生まれ、建築の分野にも様々な変化がありました。
    鎌倉時代の代表的な建物として、東大寺の南大門があります。

    東大寺の南大門は、高さが25.46メートルあり、国内最大の山門です。
    南大門は中国から伝わった建築様式で建てられており、
    上層と下層の両方に屋根がある二重門と呼ばれる2階建ての門です。

    南大門には21メートルもある柱が18本使われていて、柱は屋根裏まで達しています。
    南大門の柱や梁を組み上げる時に、足場は利用されていたでしょう。

    3-4.江戸時代



    出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 
    https://colbase.nich.go.jp

    西暦1600年代は、江戸時代になります。
    奈良時代から1000年近く経ちますが、足場は長い丸太を使ったものに変わりはありません。

    徳川家康が江戸幕府を開き、多くの人たちが江戸に集まってきました。
    江戸には様々な仕事が増え、足場の組み立てや足場の上で作業する人たちのことを鳶職と呼ぶようになったのも江戸時代です。

    鳶職は高い場所で作業を行うこと以外に、火災の現場でも活躍しました。
    鳶職は普段は建築現場にいるので、建物の構造に詳しいです。
    江戸時代の消火活動は、破壊消火と呼ばれるように、火を消すのではなく延焼が広がらないように、
    延焼先となる建物を先回りして解体しました。

    鳶職は火災が発生するといち早く現場に行って、延焼先の建物を手際よく解体します。
    江戸では人口増加とともに鳶職も多くいました。大工、左官、鳶職は「華の三職」と言われて、人気の仕事だったそうです。

    消火活動も行っていた鳶職が着ていたものを火事羽織と呼んでいました。
    火事羽織は木綿地を刺し子にしたもので、表はシンプルな籠目模様(かごめもよう)ですが、
    裏地には派手な描絵模様(かきえもよう)が描かれています。

    火消し作業が終わると、羽織を裏返しにして、
    地味な籠目模様から派手な描絵模様を見せびらかしながら江戸の町を練り歩いたと言われています。

    3-5.近代


    日本の足場の歴史が大きく変わったのが、西暦1900年代中期です。
    明治時代以降、日本に海外の発展した技術が多く伝わりました。

    その中でも製鉄技術については海外の生産性の高い技術によって、鉄が大量に生産できるようになりました。
    鉄を大量に生産できるようになると、それまで木材を材料としていた製品が、丈夫な鉄製に変わっていったのです。

    そして1954年、東京大手町にある東京産業会館での建築工事で、日本で初めて鋼管の足場が用いられました。
    この時期から丸太の足場から鋼管の足場に変わってきました。

    また足場の種類もくさび式足場や枠組み足場など、工事現場に合わせた足場が組めるようになったのです。
    長年利用されていた丸太の足場ですが、丸太そのものの上を歩いていたため、作業者は不安定な状態で作業を行っていました。

    そのため、足場からの転落事故も頻繁に発生していたのです。
    丸太の足場から鋼管の足場に変化したのに合わせて、足場に幅を持たせるようになったのもこのころから行われるようになりました。
    現在足場には手摺や中さんの設置が義務付けられており、安全で安心な足場へと発展したのです。


    4.まとめ


    日本の足場は日本建築の歴史と共に歩んできました。
    世界的には、紀元前2500年にエジプトのピラミッドの建設で足場が利用されていたという説があり、
    紀元前214年に中国では万里の長城の建設でも足場が使われていたと言われています。

    日本の建築技術の多くは中国から伝来しており、大きな影響を受けて発展してきました。
    史実としての記録はありませんが、日本でも弥生時代くらいから足場を使った建設工事が行われていたことでしょう。

    昭和初期までは、丸太の足場に大きな変化はありませんでしたが、
    現在では軽くて丈夫かつ自由に組める便利な足場が利用されています。
    建築技術は今後も進歩が期待されているため、新たな建築技術にあった足場の発展を期待しましょう。
  • 足場屋は大変?仕事できついといわれるポイント7選!
    最近聞かなくなった言葉ですが、「3K」という言葉があります。
    「3K」とは、1990年頃に流行した言葉で、「きつい・汚い・危険」の頭文字を取った言葉です。

    1990年頃の日本は、バブル景気が頂点に達し、就職も超売り手市場でした。
    超売り手市場だったため、「3K」と呼ばれる職種は敬遠される傾向がありました。

    現在でも「3K」と呼ばれる職種があり、建築業界は「3K」の代表的な職種とされています。
    建築業界の中でも、高い場所に真っ先に上がり、安全に作業を行うための足場を組み立てる職人の仕事はきつく・危険な作業です。

    今回は、足場屋の仕事内容を説明し、きついと言われるポイントについて解説します。


    ▼ 目次
     1.足場屋の仕事内容
       2.  足場屋の仕事できついこと7選
           2-1.  朝が早い
         2-2.  材料が重い
           2-3.  上下関係が厳しい
         2-4.  天候の影響を受ける
         2-5.  危険な高所作業
         2-6.  時間に追われる
         2-7.  現場が終わっても次の日の準備がある
       3.  女性には足場屋の仕事はきつい?
       4.  足場屋はきついけど儲かる?
       5.  まとめ

    1.足場屋の仕事内容

      
    足場屋の仕事内容は、建築作業を行うための足場を組み立て・解体することです。
    足場を組み立てるためには、事前に足場を組み立てる現場を確認しておく必要があります。

    理由は、建築する建物と工事で使用できる敷地を確認して、どのような足場を組むのかを決めなければいけないからです。
    またどのような足場を組むかだけでなく、足場の資材を運搬するトラックの位置や資材の搬入経路などの確認も必要です。

    足場を設計する時に行うのが、足場の割り付けです。
    足場の材料には規格があり、決まった寸法となっています。
    決まった寸法の足場部材を、建築する建物に合わせて組まなければなりません。

    建物と足場の隙間が適切になるように、足場屋は足場の割り付けを行います。
    建築工事が完了した後は、足場を解体しなければなりません。
    解体する時も、トラックの位置や資材の搬出経路を確保する必要があります。

    建物が無かった時は資材を搬入できたが、建物が完成した後に資材が搬出できないということはあってはなりません。
    建築工事を効率的に行うために、足場屋の役目は重要と言えます。


    2.足場屋の仕事できついこと7選

     
    ここでは、足場屋の仕事できついことについて次の7つを紹介します。
    ・朝が早い
    ・材料が重い
    ・上下関係が厳しい
    ・天候の影響を受ける
    ・危険な高所作業
    ・時間に追われる
    ・現場が終わっても次の日の準備がある

     

    2-1.朝が早い



    多くの建築作業は、日中に行われます。
    足場は建築作業を行うのに必要なため、早朝から作業を開始することが多いです。
    他の職人が集合する前から作業を行い、他の職人が集合した頃には作業を終えていなければならないこともあります。

    夏場は日の出が早いので早朝から作業して1日の作業時間を長く取れますが、
    冬場は日の出が遅いので暗いうちから作業準備を行い、明るくなったら直ぐに作業に取り掛からなければなりません。

     

    2-2.材料が重い

    足場を組むために多くの資材を使用します。
    一つひとつの資材は人が持てる重さではありますが、一つひとつ運搬していては効率が良くありません。

    作業の効率を上げるにはまとめて運ぶ必要がありますが、資材をまとめると重量が重くなります。
    また、資材を高い場所に持ち上げることも必要です。持ち上げる作業は、体にとても負担がかかります。

    作業中に足場の材料を落としてしまった場合は、大事故になる可能性もあるので、
    資材の取り扱いは無理をしないで慎重に行わなければなりません。

    2-3.上下関係が厳しい

    足場屋の仕事の多くは、高い場所での作業となるため危険が伴います。
    一瞬の気の緩みが大事故につながるからです。

    危険が伴う作業を集団で行うためには、強いリーダシップが欠かせません。
    経験の浅い作業者が危険な作業をしている時には、厳しい言葉で注意されます。

    親方と呼ばれるような責任者にとって、作業者は家族のような存在であるため、
    作業者がケガをしないようにと思う気持ちが、つい厳しい言葉になってしまうようです。

    2-4.天候の影響を受ける

    足場屋に限らず、屋外で作業を行う建築工事は、天候の影響を受けます。
    足場工事においては、雨や風が強い場合は作業を中止することもあります。
    雨が降っていたり、風が強く吹いていたりすると、安全に作業ができないからです。

    しかし、小雨や少し風の強い日などは作業を実施するという判断もあるでしょう。
    雨や風以外にも、冬の寒さや夏の暑さも作業者にとって大きな影響があります。

    2-5.危険な高所作業


    足場屋は安全に作業を行うための足場を組む職人です。
    足場屋が作業を行う時は、当然ですが足場がありません。

    安全な足場の無い中で、命綱を頼りに作業を行います。
    安全に作業を行うためのルールはありますが、足場屋は危険が伴う高所で作業を行わなければなりません。

    足場の高さには上限は無く、高さが数メートルの場合や数十メートルの場合、
    さらには数百メートルということもあるでしょう。

    2-6.時間に追われる

    足場の組み立て作業は、建築作業の最初に行われる工事です。
    足場の組み立てが終わらないと、次の作業ができません。

    そのため、時間に追われることがあります。
    通常の建築工事では、足場の組み立て作業時間は適正に確保されていますが、
    天候などによる工事の遅れが発生した場合、
    作業者を増やしてでも要求された時間内に完了するように依頼される場合があります。

    2-7.現場が終わっても次の日の準備がある

    足場屋の仕事は、現地で足場を組み立てるだけではありません。
    朝一番から効率よく作業を行うためには、次の日の準備を前日に行わなければなりません。
    1日現場で作業した後、会社に戻ってから、翌日の準備を行って、当日の作業が終了します。

    3.女性には足場屋の仕事はきつい?


    仕事がきつい・危険と言われている足場屋は男性の仕事とされてきました。
    では、女性が足場屋の仕事をすることはできるでしょうか。

    建築業界に限らず、職人とされている仕事については、高齢化が進んでいます。
    60歳以上の作業者も現役で働いている状況です。

    建築業界では、早い段階から高齢者のような体力的に衰えがある作業者に対する対応が取られています。
    例えば、重い資材の荷揚げなどはできるだけクレーンを使ったり、足場の材料に軽量なアルミを使用して重量を軽くしたりと工夫しています。

    また、工事現場の下見や工事計画を立案する仕事もあるので、足場屋の仕事全てがきついということではありません。
    逆に、女性だからこそできるきめ細かい気遣いや繊細さが必要とされる場面もあるでしょう。

    女性だから足場屋の仕事ができないという理由はありません。
    ただし実際に現場作業を行う場合は、男女問わず体力的な負担は大きいということを忘れないで下さい。

    4.足場屋はきついけど儲かる?


    最近では建築業界で「3K」と呼ばれる原因となっている作業は改善されてきました。
    しかし、足場を組み立て・解体する作業は、体力を使います。

    現在でも人手不足の状況は変わりありません。とは言え建築工事が無くなることはありません。
    限られた職人によって工事が行われます。人手が少ない業種となると、忙しくはなりますが収入は上がります。

    足場屋1年目の給料は月20万円程度と言われていますが、7年目くらいで月40万円の収入がある人もいます。
    職人の世界は実力主義で年齢や学歴は関係ありません。
    仕事が確実で速いとなると、数カ月で収入も増えることでしょう。努力次第で儲かる職業です。

    5.まとめ


    足場屋の仕事について解説しました。どのような仕事であっても楽な仕事はありません。
    建築業界では、2000年以前から「3K」と呼ばれるイメージを払拭する取り組みをしてきました。

    その成果もあって、「3K」と呼ばれる状況は大きく改善されています。
    人手不足の状況は変わりませんが、足場屋は努力次第で若くして高収入を得られる可能性がある仕事です。

    ただし、規則やルールを守らないと危険であり、厳しい仕事であることに変わりはありません。
  • 型枠支保工とは?足場との違いや種類を解説
    建築技術は古くからありますが、日本では19世紀末から飛躍的な発展を遂げています。
    その要因となったのが、国内工場におけるセメントの生産です。

    それまでセメントは海外から輸入していましたが、国内でセメントが供給できるようになると、
    コンクリートを使った建築物が多くつくられるようになりました。

    コンクリートは、セメントに水・砂利・砂を混ぜ合わせてつくる建築材料で、建築物の基礎や柱、
    梁や壁といったものに使用されています。

    強度が高いことが特徴のコンクリートですが、引張応力に弱いという弱点があります。
    この弱点を解消するために、コンクリートの中に鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」が大規模な建築物に採用されています。

    この便利な建築材料を使用するためには、コンクリートを流し込む型枠が必要です。
    今回は、コンクリート作業に欠かせない型枠支保工について解説します。


    ▼ 目次
     1.型枠支保工(かたわくしほこう)とは
       2.  足場との違い
       3.  型枠支保工の種類
         3-1.  パイプサポート式型枠支保工
           3-2.  枠組式型枠支保工
         3-3.  軽量支保ばり式型枠支保工
         3-4.  組立鋼柱式型枠支保工
         3-5.  四角塔式支保工(ID-15)
         3-6.  くさび結合式型枠支保工
       4.  型枠支保工を扱うのに資格が必要?
       5.  型枠支保工の計算
       6.  まとめ


    1.型枠支保工(かたわくしほこう)とは

      

    型枠支保工とは、コンクリートを設計通りの形にするために、型枠を組んで支えて保持することです。
    簡単な言い方をすれば、コンクリートを流し込む際に、型枠が崩れないようにすることです。

    コンクリート作業において、生コンクリートを型枠に流し込む時、型枠の内側には大きな内圧が発生します。
    コンクリートの型枠をしっかりと保持していないと、型枠が壊れてしまうこともあり、
    せっかく流し込んだコンクリートがムダになってしまいます。

    コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、流れ出たコンクリートを片付けなければなりません。

    コンクリートを片付けるためには、硬化するまで工事を中断しなければならないのはもちろん、
    硬化したコンクリートを斫って除去しなければならず、その手間もムダになります。
    コンクリート作業を確実に行うために型枠支保工が重要なのです。

    2.足場との違い

     
    型枠支保工とよく間違えられるのが、足場組み立て工事です。
    足場組み立て工事は、作業を行うための足場を組むことです。

    一方型枠支保工は、コンクリートを流し込むための型枠を支えて保持するための作業のことを指します。
    どちらの作業にも、鉄パイプを使用しているため、建設業界以外の人が見ると同じような作業に見えるかもしれません。

    足場組み立て作業は作業者が高所で安全に作業できるようにする仕事に対して、
    型枠支保工はコンクリートを流し込むための型枠を組んで崩れないようにする仕事です。

    3.型枠支保工の種類


    型枠支保工は、主に次の6種類に分類されます。
    ・パイプサポート式型枠支保工
    ・枠組式型枠支保工
    ・軽量支保ばり式型枠支保
    ・組立鋼柱式型枠支保工
    ・四角塔式支保工(ID-15)
    ・くさび結合式型枠支保工


    3-1.パイプサポート式型枠支保工

    一般的に広く使用されているのが、パイプサポート式型枠支保工です。
    パイプサポート式型枠支保工では、せき板・根太・大引き・パイプサポートという部材を用いて行います。

    せき板とは、生コンクリートが硬化するまで、流れ出ないようにするための板のことです。
    せき板の材料は、主に合板が使われていて、自由に加工ができます。

    せき板の表面は、黄色い樹脂が表面処理されたものが多いです。
    表面処理を行うことで、コンクリートの表面が滑らかで綺麗に仕上がるだけでなく、
    コンクリートが硬化した後に型枠を外す作業が容易になります。

    型枠を支持するパイプサポートは、上下2本の鋼管を組み合わせることで、
    型枠に合わせて自由に調節できます。

    3-2.枠組式型枠支保工

    枠組式型枠支保工は、外部足場に使用する門型の資材(建枠)と、その付属部材を用いる支保工です。
    外部足場を流用するため、効率的な工法と言えますが、通常の足場には生じない、水平方法の応力を考慮する必要があります。

    流用する足場については、足場としての応力以外に、型枠を支える応力を考慮した設計が必要です。

    3-3.軽量支保ばり式型枠支保工

    軽量支保ばり式型枠支保工は、高汎用性のある軽量支保はりを使用して行う方法です。
    型枠のせき板を支持する部材として、根太(ねだ)と大引き(おおびき)があります。

    型枠支保工において根太とは、せき板に接する部材で鋼管や単管パイプ、時には木材を使用する場合があります。
    大引きとは根太を支える部材で、型枠支保工の場合は9センチメートルの角材が使われることが多いです。

    軽量支保ばり式型枠支保工は、主に鉄筋コンクリートづくりの建築物において、
    床の荷重を支える構造床(スラブ)を打設する時に使用されます。

    3-4.組立鋼柱式型枠支保工

    組立鋼柱式型枠支保工は、H形鋼やI形鋼などの様々な断面の形を持つ形鋼の鋼材を現地で組み立て、
    支柱として用いる型枠支持工です。
    1本あたりの許容荷重が大きい材料を使用するため、主に土木作業の工事で使用されます。

    3-5.四角塔式支保工(ID-15)


    四角塔式支保工は、6点の基本部材で構成されており、
    クレーンで吊り上げることのできる支保工です。

    クレーンで吊り上げることができるため、組み立て後に移動することができ、
    作業しやすい場所で組み立てた後に移動することによって、作業効率が向上し工期短縮が可能です。

    許容荷重についても最大24トンもあるため、部材と部材のスペースを広く取れることも特徴です。

    3-6.くさび結合式型枠支保工

    くさび結合式型枠支保工は、支柱1本あたりの許容荷重が6トン程度と大きく、建築、土木工事を問わずに対応できる方法です。

    くさび結合式型枠支保工は、くさびによって簡単に組み立てることができ、使用する工具もハンマーのみで行えます。
    組立てや解体作業が迅速にできることが特徴です。各メーカーからは、システム支保工として多くの種類の製品が販売されています。

    4.型枠支保工を扱うのに資格が必要?



    型枠支保工を行うためには、型枠支保工の組立て等作業主任者という国家資格が必要です。

    型枠支持工を扱う場合は、必ず資格を持った作業主任者の選任が必要です。
    型枠支保工の組立て等作業主任者の資格を取得するためには、
    厚生労働省が認可した団体の型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習を修了する必要があります。
    受講資格は、次の通りです。

    ・型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に3年以上従事した経験を有する者
    ・大学、高等学校又は中等教育学校において土木、建築に関する学科を専攻して卒業した者で、
    その後2年以上型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に従事した経験を有する者

    引用:建設業労働災害防止協会 岡山県支部 
    型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習 

    https://www.kensaibou-okayama.jp/skil-list/940/

    受講するためには、受講資格を証明する書類が必要です。講習の内容と時間は次の通りです。

    ・型枠及び型枠支保工の組立て、解体等に関する知識(7時間)
    ・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識(3時間)
    ・作業者に対する教育等に関する知識(1.5時間)
    ・関係法令(1.5時間)
    ・修了試験(1時間)

    合計14時間の講習であり、2日間に渡って行われます。

    5.型枠支保工の計算


    型枠支保工を行うためには、国家資格も必要ですが、コンクリート打設時の強度計算に関する知識も必要です。

    強度計算を行うことによって、せき板・根太材・大引き材の部材を選定します。
    普通コンクリートの比重は約2.3トン/立方メートルあり、コンクリート打設時は型枠がこれらの重量を支えなければなりません。

    さらに生コンクリートの状態では、たくさんの水分を含んでいるため、比重以上の応力が発生し、
    スラブを打設する時は全ての重量が型枠にかかります。
    また、強度計算はコンクリート打設時の衝撃なども考慮する必要があるため、型枠支保工には高い専門知識が求められます。

    6.まとめ



    近代建築において型枠保持工の役割はとても重要です。
    コンクリートをしっかり支えられる型枠を組み上げなければなりません。

    コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、大きな損害が発生するだけでなく、
    作業の安全性にも影響があります。

    型枠支持工になるには国家資格が必要ですが、様々な形状の型枠を組むためには、
    型枠の強度計算方法についても理解しておくと良いでしょう。
  • 足場設置の届けに必要な書類は?提出前に流れをチェック
    多くのニュースやメディアで「コンプライアンス」という言葉を耳にします。
    日本語に訳すと「法令遵守」と言う言葉になりますが、ただ法律を守ることだけでなく、
    社会的良識を持った企業行動を伴うことが重要です。

    建築業界でも例外ではありません。建築業界では、リスクの高い作業が伴うため、
    災害防止の取り組みにおいては「コンプライアンス」は重要な取り組みと言えるでしょう。

    災害防止に取り組むためには、法律や規則を守る必要があります。
    なぜなら法律や規則で災害を防止するためのルールが決められているからです。

    ルールを守った状態で災害が発生した場合、新たなルールづくりに繋がりますが、
    ルールを守らない状態で災害が発生した場合は、重い行政処分を受ける可能性があります。

    今回は、大規模な足場工事を行う場合に必要となる法的な届け出について解説します。
    届け出をしないで工事を行うと「コンプライアンス違反」となりますので、しっかり理解しましょう。


    ▼ 目次
     1.足場設置の届けとは
       2.  届け出の必要書類
         2-1.  必要書類一覧
         2-2.  ダウンロードの仕方
       3.  届け出の流れ
       4.  電子申請の方法
       5.  まとめ


    1.足場設置の届けとは

      
    建築工事に関する届けについては、労働安全衛生法の第88条第1項から第3項で定められており、
    具体的な内容については労働安全衛生規則の第85条・第86条・第89条・第90条で定義されています。

    足場設置の届け出については、第85条・第86条で定めている別表第7の12に該当するものが対象となります。

    別表第7の12

    労働安全衛生規則 別表第7|安全衛生情報センター
    https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-2/hor1-2-1-m-8.html

    では「足場(つり足場、張出し足場以外の足場にあっては、高さが10メートル以上の構造のものに限る。)」
    となっており、つり足場と張出し足場以外の足場で10メートル以上になる場合は届け出が必要です。

    ただし、足場の組立てから解体までの期間が60日未満のものは対象外となっているため、届け出は必要ありません。
    届け出先は、工事を行う場所を所轄している労働基準監督署になります。届け出は、作業を開始する日の30日前までに提出しなければなりません。

    2.届け出の必要書類


    届け出に必要な書類は以下の通りです。

    2-1.必要書類一覧


    ■様式第20号(機械等設置届)
    届け出の表紙となる書類です。書式が決まっており、以前は労働基準監督署に原紙が置いてありましたが、
    現在は厚生労働省のホームページから原紙がダウンロードできます。

    ■位置図
    工事を行う場所がわかる地図を用意します。工事の位置を示す場合、市町村レベルの広域な地図と、
    敷地内のどの位置で作業をするかという詳細な地図を用意しておくとわかりやすいでしょう。

    ■工程表
    計画した工事の工程表を用意します。工程表は、届け出の対象となる作業がいつから行うことになっているのか確認します。
    届け出を提出した日が、対象となる作業の30日前であるかを確認しましょう。また、足場の組立てから解体までの期間が60日以上であるかも確認します。

    ■平面図
    平面図は、建築物と足場の関係がわかる図面を用意しましょう。平面図では主に次の内容を確認します。
    ・足場の幅
    ・床材との隙間
    ・床材と建地の隙間

    平面図で、足場が40センチメートル以上の幅になっているか、床材の隙間が3センチメートル以下なっているか、
    床材と建地の隙間が12センチメートル未満になっているかを確認しましょう。

    ■立面図
    立面図は、足場の構造についてわかる図面を用意しましょう。立面図では主に次の内容を確認します。
    ・足場の高さ
    ・手摺や中さんの位置
    ・幅木の高さ

    立面図では、足場の高さが10メートル以上または、31メートルを超えていないか確認します。
    また、手摺や中さんの設置位置は適正か、幅木の高さは15センチメートル以上であるか確認しましょう。

    ■詳細図
    計画した足場が基準を満たしているか、平面図や立面図だけではわかり難い場合は、詳細図を作成します。
    詳細図を含めて、計画した足場が基準通りであるということがわかるようにしましょう。



    ■足場部材等明細書
    計画した足場を組むために使用する部材の明細書を用意します
    。足場部材等明細書については、各労働基準監督署のホームページで、
    機械等設置届様式第20号と一緒に届け出用の原紙を提供している場合がありますので、ダウンロードして使用しましょう。

    明細書として必要な項目が記載されているので、該当する足場部材の項目について記入します。
    足場部材等明細書では、どのような種類の足場を組むのか、部材の主要寸法、最大積載荷重について記入します。

    最後に足場の組立て等作業主任者の記入欄もあるので、届け出を提出する前に、足場の組立て等作業主任者を選任しましょう。

    ■構造計算書
    計画した足場の構造計算書を用意します。構造計算書は、足場設置の届け出の中でも重要な書類です。
    構造計算書によって、支柱等の応力計算を行い最大使用荷重が足場の許容範囲内であることはもちろん、
    構造計算に使用した部材の寸法や取り付けピッチの寸法等が、図面と一致しているか確認します。

    計算式を間違えたり、計算に使用した数字が図面と違っていたりしている場合、
    届け出を受理してもらえない可能性があるので注意しましょう。
    構造計算書については、強度計算ができる専門知識を持った人に依頼する以外に、
    専用の構造計算ソフトやExcelを利用したものがあるので活用してみてはいかがでしょうか。



    2-2.ダウンロードの仕方


    書類のダウンロードの仕方としては、
    厚生労働省労働安全衛生規則関係様式のホームページ 
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei36/index_00001.html
    から行えます。
    足場設置届け出に必要な「機械等設置・移転・変更届 様式第20号」のファイルをクリックすると
    様式第20号が表示されますので、ダウンロードをクリックします。

    ダウンロードするファイルはMicrosoft Word形式です。
    行政が提供する書類の多くが、Microsoft Word形式ですが、各都道府県の労働基準監督署では、
    Microsoft Excel形式のファイルを提供している場合があります。

    Microsoft Wordによる書類作成が苦手な人は、Microsoft Excel形式のファイルを利用すると良いでしょう。

    3.届け出の流れ



    必要な書類が揃ったら、届け出を行います。
    提出先は、労働安全衛生法第88条で労働基準監督署長とあり、
    労働安全衛生規則第86条では所轄労働基準監督署長となっています。

    しかし直接所轄の労働基準監督署長に提出するのではなく、
    各労働基準監督署に届け出窓口がありますので、そちらに提出しましょう。

    届け出を提出する時は、書類を2部用意してください。
    1部は労働基準監督署に提出し、1部は届け出の控えとして保管します。
    届け出の際に、書類の内容を労働基準監督署の担当者が確認し、提出書類や内容に大きな不備が無ければ受領してもらえるでしょう。

    内容について不明な点があった場合、その場で質問されることがありますので、労働基準監督署に届け出に行く時は、
    足場作業主任者などの資格を持っている人が行くと良いでしょう。
    質問された内容について、回答できなかったり、説明できなかったりした場合は、届け出を受理してもらえない可能性があります。

    また、足場の届け出を確認できる担当者が不在の時もあるので、
    事前連絡をして届け出日時のアポイントメントを取っておきましょう。

    届け出は、単に書類を提出するだけではありません。書類を受理した担当者は、届け出の内容について審査を行います。
    計画や内容に不備が見つかった場合は、必要な勧告または要請が行われます。

    場合によっては、工事が計画通り開始できないこともありますので、届け出前に内容に不備が無いか確認しておきましょう。

    4.電子申請の方法



    近年、行政業務のデジタル化が進み、足場設置届等の各種届け出を電子申請できるようになりました。
    電子申請を利用する準備として、アカウントの取得やアプリケーションのインストールなどが必要です。

    電子申請であっても、用意する届け出書類に変わりはありません。
    足場設置届を提出する場合には不要ですが、各種電子申請サービスを利用する場合は、
    法人で電子証明書を取得しておくと便利です。

    5.まとめ



    今回は足場設置の届け出について解説しました。
    届け出は書類を提出して終わりではないことを理解してください。

    届け出の期日が作業を開始する30日前となっているのは、届け出を受理してから、
    労働基準監督署の担当者が内容を審査して、不備があれば30日の間で是正するための期間であることを覚えておいてください。

    電子申請によって業務の効率化は図れますが、届け出の経験が少ないうちは直接所轄の労働基準監督署へ提出に行って、
    労働基準監督署の担当者がどのような確認を行うのか、知っておくと良いでしょう。
  • 足場のたてじについて解説!役割や補強方法も紹介
    様々な業種において、その業界だけで使われている言葉がたくさんあります。
    いわゆる「業界用語」です。業界用語を知らないと、業界内でのコミュニケーションに支障が生じるでしょう。

    建築業界においても同様に業界用語があります。
    建築業界ではリスクの高い作業が多くあり、コミュニケーションに支障があると災害や事故の原因になりかねません。

    建築工事の中でも、特にリスクの高い作業として足場組立作業があり、足場組立作業では多くの専門用語が使われています。
    代表的な用語として「たてじ」があります。
    「たてじ」は足場にとって基本であり、重要な役目があるため、言葉を理解していないと仕事になりません。

    そこで今回は、足場作業の基本である「たてじ」について解説します。


    ▼ 目次
     1.足場のたてじとは
       2.  足場のたてじの役割
       3.  足場のたてじの補強方法
       4.  足場の高さ制限
           4-1.  単管足場
         4-2.  くさび緊結式足場
         4-3.  わく組み足場
       5.  足場の最大使用荷重
       6.  足場に発生する応力
       7.  まとめ


    1.足場のたてじとは

      
    「たてじ」とは、足場などの仮設構造物の支柱となる部分のことで、地面に垂直に立てる部材のことです。
    「たてじ」は漢字で表すと「建地」となります。

    「建地」の中でも建物に近い建地を「前踏み」、逆に建物から離れている建地を「後踏み」と言います。
    足場の組み立て作業を行う作業者は、これらの用語を理解して作業する必要があるでしょう。

    2.足場のたてじの役割

     
    建地の役割は、足場全体を支える基礎となります。
    建地は地面と垂直状態にすることで、足場を支える支柱となり、
    足場の重量を建地で受けることになります。

    足場の重量を支えるために、建地を設置する間隔が重要です。
    建地の設置間隔は一般的に1.8メートル、丸太の場合2.5m以内とされています。
    これは、建地に取り付ける布や腕木などの長さが、長いもので1.8メートルと共通化されているからです。

    仮設構造物である足場は、作業を行う構築物によって高さを調整できなければなりません。
    足場の高さを調整するためには、建地の高さを調整します。

    足場を高くする場合、「建地を高くする」とは言いません。
    足場を高くする場合は、「建地を伸ばす」と言います。
    建地を伸ばす場合、地面に近い建地から垂直に立っていることが重要です。

    地面に近い建地が垂直に立っていないと、建地を伸ばしていくうちに足場が斜めになってしまい、崩壊する危険性があります。
    建地の役割を果たすために、建地を垂直に立てることが大切です。

    3.足場のたてじの補強方法


    建地を伸ばしていく場合、地面と垂直に立てる以外に、建地で支える重量が増えることを忘れてはいけません。

    建地の材料は、単管と呼ばれる鋼管で作られており、支えられる重量は決まっています。
    建地を伸ばしていく時の注意点として、建地の許容荷重を超える場合は、建地を補強しなければなりません。

    主な足場の種類として、単管足場、くさび緊結式足場、わく組み足場などがありますが、
    どの足場でも地面と垂直に立てる支柱は建地と言います。

    建地を補強する方法は、足場の種類に関係なく同じです。
    建地を補強する方法としては、同一個所の建地を2本組みにして補強します。

    単管足場の場合、足場の組み合わせが自由にできるため、建地を2本組にすることは容易にできます。
    くさび緊結式足場やわく組み足場の場合は、各メーカーでユニットとして強度が保証されているため、
    建地の補強方法は各メーカーに確認すると良いでしょう。

    4.足場の高さ制限



    建地を補強しなければならない理由は、労働安全衛生規則第571条の第1項第3号で、
    建地の最高部から測り31メートルを超える部分については、建地を2本組にしなければならないと決められているからです。

    ただし建地の下端に作用する設計荷重が、当該建地の最大使用荷重を超えない時はこの限りでないとされています。
    この規則によって建設業労働災害防止協会では、足場の種類別に原則的な高さ制限を以下のように決めています。

    4-1.単管足場



    建地1本組みの場合、建地の高さは31メートル以下とされています。
    建地の高さが31メートル以上になる場合は、労働安全衛生規則で定められているように、
    建地を鋼管2本組にしなければなりません。

    4-2.くさび緊結式足場



    くさび緊結式足場は、建地の高さを31メートル未満で使用します。
    建地が31メートル以上となる場合は、くさび緊結式足場以外の足場を選択しましょう。

    4-3.わく組み足場



    枠わく組み足場は、建地の高さが45メートルまで使用できます。
    他の足場と異なり、通常の構造でも建地の高さを31メートル以上にすることが可能です。

    1972年に制定された労働安全衛生規則では、足場を31メートル以上の高さに組み立てる場合、
    鋼管を2本組にすることとされていました。

    しかし2015年の規則改正で、建地の下端に作用する設計荷重が、
    最大使用荷重を超えない時は2本組とすることを要さないとなりました。

    そこでわく組み足場の技術基準の見直しが行われ、当該建地の最大使用荷重を超えない範囲であれば、
    31メートル以上の高さまで伸ばせるようになったのです。

    5.足場の最大使用荷重



    規則の改正と技術基準の見直しによって、補強をしないで最も高い建地を組める足場は、
    わく組み足場となりましたが、足場の高さを決める場合に重要なのが最大使用荷重です。

    最大使用荷重とは、「建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重」のことで、
    わく組み足場であっても最大使用荷重が超える場合は、高さ45メートルの高さまで足場を組むことはできません。

    最大使用荷重を算出する場合は、足場に積載する重量だけでなく、足場に付属するものについても考慮する必要があります。

    例えば工事現場が道路に面している場合、足場の下を歩く通行人などに落下物が当たらないように、
    朝顔と呼ばれる防護柵を設置しなければなりません。
    朝顔を設置する場合、朝顔の重量が建地に荷重としてかかります。

    また飛散防止のために、養生シートを設置することもあるでしょう。
    養生シートは網目状になっているものやシート状のものがあります。

    それぞれ単位面積当たりの重量は異なりますが、どちらの養生シートであっても足場全体に施工する場合は、
    最大使用荷重に影響する重量となるでしょう。

    6.足場に発生する応力


    ここで足場の部材に発生する応力について説明します。
    応力とは、材料が外力を受けた時に材料内部に発生する力のことです。
    外力と応力が釣り合っている状態であれば、材料は破壊することはありません。

    材料に発生する応力としては、引張応力、圧縮応力、せん断応力があります。
    建地にかかる応力は、圧縮応力とせん断応力です。
    一般的に材料は、圧縮応力はせん断応力よりも強いという特性があります。

    足場に使われている単管の場合、許容せん断応力が1,368kgf/㎠に対して、許容圧縮応力は2,400kgf/㎠です。
    建地も同様に許容圧縮応力の方が、せん断応力より強い応力があります。

    しかし、朝顔や養生シートなど足場の片側にしか設置しないものがあると、建地にせん断方向の応力が発生するため、
    許容できる応力にも影響があります。
    建地を地面に対して垂直に立てるのも、足場の荷重を圧縮応力で受けるためなのです。

    7.まとめ



    今回は、建地について解説しました。
    建築現場の足場は、長期間設置されることが多いため、足場を組んだ時は建地が垂直であっても、
    時間が経つと作業による偏荷重や風などによる外力によって、当初の垂直状態が保たれていないということもあるでしょう。

    また工事の進捗によっては、足場にかかる荷重が変化することもあります。
    建地に過剰な応力がかからないようにするために、足場の最大使用荷重の管理が重要です。
    そして足場については、作業開始前の点検が義務付けられているため、しっかりと点検を行って安全に作業をしましょう。
  • 足場組立作業主任者とは?受験資格と取得のメリットを紹介
    建築工事において、安全・安心で作業がしやすい足場の設置は欠かせません。
    建築現場に足場を設置する場合は、足場の構造や組み立て方法を熟知していることが必要です。
    特に、マンションやビルなどの高層建築物に使われる足場を組み立てる場合は、その重要性が高まります。

    足場を組み立てる作業者には、法律で定められた教育を受講して、正しい知識を習得していることが求められています。
    また足場組み立て作業を監督する者にも法律で定められた資格が必要です。

    今回は足場作業を指揮する者の資格である「足場組立作業主任者」について解説します。


    ▼ 目次
     1.足場組立作業主任者とは
        1-1.  労働安全衛生法施行令 第6条15号
        1-2.  足場特別教育との違い
        1-3.  足場組立作業主任者になるには講習を受ける必要がある
       2.  足場組立作業主任者の資格取得のメリット
       3.  足場の組立等作業主任者講習の受講資格
       4.  足場の組立て等作業主任者技能講習の内容
           4-1.  作業の方法に関する知識
         4-2.  工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識
         4-3.  作業者に対する教育等に関する知識
           4-4.  関係法令
       5.  まとめ


    1.足場組立作業主任者とは

     
    作業主任者とは、労働安全衛生法第14条により労働災害を防止するための管理が必要な作業において、
    当該作業に従事する労働者への指示や厚生労働省の規定事項の遵守を行う役割を担う者のことです。

    足場組立作業主任者の指示に従い、足場の組立て等特別教育を修了した作業者によって足場を組み立てます。

    1-1.労働安全衛生法施行令 第6条15号



    作業主任者を選任しなければならない作業としては、労働安全衛生法施行令第6条で決められており、
    足場に関しては第6条15号で「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)、
    張出し足場又は高さが5メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業」が定義されています。

    この法律によって、5メートル以上の足場組み立て作業を行う場合は、足場組立作業主任者を選任しなければなりません。
    足場組立作業主任者を選任しなければならない作業において、足場組立作業主任者を選任していない場合、
    6カ月以上の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    1-2.足場特別教育との違い


    足場組み立て作業に関係するその他の技能資格として「足場の組立て等特別教育」があります。
    足場組立作業主任者との違いは、「足場の組立て等特別教育」が特別教育としての位置づけであり、
    特別教育を実施する教育機関は各都道府県労働局の登録を受ける必要はありません。

    一方、足場組立作業主任者は技能講習という位置づけとなるため、
    実施する教育機関は各都道府県労働局の登録を受ける必要があります。
    また作業主任者に選任され、当該作業を指揮する場合は、
    作業主任者技能講習を修了した証明証を携帯していなければなりません。

    しかし足場組立作業主任者は工事現場で指揮を行うため、紙の証明証を携帯していても、
    汗などで直ぐにボロボロになってしまうことでしょう。
    そのため修了した技能資格を統合したカードにして発行してもらえるサービスがあります。

    このサービスは、国から委託されている技能講習修了証明書発行事務局が行っており、
    携帯が必要となる複数の技能資格について、修了したことを1枚のカードで証明することができます。

    カードの携帯が必要な複数の技能資格を取得した場合、このサービスを利用することをおすすめします。
    ちなみに足場組立作業主任者の資格は、足場の組立て等特別教育の上位資格として扱われます。

    1-3.足場組立作業主任者になるには講習を受ける必要がある


    足場組立作業主任者になるには、各都道府県労働局の登録を受けている教育機関で講習を受講する必要があります。
    登録を受けていない教育機関で講習を受講しても、足場組立作業主任者としての資格は取得できません。

    講習を申し込む前に、登録を受けている教育機関であるか必ず確認しましょう。
    受講料については、実施する教育機関によって異なりますが、16,000円程度で受講できます。
     

    2.足場組立作業主任者の資格取得のメリット

     

    5メートル以上の足場の組立て・解体・変更作業する場合、
    足場作業主任者を選任して作業指揮を行わなければなりません。
    そのため建築業界ではニーズの高い資格です。

    大規模な建築工事の場合、足場作業が数週間続くこともあるでしょう。
    そのような工事では、足場作業主任者を複数選任します。
    足場作業主任者を1人しか選任していなかった場合、足場作業主任者が体調不良などで休まなければならない時に、
    足場組立作業が行えなくなってしまいます。

    また足場組立作業は墜落や転落などの危険が伴う作業です。
    そのため、足場作業を安全で確実に指揮できるようになれば、事業者からの信頼を得られるため、業務の幅が広がります。
    さらに給与面やキャリアップなどの待遇が有利になるでしょう。

    3.足場の組立等作業主任者講習の受講資格



    足場の組立等作業主任者講習を受講するには、受講資格が必要です。
    受講資格については、法令・通達の足場の組立て等作業主任者技能講習規程で、次のように決められています。

    ・満21歳以上で、足場作業に3年以上従事した経験
    ・満20歳以上で、大学、高専、高校、中学で土木、建築または造船に関する学科を専攻し、その後2年以上足場作業に従事した経験
    ・職業能力開発促進法による訓練を受けた者

    作業従事の経験については、事業主による証明が必要となり、大学や高専などの専攻証明については卒業証書などの書類が必要です。
    当然ですが受講資格の条件が証明できない場合は受講できませんので、申し込み時にしっかり確認しましょう。


    4.足場の組立て等作業主任者技能講習の内容



    足場の組立て等作業主任者技能講習の内容についても、足場の組立て等作業主任者技能講習規程で決められています。
    講習科目と時間は次の通りです。

    4-1.作業の方法に関する知識


    作業の方法に関する知識として、足場の種類、材料、構造や足場の組立て、
    解体及び変更の作業の方法などについて学びます。講習時間は7時間です。


    4-2.工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識


    工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識として、工事用設備及び機械の取扱いや墜落防止のための設備、
    落下物による危険防止のための措置について学びます。
    悪天候時における作業の方法や服装及び保護具についても学びます。
    講習時間は3時間です。

     

    4-3.作業者に対する教育等に関する知識


    作業者に対する教育等に関する知識として、作業者に対する教育及び指導の方法や災害発生時における措置について学びます。
    講習時間は1時間30分です。

    4-4.関係法令


    関係法令として、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及びクレーン等安全規則の関係条項について学びます。
    講習時間は1時間30分であり、合計13時間の学科を受ける必要があります。

    実習はありませんが、講習最後の試験に合格すれば修了です。
    合格の基準は全科目合計60点以上かつ各科目40%以上の正解率が必要です。

    試験については講習の内容を聞いていれば合格できると言われており、講師から需要なポイントは強調して説明されるので、
    しっかり講習を聞いていれば合格できます。

    5.まとめ



    5メートル以上の足場の組立て・解体・変更作業する場合に必要な、足場の組立て等作業主任者について解説しました。
    講習は2日間で学科だけですが、講師の説明をしっかり聞いていれば試験に合格できるでしょう。

    講習を修了した後は、技能講習修了証明書発行事務局で修了証明書(統合カード)を申請して交付してもらいましょう。
    統合カードを申請することで、万が一カードを破損や紛失した場合でも速やかに再発行の手続きを行うことができます。

    2023年3月からオンラインによる申請ができるようになり手続きがしやすくなりました。
    足場の組立て等作業主任者に選任された場合は、修了証を必ず携帯しましょう。
  • くさび式足場の特徴は?枠組足場や単管足場との違いも解説
    建設現場の足場の種類を大きく分けると「組み立て足場」と「吊り足場」の2種類があります。

    組み立て足場は、地面から上に組み立てられた足場です。
    吊り足場は、地面から足場が組み立てられない場合に、構築物などからチェーンやパイプなどを用いて、
    上から吊り下げる形で組み立てる足場です。

    組み立て足場には、くさび式足場、枠組足場、単管足場があります。

    今回は組み立て足場の中でも使い勝手が良く、多くの建設現場で使われている「くさび式足場」について解説します。


    ▼ 目次
     1.くさび式足場とは
       2.  くさび式足場の特徴
       3.  くさび式足場の主要部材9つ
           3-1.  ジャッキ型ベース
         3-2.  支柱
         3-3.  手摺
           3-4.  踏板
         3-5.  ブラケット
         3-6.  筋交い
         3-7.  鋼製階段
         3-8.  先行手摺
         3-9.  壁当てジャッキ
       4.  くさび式足場とその他の足場との違い
           4-1.  枠組足場の特徴
           4-2.  単管足場の特徴
       5.  まとめ


    1.くさび式足場とは

     
    くさび式足場は、足場を支えるパイプや手摺などの部材を「くさび」と呼ばれる形状のものによって
    「緊結」し、組み立てる足場のことです。

    パイプや手摺の両端に「くさび」が付いており、足場の支柱に「コマ」と呼ばれる緊結部にさし込み
    、ハンマーで叩き込みます。

    「くさび」はV字型の形状をしているため、叩き込むことで「コマ」との間に隙間が無くなり
    「くさび」が「コマ」に緊結されます。

    「くさび」は古くから建築物に使用されており、古い木造建築では柱と梁を固定するために使われてきました。
    また固定以外の用途として、岩に穴を空け、そこに「くさび」を打ち込むことで、岩を割るためも用いられました。
    このように「くさび」は古くから建設現場で利用されてきた道具です。

    くさび式足場の正式名称は、「くさび緊結式足場」ですが、「ビケ足場」と呼ばれることがあります。

    「ビケ足場」とは、1980年に株式会社ダイサンが開発したくさび緊結式足場の商品名。
    日本で最初に販売されたくさび式足場で、建設業界で広く普及したため、「ビケ足場」とも呼ばれています。


    2.くさび式足場の特徴

     
    くさび式足場の特徴は、組み立て作業が簡単なことです。
    くさび式足場を組み立てるために使う道具はハンマーだけ。
    特別な工具が不要なために、簡単に素早く組み立てることができます。

    足場を解体する場合も、ハンマーだけで解体できます。
    工期を短くできるため、コスト面でもメリットがあります。

    一方、デメリットとしては、作業時に発生する騒音でしょう。
    ハンマーでくさびを打ち込むため、大きな金属音が発生します。
    大きな金属音は、作業者への負担になるだけでなく、工事現場周辺への騒音にもなるため、
    くさび足場を組み立てる場合には、作業時間と周囲への騒音影響を考慮する必要があります。

    3.くさび式足場の主要部材9つ


    くさび式足場を構成する部材は、ジャッキ型ベース、支柱、手摺、踏板、ブラケット、筋交い、
    鋼製階段、先行手摺、壁当てジャッキです。
    次からはこれら9つの部材について解説します。


    3-1.ジャッキ型ベース



    ジャッキ型ベースは、くさび式足場の最下部に使用される部材です。
    支柱となる部分にネジが切られており、ハンドルを回転させることで上下の高さを調整します。

    ジャッキ型ベースは足場全体を支える部材となるため、安定した足場を組むためにも重要です。

    3-2.支柱



    支柱は、コマというくさびをさし込むための緊結部が、一定の間隔に取り付けられている鋼管です。

    支柱には上下があり、組み立てる場合は上下を統一して組み立てます。
    支柱の上下がバラバラだと、コマの高さもまちまちになり、足場が組めなくなるからです。

    3-3.手摺



    手摺はくさびが両端に取り付けられている鋼管で、両端のくさびを支柱のコマに差し込んで使います。
    手摺は落下防止にも使われますが、踏板や階段などの取り付けにも使われます。

    3-4.踏板



    踏板は、作業者が歩いたり作業したりする板です。
    屋外で風の影響を減らすためや、運搬し易いよう軽量化するために、床面が網状になっているものが使用されています。

    踏板の両側には合計4つのフックが付いており、手摺やブラケットに引っ掛けます。
    フックには外れ止めが付いており、振動などで踏板が外れないように取り付けます。


    3-5.ブラケット



    ブラケットは、直角三角形の形状によって垂直荷重を支える部材です。
    建地や水平材、斜材などに取り付けるため、2個以上の取り付け金具が付いています。

    建物に傾斜や凹みがある場合、壁面が足場から離れてしまい、作業がやりにくいだけでなく墜落の危険性もあります。
    そのような場合にブラケットを用いて、足場から壁面に作業床を張り出します。
    ブラケットは「持ち送り」とも呼ばれ、重要な部材の一つです。

    3-6.筋交い



    筋交い(すじかい)は、建地と建地との間に斜めに入れる資材です。
    筋交いを入れることで、足場が安定します。

    屋外に足場を設置する場合、台風などの強い横風の影響を受けることがあり、
    地震が発生した場合は足場全体が揺れて崩壊する可能性もあるでしょう。
    筋交いは足場を強固に保つための補強材なのです。


    3-7.鋼製階段



    鋼製階段は、足場の階層を移動するための階段です。

    鋼製階段の特徴は、踏み面に凹凸があること。
    足場に使用する材料は、強度の高い金属製が使用されますが、雨などで表面が濡れると滑りやすくなる弱点があります。

    そのため足場に使用される階段の踏み面は、滑り止め防止の加工として、表面が凹凸になっているのです。


    3-8.先行手摺



    先行手摺は、足場の組立時に先行して手摺となるものです。
    最上層でも手摺がある状態で作業ができるので、墜落防止に役立ちます。



    3-9.壁当てジャッキ



    壁当てジャッキは、足場が内側に倒れ込まないように支える部材です。
    壁との距離を調整するためにネジが切ってあり、距離を調整できるようになっています。

    4.くさび式足場とその他の足場との違い


    次からはくさび式足場以外の足場について解説します。

    4-1.枠組足場の特徴


    枠組足場とは、門型に溶接された鋼管の建枠をジャッキ型ベース・筋交・鋼製布板などの基本部材によって
    組み立てるタイプの足場です。主にビルのような高層建築物で使われています。

    枠組足場は、昭和27年に米国ビティスキャホード社より輸入されて国内で普及し、「ビティ足場」と呼ばれていました。

    組み立てには道具が不要で、くさび式足場のようにハンマーで叩く必要もないため、大きな音が発生しません。
    デメリットは、門型のサイズが決まっているため、設置にはある程度のスペースを必要とすること。
    また高層部を組み立てる場合は、クレーン車を使った荷揚げが必要です。


    4-2.単管足場の特徴


    単管足場は、直径48.6mmの鋼管で作られた単管と呼ばれるパイプを、
    クランプなどの部材によって組み立てるタイプの足場です。

    単管とクランプで組み立てられるため複雑な形状の足場を組めることや、狭い場所でも足場を組むことが可能です。
    主に低層の建設工事や天井の高い屋内の足場として使用されます。
    材料となる単管やクランプはホームセンターでも購入できるので、DIYでも仮設足場などに利用されています。

    単管足場の組み立てには、「インパクト」と呼ばれる電動工具が欠かせません。
    インパクトと呼ばれる電動工具で、クランプのボルトを締めて足場を組むため、
    作業性はくさび式足場や枠組足場に比べると劣るでしょう。

     

    5.まとめ



    今今回は、くさび式足場の特徴について解説しました。

    建設作業において、どのような足場を組むのかは、どのような作業を行うかによって決定します。
    工事の前に、足場の寸法が作業上問題なく組み立てられるか、積載荷重は基準以内かなどを事前に確認しておくことが重要です。

    それぞれの足場の種類による特徴を理解して、適切な足場を設置しましょう。
  • 足場の許容積載荷重と最大積載荷重の違いについて詳しく解説
    高所作業を安全に行うために、足場を正しく使用することが重要です。
    建設現場の足場は、労働安全衛生法で定められている基準を順守しなければなりません。

    労働安全衛生法で定められている基準とは、足場の構造や落下対策などです。
    特に重要なのが、組んだ足場の最大積載荷重を守ること。最大積載荷重を超えるような使い方をすると、
    足場の崩落をまねきかねません。そのため事業者は、作業者に足場の最大積載荷重を周知させる必要があります。

    足場の積載荷重には、許容積載荷重と最大積載荷重があります。
    これらの荷重は、同じ荷重でも意味が違うため、区別して知っておくことが重要です。

    そこで今回は、足場の許容積載荷重と最大積載荷重の違いについて解説します。
     


    ▼ 目次
     1.足場の許容積載荷重とは
       2.  足場の最大積載荷重とは
           2-1.  ブラケット一側足場
         2-2.  次世代足場
         2-3.  単管足場
         2-4.  枠組足場
       3.  足場の積載荷重表示に注意
       4.  まとめ


    1.足場の許容積載荷重とは

     
    足場の許容積載荷重とは、足場の床に使用する布板1枚が許容できる荷重のことです。

    例えば布板の幅が500mmの場合、許容積載荷重は250kgとなります。
    布板の幅が300mmの場合は許容積載荷重が150kg、幅240mmで120kgとなります。

    許容積載荷重は布板の幅で異なります。幅が広くなるにつれて数値も大きくなり、
    大きな重さにも耐えられるようになります。

    2.足場の最大積載荷重とは


    足場の最大積載荷重とは、足場に布板を組み合わせて設置した状態で、
    1スパン当たりに載せられる最大の重量のことです。

    実際の作業で足場を使用する際は、足場にかかる重さが必ず
    この最大積載荷重を超えないように管理しなければなりません。

    足場の最大許容荷重は、足場の種類によって異なります。
    ここでは、足場の種類別に許容荷重を説明します。

    2-1.ブラケット一側足場



    ブラケット一側足場は、片側だけに足場を建て、ブラケット等を取り付けて
    その上に足場板を敷き詰めた足場のことです。

    ブラケット一側足場は、敷地が狭く、枠組足場や二側足場の設置が困難な場所で使われます。
    足場を支える建地が片側にしか無いため、最大積載荷重は1スパン当たり150kg以下、建地1本当たり100kgとされています。
    布板の許容積載荷重が150kg以上だったとしても、150kg以上の物を置くことができません。

    ブラケット一側足場で特に注意しなければならないのが、同一スパンに2人以上で作業する場合です。
    最大積載荷重には、作業者の体重も含まれます。

    日本の成人男性の平均体重が64kgから65kgと言われており、同一スパンに2人の作業者が同時にのった場合、
    約130kgの荷重となります。

    また、作業者はヘルメットや墜落制止用器具などの保護具を着用しており、腰には腰道具と呼ばれる道具入れを携帯しています。
    腰道具には作業に必要な工具等が入っており、作業者によって異なりますが5kgから10kgの重量があると言われています。

    それらの重量も含めると作業者の体重によっては、最大積載荷重を超える可能性もあるため、
    ブラケット一側足場では同一スパンに同時に2人で作業をすることの無いように作業管理をした方がよいでしょう。

    2-2.次世代足場



    次世代足場は、従来の打込み式クサビ緊結式足場から進化した足場です。
    近年の建設現場における労働力不足の解消や安全性低下の防止、作業負担の軽減などを目的に開発されました。

    枠組足場に代わる次世代の足場として、運搬が容易でコスト面でも優れています。
    最大の特徴は、システムとして承認を取得することにより全体の強度計算が容易になることと、
    足場の組み立て・解体の危険性を軽減できることです。

    中央ビルト工業では、次世代足場として「スカイウェッジ427」を販売しています。
    「スカイウェッジ427」は、支柱の外径が建枠と同じ42.7mmとなり、幅木やジャッキベースなどの既に保有している足場部材の資産を活かせる足場です。

    足場の組み立て・解体については、2層5スパンの足場を地上で組み立て荷揚げすることを推奨しています。
    外形は従来品と比べると細くなっていますが、梁間方向の支柱間隔900mm以上で、
    1スパンの積載荷重の合計が最大800kgまで使用することができます。

    また1層1スパンの積載荷重は、連続スパン載荷の場合は250kg、1スパンおき載荷の場合は400kgです。
    使用条件によって最大積載荷重が変わりますので、作業内容によって最大積載荷重を設定します。

    2-3.単管足場



    単管足場は、直径48.6mmの「単管」と呼ばれる鋼管を使って組み上げる足場です。
    「単管」に「クランプ」という金具を取り付けて、さらにボルトで固定して組み上げていきます。

    単管足場の特徴は、足場の形状を自由に組むことができるため、狭い場所でも足場を組めることです。
    材料となる「単管」もホームセンターなどで安価に購入することができます。
    しかし自由に足場を組める反面、組み立てと解体に時間がかかります。
    また組み立てる際には、インパクトドライバーと呼ばれる電動工具が必要です。

    単管足場の最大積載荷重は、労働安全衛生規則で1スパンあたりの積載荷重は400kgが限度と決められています。

    2-4.枠組足場



    枠組足場とは、ジャッキや筋交、鋼製布板などの部材を組み立てて構築される仮設足場の一種で、
    足場工事の中で最もよく使用されます。

    枠組足場には先述した部材に加えて、ジョイントやアームロック、壁つなぎなど、さまざまな部材が使われます。
    また、作業員や資材の落下を防止するために、先行手摺(てすり)や幅木、メッシュシート等の設置が義務付けられているのです。

    枠組足場の最大積載荷重は、建わく幅で異なります。
    建わく幅が1,200mmの場合は、500kg以下、900mmの場合は400kg以下と決められています。

    3.足場の積載荷重表示に注意


    建設工事では、着工から完成まで同じ作業者が作業を行うことはほとんどありません。
    多くの作業者は工事の進捗によって入れ替わります。

    作業者の中には、1日しか作業に来ない人もいることでしょう。
    1日しか作業をしない作業者であっても、足場の最大積載荷重を把握していないと、事故や足場崩落の原因になりかねません。

    事業者は、設計で決まった足場の最大積載荷重を超えないように、作業を管理しなければなりません。
    また、作業者も足場が許容できる荷重を把握しておく必要があります。
    作業者に最大積載荷重を周知させるためには表示が不可欠ですね。

    作業状況によって、荷重が場所ごとに変わる場合は、各スパンに最大積載荷重を正しく表示し、
    その日にはじめて作業に入る作業者であっても、容易に理解ができるようにしておきましょう。
     

    4.まとめ



    今回は足場の許容積載荷重と最大積載荷重について解説しました。

    許容積載荷重と最大積載荷重の違いは、布板1枚が許容できる重量なのか、
    1スパンあたりに載せられる最大の重量なのかという点です。

    足場の許容積載荷重は布板で決まっていますが、最大積載荷重については、
    足場の種類や足場全体の荷重状況によって変化します。

    建設現場の足場には、作業者だけでなく工事に使用する資材や機材などを一時的に仮置きすることがあります。
    それらは全て足場に荷重をかけることになるので、現場で足場にかかる全ての荷重を把握しておかなければなりません。

    最大積載荷重の誤表記は、大きな事故に繋がる可能性があります。
    事業者は、最大積載荷重の計算方法を理解して、適切に荷重を管理することが求められます。

  • 足場の層間ネットとは?特徴や設置基準も解説
    建築現場の高所作業で大切なのが、落下防止対策です。
    作業者はもちろん、道具や材料などの落下も防止しなければなりません。

    そのため、高所作業の足場には国の法律で落下防止対策が決められています。
    (安衛則537条及び、安衛則563条参照)
     

    今回は落下防止対策の中でも、物の落下防止措置である層間ネットについて説明します。
     


    ▼ 目次
     1.足場の層間ネットとは
       2.  足場の層間ネットの特徴
           2-1.  素材
         2-2.  結び方
         2-3.  使用期限
       3.  安全ネットの設置基準は?
         3-1.  設置基準
         3-2.  間隔や高さの算出
       4.  まとめ


    1.足場の層間ネットとは


    労働安全衛生規則で「防網」とも呼ばれる層間ネットは安全ネットの一部で、
    主に物の落下防止措置のために設置するものです。

    高さが2メートル以上の場所で作業を行う場合は、足場を組んで作業床を設けなければなりません。
    また架設通路には手すりや中さんの設置、足元には高さ15センチメートル以上の幅木を設置します。

    さらに物体が落下した場合に備え、それらを受け止めるためにメッシュシート又は層間ネットを設置します。
    落下による事故を防止するために、2重3重で対策を行わなければなりません。

    足場と躯体の間に張る小幅のネットである層間ネットは、物の落下防止措置だけでなく、
    作業中に手すり、中さん、幅木等を外さなければいけない場合や手すり等が設けられない箇所へ措置するものでもあります。
    しかし、手すりや中さん、幅木等に直接代わるものではありませんので注意しましょう。 

    2.足場の層間ネットの特徴


    物の落下防止措置のため層間ネットは欠かせないものです。
    ここでは層間ネットの特徴について説明します。

    2-1.素材


    層間ネットに使われる素材として、ナイロンやポリエステルがあります。
    どちらの材料も層間ネットとして十分な強度を有していますが、
    特にポリエステルのネットは、耐候性と耐衝撃性に優れているとされています。

    屋外で使用されることの多い層間ネットには、耐水性や耐候性が求められますが、
    ナイロンもポリエステルも屋外での使用に適した材料です。

    2-2.結び方


    層間ネットの結び方には有結節と無結節、ラッセルがありますので、それぞれを紹介します。

    ■ 有結節
    有結節は糸の交差している部分に結び目があるネットで、無結節は結び目が無いネットです。
    有結節のネットは強度がある反面、結び目があるためネットを束ねる際にごわつきがあります。

    ■ 無結節
    無結節は網糸の交差している部分に結び目が無いため、網糸を作る際に網目も同時に形成できるため生産性が高いのが特徴です。
    また、糸の交差部に結び目が無いので、ネットを束ねる際にごわつきが少なく、かつ軽量で使用しやすいです。

    ■ ラッセル
    無結節と同じ結び目の無いネットで、ラッセルと言う種類があります。
    ラッセルはレース状に編み込まれたネットで、ラッセルネットとも呼ばれ多くの場所で使われています。

    2-3.使用期限


    ナイロンやポリエステルは、石油を原料とした合成繊維であるため、
    製造されてから一定の時間が経つと劣化します。そのため層間ネットには、使用期限が決められています。
    一般的な層間ネットの使用期限は製造年月から1年です。

    製造年月については、製品ラベルから確認できます。使用期限が過ぎた層間ネットは、
    安全性が確保されませんので必ず交換するようにして下さい。

    3.安全ネットの設置基準は?


    層間ネットを含む足場の安全ネットは、正しく設置しないと落下防止対策になりません。
    そのため、一般社団法人仮設工業会では『安全ネットの構造等に関する安全基準と解説』として、
    墜落による危険を防止するためのネットの設置基準を定めています。

    ここでは、落下対策におけるネットの設置基準について説明します。


    3-1.設置基準



    ネットの設置基準として決められているのが、落下高さ、ネット下部のあき、ネットの垂れです。

    ■ 落下高さ
    落下高さとは、墜落のある作業床からネットの支持面までの垂直距離です。
    落下高さまでの距離が長いと落下時の衝撃が大きくなるため、作業床から離れすぎないように設置します。

    ■ ネット下部のあき
    ネット下部のあきは、設置したネットの支持面から下部にある床面などまでの垂直距離です。
    落下物をネットで受けた時に、ネット下部の床面などに衝突を回避するために必要な距離を確保する必要があります。

    ■ ネットの垂れ
    ネットの垂れとは、設置したネットの最低部からネットが取り付けられている支持面までの垂直距離のことです。設置した際に、ネットが垂れすぎていないように設置します。
     

    3-2.間隔や高さの算出



    算出に用いる記号を説明します。

    正方形ネットの場合は一辺の長さを、長方形ネットの場合は短辺の長さを記号Lで表します。
    ネットの支持間隔を記号Aで表します。ネットは紐によって足場などに結び付けます。
    支持間隔とは固定物に結び付けた紐の間隔のことです。

    ■ 落下高さの算出式
    落下高さ(H1)の算出式は次の通りです。
    単体ネットの場合:H1≦0.25×(L+2A)
    複合ネットの場合:H1≦0.20×(L+2A)
    ただし、A≦Lの範囲ではA=Lとして計算します。

    単体ネットとは、1枚のネットのこと。複合ネットとは、単体ネットを複数つなぎ合わせたネットのことです。

    落下高さをH1以下にすることで作業者が墜落した場合、人体にかかる加速度を147m/s2以下にでき、
    落下者への衝撃を減らせます。

    ■ ネット下部のあきの算出式
    ネット下部のあき(H2)の算出式は次の通りです。
    H2≧0.85×(L+3A)÷4
    ただし、A≦Lの範囲ではA=Lとして計算します。

    ■ ネットの垂れの算出式
    ネットの垂れ(S)の算出式は次の通りです。
    S≦0.2×(L+2A)÷3

    ■ 算出例
    実際に以下の条件で算出をしてみます。
    ・使用するネットのサイズ:4m×8mの単体ネット(L=4m)
    ・ネットの支持間隔:2.88m(A=2.88m) 
    ※A≦Lのため、A=LとなりAは4mとなります。

    落下高さ≦0.25×(L+2A)=0.25×(4m+2×4m)=3m
    ネット下部のあき≧0.85×(L+3A)÷4=0.85×(4m+3×4m)÷4=3.4m
    ネットの垂れ≦0.2×(L+2A)÷3=0.2×(4m+2×4m)÷3=0.8m

    計算の結果、落下高さは3m以下、ネット下のあきは3.4m以上、ネットの垂れは0.8m以下となります。
    実際に設置した状態を考えると、落下高さとネットの垂れは設置方法によって、最小に抑えられますが、
    ネット下のあきが確保できるかがポイントです。

    ネットに作業者が落下した場合、ネットは設置してある高さから落下の衝撃を受けながら下がります。
    そのためネットが下がっても、下の床や機械などにぶつからないスペースを確保しなければなりません。

    しかし屋内の足場などの場合、ネット下のあきが確保できないこともあるでしょう。
    そのような場合は、ネットのLサイズを小さくするなどの対応が必要です。
    工事現場の状況に合わせてネットを選択しましょう。
     

    4.まとめ



    建設現場では高所作業を行うために足場を組みますが、作業時の墜落対策を万全に行う必要があります。
    さらに万が一、物が落下した時の対策も重要です。

    ネットを設置する場合は設置基準がありますので、設置基準を守って利用しましょう。

  • 足場屋さんとは?鳶(トビ)職人との違いも紹介!
    建設工事の現場で活躍するのが「鳶」と呼ばれる職人たちです。鳶職人の歴史はとても古く、
    日本最古の木造建築物である法隆寺を建立した時には既に存在したと言われています。

    当時も高い建物を建築するために、作業足場を組んで、その上でさまざまな職人が作業をしたことでしょう。
    しかし現在では、鳶職人と言ってもその仕事内容によっていくつかの種類に分類されています。

    今回は鳶職人を目指す方向けに、鳶職の種類や鳶職と同時に使われることの多い
    「足場屋さん」と呼ばれる職人について解説します。
     


      ▼ 目次
       1.足場屋さんとは
       2.  足場屋さんと鳶職人の違いは
       3.  鳶職人の種類
         3-1.  足場鳶
           3-2.  橋梁鳶
           3-3.  鉄骨鳶
           3-4.  重量鳶
           3-5.  送電鳶
           3-6.  町場鳶
       4.  職人に足場屋さんが選ばれる理由
        4-1.  給料が高い
        4-2.  独立がしやすい
       5.  まとめ


    1.足場屋さんとは


    足場屋さんとは、文字通り高所作業の足場を組み立てたり、解体したりする作業を専門に行う職種のことです。

    足場屋さんは高所作業の足場以外にも、イベント会場の設営やステージ、舞台の照明を組み立てる仕事なども行います。


    足場屋さんは、足場に関する専門的な知識を持った職人です。
    高所作業の足場は、建物の形状やサイズに合わせて組まなければなりません。
    建物の形によっては、複雑な形の足場を組む場合もあります。
    足場屋さんは、建築工事を効率的かつ安全に行うために重要な役割を果たしています。

    2.足場屋さんと鳶職人の違いは


    ところで、足場屋さんと鳶職人の違いはあるのでしょうか。

    まず鳶職という名称が生まれたのは、江戸時代の頃と言われています。
    当時の鳶職人は、建築現場などの高い場所で作業をする以外にも、火災が発生した時には火消しの仕事も行っていました。

    現在では、鳶職人が火消しの仕事をすることはありませんが、高い場所で作業を行う職人を鳶職と呼んでいます。

    今では高所作業の内容が細分化されていて、それぞれの高所作業で専門知識と高い技術が必要なことから、足場屋さんという職種が誕生しました。

    つまり、元々鳶職人とは高い場所で作業を行う職人の総称で、足場屋さんは鳶職人の中でも足場に特化したスペシャリストを言います。

    3.鳶職人の種類


    仕事内容によって細分化された、鳶職人の種類について説明します。

    3-1.足場鳶



    足場鳶は足場を専門に作業する鳶職人であり、いわゆる足場屋さんです。

    足場と言っても、数メートルの高さから数十メートルの高さのものまであります。
    一般的に住宅専門の足場鳶については、足場職人と呼ばれ、
    ビルやマンション建築のような足場を組み立てる職人を足場鳶と呼んでいます。

    足場鳶は真っ先に工事現場に入って、後から作業する職人が作業をしやすい安全な足場を組み上げます。
    他の職人が安心して作業できる場を作る仕事なのです。
     

    3-2.橋梁鳶



    橋梁鳶は、高速道路の高架や橋の工事に関わる鳶職人です。橋梁鳶の特徴は、横に伸びていく建設物を組み立てていくところです。一般的な建設物は縦方向に伸びていくように組み立てていきますが、橋梁鳶は横方向に組み立てるため、鳶職の中でも専門知識が必要です。

    また、作業足場の下が海や川、道路や鉄道といった状況があるため、高い技術が求められます。
     

    3-3.鉄骨鳶



    鉄骨鳶は建物の骨格となる鉄骨の柱や梁をクレーンで吊り上げて、組み上げる鳶職人です。
    鉄骨鳶の仕事は、建物をまっすぐ建てるために重要です。

    鉄骨をボルトで固定するだけでなく、固定する柱を垂直にしたり梁を水平にしたりしなければなりません。
    鉄骨鳶には高所作業の危険が伴うだけでなく、建物をしっかり組み立てるための専門性が必要です。
    そのため鉄骨鳶として一流になるためには、豊富な経験とさまざまな資格を取得することが求められます。

    3-4.重量鳶



    重量鳶は、大型の機械や構造物などの重量物をクレーンで移動させる作業を行う鳶職人です。

    足場鳶や鉄骨鳶のように、高所を移動するような作業は少ないのですが、
    非常に繊細な作業になるため、精度の高いクレーン操作技術が必要です。

    3-5.送電鳶



    送電鳶は高所の電気工事を行う鳶職人で、正式な呼び名は「送電線架線工」と言います。
    7000ボルトを超える送電線の鉄塔に上がって、敷設作業や保守点検を行います。

    送電線の鉄塔は山奥にも多くあるので、険しい山の中で作業を行うタフな精神力が必要です。
    送電鳶はラインマンとも呼ばれ、国内には4000人ほどしかいないとされています。
     

    3-6.町場鳶



    町場鳶は、主に一戸建ての木造住宅に関した作業をする、地元に密着した鳶職人です。

    足場や柱、梁の組み立てから神輿の出し入れ、お祭りで使う屋台の設営なども行います。
     

    4.職人に足場屋さんが選ばれる理由


    さまざまな種類がある鳶職人ですが、その中でも足場屋さんと呼ばれる足場鳶の仕事が
    多くの人に選ばれています。

    次からは、仕事として足場屋さんが選ばれる理由について説明します。
     

    4-1.給料が高い


    足場屋さんは経験を積むことで給料の上昇が期待できる職種です。
    親方レベルになれば、年収は600万円〜800万円程度と言われています。

    一般の作業員として働く場合は、スキルや経験値によって給料に差がつくことがあります。
    高度な技術や経験を得るに従い、給料も上がっていきます。

    一般的な仕事をこなせるようになるまでには、単管足場やクサビ式足場などの種類と組み方を覚える必要があり、
    覚えるまで3年はかかると言われています。

    特に、他の作業者も足場で作業をするため、安心安全な足場を組まなければなりません。
    足場の組み立ては建設工事において欠かせない作業であるため、需要が高いのが特徴です。
     

    4-2.独立がしやすい


    足場屋さんが選ばれる理由は、建築業界の中でも独立がしやすいことです。
    足場鳶の仕事内容は高い専門知識が必要ですが、パターンを覚えてしまえばシンプルな作業が多いためです。

    3年間程、現場を経験すればほとんどのことを覚えられると言われています。
    足場組み立て作業を習得すれば、単なる作業者としての役割だけではなく、
    工事現場の管理・監督を任せられるようになるでしょう。

    工事現場を管理・監督できると、独立をしても問題ありませんが、いきなり起業するのはリスクがあります。
    そこでおすすめなのが、一人親方です。起業する必要はなく、個人事業主として活動ができるからです。

    一人親方で独立すれば、元いた会社から仕事を請け負える可能性もありますので、
    独立する際は仕事を請け負えるかを聞いてみるといいでしょう。
     

    5.まとめ



    高所で作業を行う鳶職の仕事は、1400年以上の歴史があり、時代によっては火消しの役割を担っていました。

    現在では鳶職人の仕事も細分化されており、より専門知識や技術が必要です。

    鳶職人の中でも足場屋さんは仕事の引き合いが多く、収入が高い状況は続くことでしょう。

    将来職人として独立を考えている方は、足場鳶を目指してみてはいかかでしょうか。
  • 【足場】朝顔とは?組み立て方と設置基準、設置単価も紹介
    高所作業を安全に行うために、作業者の墜落防止措置は重要です。では、作業者以外への安全対策はどうでしょうか。
    高所作業で使用している工具や資材を落としてしまうと、地面に落ちた時のエネルギーはとても大きくなります。

    もし落下した物体が人に当たってしまうと大きな事故となるので、高所作業の足場には、作業床の端に幅木と呼ばれる板の設置が義務付けられています。
    しかし、幅木だけで落下物事故を防ぐのは難しいでしょう。

    万が一の落下物に対する対策が必要です。今回は、仮設足場からの落下物による事故を防止する対応について解説します。

      ▼ 目次
       1.足場の朝顔とは
       2.  足場の朝顔の正式名称
       3.  足場の朝顔の組み立て方
       4.  足場の朝顔の設置基準
       5.足場の朝顔の設置単価
       6.  足場の朝顔を設ける際の注意事項
        6-1.  朝顔の角度に注意する
        6-2.  同一メーカーのセット品を利用する
       7.まとめ


    1.足場の朝顔とは


    公道や歩道に隣接する高所作業の仮設足場を設ける場合は、落下物による危害を防止するために防護用板の設置が必要です。

    この防護用板は足場の外側面にはね出して設置されています。足場から斜め上に広がっているため、
    その形が花のアサガオに似ていることから業界用語で「朝顔」と呼ばれています。

    2.足場の朝顔の正式名称


    朝顔の正式名称は防護棚と言いますが、労働安全衛生規則第537条で「防網」、建築基準法第136条の5では
    「鉄網」または「帆布(はんぷ)」との記載もあります。

    厚生労働省の「国土交通省の仕様書に基づいた足場等の安全対策」では「防護棚(朝顔)」とも記載されているため、
    朝顔で十分に通じます。

    3.足場の朝顔の組み立て方


    朝顔の組み立て方は次の通りです。

    ①朝顔の主材と斜材を受ける金具を、足場の建枠に取り付ける

    ②取り付けた金具に、朝顔の主材とスライド管を取り付ける
    ※スライド管は朝顔を開閉するために必要な部品です。

    ③スライド管にアサガオ斜材を取り付ける

    ④斜材と取り付けた主材の先端にロープを取り付け垂直状態にする
    ※この取り付けたロープは朝顔を開閉するために必要です。

    ⑤朝顔が必要となる幅の長さまで、主材と斜材を組み立てる

    ⑥組み立てた主材の根元にバンノー受けL型を、先端にバンノー受けC型を取り付ける

    ⑦主材とバンノー受けによってフレーム状の枠ができるので、枠にフレームのフレ止めを取り付ける
    ※フレ止めは、バンノー鋼板を受けるためにも必要な部材です。

    ⑧フレームにバンノー鋼板を取り付ける

    ⑨バンノー鋼板を全て取り付けたら、ロープを緩めて朝顔を倒して角度を調整する

    ⑩朝顔の角度が決まったら、斜材の吹き上げ防止ピンを取り付ける
    ※朝顔の下方向への応力については斜材で受けますが、風などで上方向に持ち上がらないように、
    忘れずに吹き上げ防止ピンを取り付けてください。

    ⑪隣り合う主材の間に、隙間がないか確認する
    ※各部材に隙間がなければ朝顔の完成です。

    4.足場の朝顔の設置基準


    朝顔の設置基準は建設基準法施行令第136条の5で、工事現場の境界線から水平方向の距離が5m以内、
    かつ地盤面から高さ7m以上ある時に設置すると決められています。
    そして構造は、国土交通大臣の定める基準に従わなければなりません。

    国土交通大臣の定める基準とは、昭和42年に「建設工事等の工事現場における落下物による危害を防止するため
    の措置に関する指導基準」として通達されています。

    建設工事などの作業する場所が地盤面から10m以上の高さにある場合は、朝顔を少なくとも1段以上設置する必要があります。
    さらに、高さが20m以上の場合は、2段以上の朝顔を設置しなければなりません。

    落下物を受ける部分についても、板状のもので隙間がないことや、木板の場合は厚さが1.5cm以上、
    金属板等その他の材料の場合は、同等以上の効力がある厚さとされています。

    取り付け方についても、骨組の外側から水平方向に2m以上突き出させ、角度も水平方向に対して20度以上取らなければなりません。
    朝顔の最下段は、工事を行う部分の下10m以内に設置します。

    5.足場の朝顔の設置単価


    朝顔の設置単価は、2019年時点で1m当たり5,000~5,500円くらいです。
    ただし実際には、運搬費用や撤去費用などを含めると、1m当たり13,000~18,000円くらいとも言われています。

    単価に朝顔を設置する長さを掛けると、朝顔の費用を計算できます。
    例えば、幅10mの範囲に朝顔を設置する場合の費用は、10m×5,500円/m=55,000円または、
    10m×18,000円/m=180,000円です。高さが20m以上の場合は2段必要になるので、費用が2倍になります。

    また朝顔が公道にはみ出てしまう場合は、道路を管理している自治体に占用料金を支払わなければなりません。
    占用料金は、自治体によって単価が違います。

    占用料金は、単価と占用面積を掛けて計算します。
    例えば、工事場所が千代田区で朝顔が公道に7.8平方メートルはみ出る場合の占用料金は、
    17,760円/年×8平方メートル(面積の小数点以下は切り上げ)=142,080円/年です。

    朝顔の設置期間が2カ月であれば、142,080円/年÷12カ月×2カ月=23,680円となります。
    各単価は変動する場合があるので、設置前に最新の単価を確認しましょう。

    6.足場の朝顔を設ける際の注意事項


    朝顔の設置基準は法律や通達で決められていますが、実際に設置する場合の注意点を説明します。

    6-1.朝顔の角度に注意する



    朝顔の設置基準で、水平に対する角度は20度以上必要です。
    これだけの情報では、20度以上であれば何度でも良いと解釈できます。

    しかし、朝顔の角度を大きく取りすぎると、はね出し寸法が2m以下になってしまうので注意が必要です。
    例えば、通常のバンノー鋼板(2,350mm)の場合、角度が20度であれば、はね出し寸法は2,208mmとなり2m以上が確保できます。

    しかし角度が35度になってしまうと、はね出し寸法は1,925mmで2m未満となり、はね出し寸法不足です。
    朝顔は工事の進捗状況や天候によって開閉させる場合があるため、角度を変化させる場合は、
    設置角度とはね出し寸法に注意しましょう。

    6-2.同一メーカーのセット品を利用する


    朝顔は、各メーカーからセット品が販売されています。朝顔を使用する場合は、同一メーカーのセット品を使用しましょう。
    同一メーカーのセットを標準的に組み立てれば、設置基準を満たす朝顔になります。

    朝顔を職人が異なるメーカーの資材で、現地で1から組もうとすると、
    水平方向へのはね出し寸法や取り付け角度を測りながら組み立てなければなりません。
    また隣り合う主材の間に隙間ができる可能性があります。

    7.まとめ


    朝顔が必要になる工事現場は、敷地境界までの距離が短く、公道に近い状況になっています。
    作業中に高所から工具などを落下するようなことがあると、大きな事故につながる可能性があります。

    朝顔の特徴を理解し、正しく設置するようにしましょう。
  • 足場のローリングタワーとは?特徴と組み立て方も解説
    建設現場では業界特有の専門用語があります。高所作業などリスクの高い現場で、コミュニケーションに問題があると、ミスや事故の原因になりかねません。 とは言うものの、経験が浅い人にとっては専門用語を覚えるまでに時間がかかるでしょう。そこで今回は、足場業界で使われている専門用語について説明します。

      ▼ 目次
       1.足場のローリングタワーとは
       2.ローリングタワーの特徴
       3.ローリングタワーの組み立てに必要な資材
        3-1. 建枠
        3-2. 床付布枠
        3-3. 交さ筋かい
        3-4. 車輪
        3-5. 手摺枠
        3-6. 手摺
        3-7. 幅木
        3-8. キャスター止めクランプ
        3-9. 控枠
       4.ローリングタワーの組み立て方
        4-1. 1段目
        4-2. 狭小地(きょうしょうち)
        4-3. 最終段
       5.ローリングタワーを使用する際の注意点
        5-1. 地面が傾いた場所で使用しない
        5-2. 積載荷重を守る
        5-3. 人を載せたまま移動させない
        5-4. アウトリガーでしっかり固定してから使用する
        5-5. 脚立などを作業床で使用しない
        5-6. 墜落制止用器具(安全帯)を使用する
        5-7. 手摺から乗り出さない
        5-8. 手摺や幅木に足を掛けない
        5-9. 資材が外れた状態で使用しない
        5-10. 建枠と交さ筋かいの外側で作業をしない
       6.まとめ

    1.足場業界でよく使われる専門用語20選

    「移動式足場」とも呼ばれている足場のローリングタワーは、高い場所での作業に用いる移動式の仮設足場です。

    一般的には、2階建て程度の高さで作業する時などに利用します。
    建築作業における設備や内装工事などで利用する以外に、イベント設営や高所の清掃、電球交換などにも活用します。

    2.ローリングタワーの特徴

    足場のローリングタワーの特徴は、組み立てた足場を移動できることです。

    一般的な足場は、1度組んだら容易に移動できませんし、移動する場合は1度足場をバラして、組み直す必要があります。
    ローリングタワーを利用することで、移動時に足場の組みばらし作業を省略できます。

    またキャスターが付いているため、人の力で簡単に移動できます。
    さらに途中に作業床を設けることで、中間位置での作業も可能です。

    取り扱いがしやすいローリングタワーですが、組み立てる場合は足場の組立て等作業主任者の選任や
    足場の組立等特別教育の受講などが必要になります。

     

    3.ローリングタワーの組み立てに必要な資材

    ローリングタワーに使用する資材については、見た目が同じような資材であっても、各メーカーで寸法や形が異なる場合がありますので、
    同一メーカーのものを揃えて使用しましょう。

    中央ビルト工業の枠組式ローリングタワーを組み立てるには、次の資材が必要です。

    3-1.建枠

    建枠は、支柱となる建地が門型になったものです。

    3-2.床付布枠

    床付布枠は、掴み金物を接合して作られた作業床です。「足場板」とも呼ばれています。

    3-3.交さ筋かい

    交さ筋かいは、柱と柱の間に斜めに挿して建築物や足場の構造を補強する部材です。

    3-4.車輪

    車輪は、ローリングタワーを移動させるためのキャスターのことです。

    3-5.手摺枠

    手摺枠は、手摺を固定する枠のことです。

    3-6.手摺

    手摺は、人の落下を防ぐものです。

    3-7.幅木

    幅木は、床の端に取り付けて、作業床からの落下物を防ぐものです。

    3-8.キャスター止めクランプ

    キャスター止めクランプは、車輪を固定するためのストッパーのことです。

    3-9.控枠

    控枠は、アウトリガーのことです。

    4.ローリングタワーの組み立て方

    ローリングタワーは基本的にメーカーの指示に従って組み立てる必要があります。
    次からは、一般的なローリングタワーの組み立て方について説明します。

    4-1.1段目

    ①車輪とキャスター止めクランプを組み立てる


    ②床付布枠を取り付ける


    ③建枠に組み立てたキャスター止めクランプを取り付ける


    ④片側の建枠に交さ筋かいを取り付ける

    ⑤反対側の建枠も交さ筋かいを取り付ける


    ⑥1段目の建枠に控枠を取り付ける


    ⑦1段目が安定しているかを確認する


    1段目がしっかり組まれていないと、組み上がったローリングタワーがグラグラと揺れる可能性があります。不安定にならないように、資材同士の結合部に隙間が無いか確認しましょう。正しく組み付けていても安定しない場合は、資材が変形している可能性があるので、変形していないかを確認する必要があります。

    4-2.2段目以降

    ①1段目の建枠に2段目の床付布枠を取り付ける
    ②1段目の建枠に2段目の建枠を差し込む
    ③2段目の床付布枠を足場にして、建枠に交さ筋かいを取り付ける

    3段目以降は必要な高さに応じて、2段目以降と同じように組み立てていきます。

    4-3.最終段

    最終段は建枠ではなく、手摺枠と手摺を取り付けてローリングタワーの完成です。

     

    5.ローリングタワーを使用する際の注意点

    ローリングタワーを安全に使用するための注意点について説明します。

    5-1.地面が傾いた場所で使用しない

    ローリングタワーを使用する時はもちろん、組み立てる時も地面が平らで水平な場所で行いましょう。

    資材を置く場所も必要なので、十分に広い場所で組み立てます。また組み立てた場所から使用する場所に移動する時にも、地面が傾いたところが無いか確認しましょう。

    5-2.積載荷重を守る

    ローリングタワーだけでなく、足場には積載荷重の表示義務があります。これを超えて積載しないように管理しましょう。

    5-3.人を載せたまま移動させない

    ローリングタワーで行える作業の範囲は限られています。作業範囲を移動する場合は、移動時に転落や落下の危険性があるため、人や機材を降ろしてから移動させましょう。

    5-4.アウトリガーでしっかり固定してから使用する

    アウトリガーが付いているローリングタワーは、必ずアウトリガーでしっかり固定してください。中央ビルト工業の1600幅ローリングタワーは、作業床の高さ5400mmまでアウトリガーを必要としないので、キャスターを固定すれば直ぐに作業が行えます。

    5-5.脚立などを作業床で使用しない

    ローリングタワーの上で、脚立などを使用してはいけません。

    5-6.墜落制止用器具(安全帯)を使用する



    ローリングタワーで2メートル以上の高さでの作業を行う場合には、墜落制止用器具(安全帯)を使用しましょう。

    5-7.手摺から乗り出さない

    ローリングタワーの手摺から乗り出してはいけません。ローリングタワーの重心位置が変わり、転倒する恐れがあります。手摺から乗り出す必要がある場合は、ローリングタワーを安全な位置に移動させてから作業を行って下さい。

    5-8.手摺や幅木に足を掛けない

    手摺や幅木に足を掛けてはいけません。作業高さに届かない場合は、ローリングタワーの段数を増やします。

    5-9.資材が外れた状態で使用しない

    ローリングタワーの資材が外れた状態での使用や移動はしないでください。資材が外れた場合は、その場で修正します。

    5-10.建枠と交さ筋かいの外側で作業をしない


    ローリングタワーを使用する際に重要なのが、建枠と交さ筋かいの内側で作業をすることです。建枠と交さ筋かいの外で作業をすると、ローリングタワーの重心が偏心して転倒の原因となります。

    6.まとめ



    今回はローリングタワーの特徴や組み立て方、使用時の注意点を解説しました。

    ローリングタワーは、作業の範囲が限定的な高所作業において利用します。

    安全に高所作業をするためにも、使用する際の注意点を守って活用してください。