建築工事の際に必要な足場ですが、屋根の工事の場合、どのような種類や注意点があるのでしょうか。
法律では、作業が2メートル以上の高さで行われる場合には、足場の設置を義務付けています。
屋根工事においても、安全性と近隣住民への配慮を最優先に考え、
適切な足場を設置することが重要です。
それでは、屋根工事ではどのような足場を設置すればよいのでしょうか。
今回は、屋根工事に使用する足場について解説します。
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▼ 目次 |
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1.屋根工事に使用する足場の特徴 |
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2. 屋根足場の種類 |
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3. 屋根足場を設置する際の注意点 |
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3-1. 職人の安全確保 |
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3-2. 墜落防止対策を行う |
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3-3. 近隣住民への配慮 |
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4. 屋根足場なら『マルチトラスB』 |
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5. まとめ |
1.屋根工事に使用する足場の特徴
屋根工事に使用する足場の特徴は、建物の外周に設置するような足場とは異なり、
垂直ではないということです。
多くの建物の屋根には雨を流すための勾配が付いているため、
屋根の上で作業をするための足場も屋根の形状に合わせて組み立てる必要があります。
一般的な戸建ての屋根工事で使用する屋根足場は、外壁工事用の足場とは異なり、
作業者が乗る足場板は設置せず、単管パイプだけで組み立てられます。
作業者は、屋根の上で単管パイプに体重を預けることによってバランスをとります。
屋根工事で足場を設置する際に重要なのは、屋根勾配です。
屋根勾配とは屋根の傾斜の角度のことで、水平方向に対する角度を示すものです。
一般的に角度の単位は「度」で示しますが、日本の建築業界では屋根勾配を「寸」という単位で表します。
古来、日本では長さや重さの単位として「尺貫法」が使用されていました。
この「尺貫法」では、長さは「尺」、重さは「貫」が基本単位でした。
「尺貫法」において「寸」は「尺」の10分の1の長さを表し、メートル法では約3.03センチメートルとなります。
この単位は角度を示す際にも使用されていましたが、
1891年(明治24年)に「度量衡法」が制定され、1951年(昭和26年)に「計量法」が制定されました。
「計量法」の制定により、国内の製品についても、国際基準に基づいて長さや重さを正確に計測することができるようになりました。
現在は、国際単位系(SI単位)に統一され、図面などではメートルを基準とする単位が使用されています。
しかし建設現場では、江戸時代の名残である「尺貫法」が使用され続けています。
そのため、建設現場では屋根勾配を「3寸」や「4寸」といった形で示すのです。
ここでの「3寸」は、水平長さ10寸(約30センチメートル)に対して、
垂直高さが3寸(約9センチメートル)の勾配を意味します。
屋根勾配は建築物の用途・外観・屋根材の種類などによって決まり、
「6寸」以上が急勾配、「3寸」~「5寸」が並勾配、「3寸」以下が緩勾配と区別されています。
一般的には、足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
屋根の形状や作業内容に応じて、足場設置の必要性を判断しましょう。
2.屋根足場の種類
一般的な屋根足場は、外壁工事で使用する足場と同じ材料を使用することができます。
代表的な足場は、単管足場です。
単管足場であれば、屋根の中心に棟があり四方に流れる形状の寄棟(よせむね)屋根や、
屋根の1か所が頂点になっている方形(ほうぎょう)屋根のような、
上と下で寸法が変わる屋根にも柔軟に足場を組むことができます。
2枚の板を左右対称に合わせたいわゆる三角屋根である切妻(きりつま)屋根や、
1枚が片方にだけ流れる片流れ屋根のような屋根には、くさび式足場で一定のピッチで組むこともできます。
3.屋根足場を設置する際の注意点
ここでは、屋根足場を設置する際の注意点について説明します。
3-1.職人の安全確保
一般的に屋根足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
これは角度にすると約30度になります。
一般的な道路の場合、傾斜が約3度あれば傾きを感じるでしょう。
実際に30度の傾斜を体験すると、かなり傾いていることがわかります。
単に「6寸」未満であることを理由に屋根足場は不要であると判断するのではなく、
屋根の材質や状態も確認して足場の必要性を検討することが重要です。
屋根の傾斜が「6寸」未満の場合、足場を設置する際は、
顧客に対して設置の理由を明確に説明する必要があります。
足場を設置すると、その分費用が増える可能性があるためです。
足場の設置に伴う追加費用は顧客が負担することになりますので、
足場の単価を明確に提示し、増加分の費用を計算できるようにしましょう。
3-2.墜落防止対策を行う
単に屋根足場を設置しただけでは、職人の安全は完全には確保されません。
傾斜が緩やかで足場を設置しない場合であっても、墜落防止対策を行いましょう。
平成26年1月に作成された
「墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/000550445.pdf
では、平成25年の建設業における墜落による死亡災害の特徴として、
「屋根、屋上」からの墜落が17%となっており、
「足場」からの墜落が次に多いという結果が示されています。
こうした事故を防ぐために、屋根足場を設置するかどうかにかかわらず、墜落防止対策を行いましょう。
具体的な墜落防止対策としては、屋根の上での作業を始める前に、
墜落防止対策の要である最初の垂直親綱を設置することが挙げられます。
垂直親綱に安全ブロックを連結し、墜落制止用器具のフックを取り付けることで、
作業開始前から作業終了まで、作業者の墜落を防ぐことが期待できます。
3-3.近隣住民への配慮
屋根の上での作業を行う際は、ほこりやゴミが飛散する可能性があります。
これらが近隣住民の敷地に落ちたり、建物に引っかかったりすることを防ぐために、
養生シートを設置しましょう。
工事期間中は、屋根の上という高い場所に作業者がいるため、視線が気になる近隣の方もいるでしょう。
養生シートを設置することで、近隣の方は視線を感じずに済み、作業者も作業に専念することができます。
また、設置や解体の作業を行う際は騒音が発生するため、防音シートを設置し、
極力音が漏れないようにする配慮が必要です。
4.屋根足場なら『マルチトラスB』
ここまで、一般的な戸建て住宅の屋根を想定して、屋根足場について説明しました。
ここからは、特殊な建物の屋根足場について説明します。
特殊な建物の一例として、神社仏閣について考えてみましょう。
神社仏閣には日本古来の建築様式が採用されており、その多くが本瓦葺きと呼ばれる工法によるもので、
形は反り屋根が一般的となっています。
神社仏閣に反り屋根が多い理由は、形の美しさだけでなく、木造の建物を雨から守り建物内に自然光を取り込むためです。
建物の主体である「身舎」部分の屋根の勾配はきつくし、軒の勾配は緩くすることでこれを実現します。
神社仏閣の屋根足場を組む際は、この屋根の反りがあるため、一般の戸建て住宅と同様の足場を組むことが困難です。
このような場合、中央ビルト工業の『マルチトラスB』が有用です。
『マルチトラスB』は、設計条件によっては25メートル飛ばすことができるジョイント式大空間用作業足場で、
大スパンとなる素屋根や作業ステージ、渡り通路など、さまざまな用途に使用できます。
素屋根とは、工事期間中に柱や壁などを雨で濡らさないようにする、雨養生のための仮設物です。
素屋根を設置すれば、雨が降っていても工事を続けることができるため、
工事期間が長い神社仏閣建築にとって、不可欠な仮設建物です。
『マルチトラスB』は、ピンを差し込んでユニットとして使用することができます。
また、部品点数が少なく、簡単に施工できるため、工期の短縮を期待できます。
5.まとめ
今回は屋根足場について解説しました。
一般的な基準では、屋根足場を設置する目安は勾配「6寸」以上とされていますが、
傾斜が緩やかな屋根であっても、屋根や屋上からの墜落災害が発生する可能性があるため、
墜落防止対策は必ず行いましょう。