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コラム

  • 足場業界でよく使われる専門用語20選を紹介
    建設現場では業界特有の専門用語があります。高所作業などリスクの高い現場で、コミュニケーションに問題があると、ミスや事故の原因になりかねません。

    とは言うものの、経験が浅い人にとっては専門用語を覚えるまでに時間がかかるでしょう。そこで今回は、足場業界で使われている専門用語について説明します。

      ▼ 目次
       1.足場業界でよく使われる専門用語20
        1-1.  アウトリガー
        1-2.  朝顔
        1-3.  犬走り
        1-4.  インパクト
        1-5.  ウインチ
        1-6.  越境(えっきょう)
        1-7.  親綱
          1-8.  壁つなぎ
          1-9.  仮囲い
          1-10.  キャットウォーク
          1-11.  狭小地(きょうしょうち)
          1-12.  くさび緊結式足場
          1-13.  現調
          1-14.  工期
          1-15.  子方
          1-16.  下げ振り
          1-17.  駄目
          1-18.  談合
          1-19.  ばらし
          1-20.  屋根足場
       2.まとめ


    1.足場業界でよく使われる専門用語20選


    足場と言っても、いくつかの種類があります。まずは、足場の種類について説明します。

    足場業界では、鳶と呼ばれる職人が作業を行っています。記録上、鳶職の歴史は日本最古の建築物である、法隆寺建立の時代までさかのぼります。約1400年前からある職業です。

    鳶職と聞くと、気性が荒く粗暴な人が多いという印象を持つ人もいるかもしれません。しかし危険な高所で作業を行うため、ちょっとしたミスや油断が重大事故につながる可能性があり、常に緊張感を持って作業を行っています。そのため、つい言葉が荒くなることもあるでしょう。

    足場業界では、鳶職とのコミュニケーションが重要となります。次からは足場業界で鳶職がよく使っている専門用語20個を厳選して説明します。

    1-1.アウトリガー





    アウトリガーとは足場やクレーン車、脚立など、高さがあってバランスの悪い物が転倒しないために支える部材のことです。足場の現場では、特に移動式足場であるキャスター付きローリングタワーで使われています。

    アウトリガーを使用する場合は転倒防止のため、先端の支柱が地面と隙間ができないようにしっかり設置します。隙間を作らないためには地面に直接設置するのではなく、一定の面積のある敷板の上に設置するのがポイントです。

    1-2.朝顔




    朝顔とは足場からの落下事故を防止するため、足場側面に上向きに傾斜させて取り付ける防護柵のことです。建設現場が道路や歩道などに隣接している場合に、落下物などから歩行者を保護する役割を果たします。

    上向きに傾斜しているので、落下物が朝顔内に留められるのが特徴です。設置には道路占用の許可が必要で車道上は5m以上、歩道上は4m以上の高さを設ける必要があります。

    1-3.犬走り




    犬走りとは建築物の周囲にある、幅600mm以上の隙間のことです。犬走りにはコンクリートで固めたり、砂利を敷き詰めたりする2種類の方法があります。犬走りの由来は、犬1匹が通れるくらいの細い道とされています。

    犬走りの目的はもともと日本家屋には雨どいが無かったため、雨の跳ね返りから建物を保護したり、建物の周りに雑草が生えないようにしたりすることです。

    工事する際には足場の設置に使用するので、事前に犬走りを確認することが重要です。

    1-4.インパクト




    インパクトとはインパクトドライバーの略称で、ビスやボルトを締めたり緩めたりする時に使う電動工具です。インパクトは、モータにハンマーと呼ばれる打撃する部品が取り付いており、ハンマーが打撃することで、大きなトルクが得られます。

    打撃による強い衝撃でネジを締めつけたり、緩めたりできるためインパクトドライバーと呼ばれています。

    1-5.ウインチ




    ウインチとはワイヤーをドラムに巻き付ける構造で、動力によって物を上げ下ろしする機械です。足場組み作業では、重い足場資材の荷揚げ荷下ろしに使用されます。

    1-6.越境(えっきょう)


    越境とは、敷地の境界線を越えることです。建設工事で足場を設置する場合、最低でも50cm程度の幅が必要です。敷地境界までの幅が50cm未満しか無いと、一般的な足場が設置できません。

    必要な幅が確保できない場合は、越境して足場を組む必要があります。もし越境する場合は、近隣の敷地を使用させてもらう必要があります。

    近隣の敷地使用については民法209条に明記されており、隣地の利用を請求できます。ただし、隣人の承諾が無ければ立ち入ることもできません。

    1-7.親綱




    親綱とは高所作業において作業者の墜落を防止するため、墜落制止用器具のフックを掛けるロープのことです。

    1-8.壁つなぎ


    壁つなぎは足場の倒壊や変形を防ぐため、建築物と足場を連結する金具のことです。金具には種類があり、躯体打ち込みインサートや先付けプレートアンカーなどがあります。

    1-9.仮囲い




    仮囲いとは、工事期間中に建築現場の外周を囲う仮設の塀のことです。仮囲いを設置する目的は、工事期間中の安全確保、第3者災害の防止、盗難防止、騒音・塵挨の飛散防止などがあります。

    1-10.キャットウォーク




    キャットウォークとは、高所に設置された設備などのメンテナンス用に施工された点検通路のことです。劇場や体育館などは、照明やその他の設備が高所にあることが多いため、点検や修理を行うためにキャットウォークを建設時に設置します。


    1-11.狭小地(きょうしょうち)




    狭小地とは、20坪以下の狭い土地のことです。しかし足場の現場では「建物と建物の間の現場」のことを指します。狭小地に建物を建てる場合は、敷地境界ギリギリまで建物を建てることが多いため、足場を立てるスペースが狭くなり、足場組立ての難易度が高くなります。

    1-12.くさび緊結式足場




    くさび緊結式足場とは、支柱(建地)にコマと呼ばれる緊結部を一定間隔に備えた鉄パイプ(鋼管)に、くさびの付いた鉄パイプをハンマーで打ち込んで緊結して組み立てる足場のことです。

    1980年に株式会社ダイサンが日本で初めて販売した足場で、ビケ足場と呼ばれることもあります。くさび緊結式足場は、主に中高層建築の施工に採用されています。

    1-13.現調


    現調とは現地調査の略称で、現場を下見する意味で使われます。現調は工事の依頼者から送付された画像やGoogleマップからある程度把握できますが、実際に現場を下見しないとわからないことも多くあります。

    1-14.工期


    工期とは、工事が行われる期限や期間のことです。建設工事の工期は契約時に決められ、天候に左右されることがあるため、ある程度余裕を持った期間が設定されています。

    1-15.子方


    職長の指示に従って作業を行う鳶職人のことです。

    1-16.下げ振り


    下げ振りは糸の先に付けた重りを垂らして、柱や壁が垂直に施工されているか調べる道具です。糸と重りだけの道具ですが、簡単に垂直かどうかを調べることができます。

    1-17.駄目


    工事後に見つかった不具合のことで、不具合を直す工事を駄目工事と言います。

    1-18.談合




    談合とは競争入札がある公共工事などにおいて、競合する事業者同士が事前に入札金額を話し合って協定を結ぶことです。過度の競争を回避することや、高い価格で落札するために行われる行為です。

    談合は談合罪という刑罰があり、刑法96条で3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方が課せられます。

    1-19.ばらし


    ばらしとは、足場を解体することです。足場以外にも、建物基礎の型枠をばらす作業などもばらしと言います。

    1-20.屋根足場


    屋根足場とは、屋根の上に設置する足場のことです。マンションのように屋根が平らであれば足場を組む必要はありません。傾斜のある屋根で作業する場合には足場を設置します。


    2.まとめ




    足場業界でよく使われる専門用語について解説しました。専門用語が多くあり、用語を把握していないと、作業中やミーティングの時の会話を理解するのが難しくなります。

    仕事中のコミュニケーションを円滑にするためにも、足場職人を目指す人、足場職人になったばかりの人は、専門用語の勉強をしておきましょう!
  • 足場図面の書き方を4つの手順で解説!足場の設計と図面の書き方について
    建築工事において、足場は高所で作業を行うために欠かせません。現在、さまざまな建築工事で足場が利用されています。一見すると当たり前のように組まれている足場ですが、ちゃんと設計して組まないと、作業に支障をきたす場合があるのです。

    そこで今回は、足場の設計と図面の書き方について説明します。

      ▼ 目次
       1.足場の種類
          1-1.  単管足場
          1-2.  くさび式足場
          1-3.  枠組み足場
       2.足場図面の書き方
        2-1.  建築物を書く
        2-2.  足場の割を出す
        2-3.  割り付けの調整
        2-4.  高さを出す
       3.まとめ


    1.足場の種類


    足場と言っても、いくつかの種類があります。まずは、足場の種類について説明します。

    1-1.単管足場



    単管とは直径48.6mmの鉄パイプのことで、この単管をつなぎ合わせて組み立てた足場を単管足場と言います。単管はクランプと呼ばれる固定器具を軸に、足場の形状を柔軟に変化させて組めるのが特徴です。形状を柔軟に変化できるため、狭い場所でも足場を組めます。

    しかし、単管足場は、他の足場と比べて強度や安全面について弱いところがあり、高層の足場としては適していません。単管足場の材料は、ホームセンターで購入が可能で、DIYなどに使用する人も多いでしょう。部材のコストは比較的安価ですが、組み立てや解体作業に時間がかかります。

    1-2.くさび式足場




    くさび式足場は、くさび緊結式足場やビケ足場とも呼ばれています。くさびとは、断面がV字形になっている道具のことで、一方が薄く、反対側が厚いため、隙間に打ち込んで使う物です。用途としては、隙間を広げたり、周囲を圧迫して物と物が動かないようにしたりします。

    くさび式足場は、このくさびの特徴を活かして足場を組みます。くさび式足場の部材には、決められた間隔でくさびを打ち込むコマと呼ばれる凹みがあり、くさびの付いたパイプをコマに差し込んで組むのが特徴です。

    組み立てに必要な工具は、ハンマー1本だけで行えるため、組み立てや解体作業を効率的に行えます。強度や耐久性も高く、高さ45mまでの足場を組めます。単管足場に比べ、設置場所のスペースを必要とするため、狭い場所などでは設置できません。

    1-3.枠組み足場




    枠組み足場は、文字通り定型の枠を使って組む足場です。橋梁工事や建築工事などで利用されています。足場に使用する枠については、工場で生産されているため、安定した強度があります。

    足場にとって安定した強度があるということは、安全性が高いということです。足場の高さも原則として45mまで組むことが可能です。枠に軽量な素材のアルミニウムを使用した製品もあり、軽量で扱いやすい物もあります。

    くさび式足場と同様に、組み立てや解体作業が簡単にできる足場です。枠組み足場は、比較的大きな建築現場で利用されています。その理由として、設置にはある程度のスペースが必要で、部材の搬入出や置き場についても、十分なスペースが必要となるからです。

    これら以外にも、吊り足場や移動式足場など、場所と用途によって使われる足場の種類が異なります。

    2.足場図面の書き方


    足場を組むためには、図面を作成する必要があります。ただし、すぐに図面を作成するのではなく、書き始める前に工事現場へ行って、足場を組む環境を確認しましょう。

    なぜなら、新しく建物を建てる場合はグランドレベルが図面と異なっている場合があるからです。また修理や改築する場合は、建物の周囲にエアコンの室外機や建物とは別の構造物など、足場に干渉する物があるかもしれません。

    さらに建物と敷地境界線の幅の確認を怠ると、設計した足場が組めない可能性があります。現場で確認した情報を前提に、足場図面を作成する必要があるのです。

    足場の図面の書き方については、決まった書き方はありません。鉛筆と定規で書く人やCADソフトを使って書く人もいます。書き方は違いますが、設計の考え方はどの足場でも共通しています。

    2-1.建築物を書く


    まずは、建築物を書きます。新築の場合は図面があるので、平面図や立面図を入手します。入手した図面は、建物の外回りに関する寸法が記入されている物を用意しましょう。

    建築図面は、壁芯で寸法が書かれているため、壁や基礎の厚み、軒や出窓など建物の外形寸法も調べておくことが必要です。次に打ち合わせで、作業を行う職人と作業高さや建物への出入り口、階段の位置などを決めましょう。

    足場を組む前提条件が決まったら、入手した立面図や平面図に記入します。また図面には、敷地境界に関することや、作業で注意することなど、必要な情報を全て記入しておくと良いでしょう。

    古い建物の場合、図面が無い場合があります。図面が無い場合は、建物の実寸が必要です。実寸した寸法をもとに、建物の立面図と平面図を書きます。

    2-2.足場の割を出す


    足場の割を出します。足場の割とは、平面図をもとに足場となる床板を建物の周囲に並べていく作業です。

    足場の割を出すことで、建物の周囲を足場がいくつに分割されるか確認できます。割を出す場合は、建物の周囲に300mm程度の隙間ができるようにしましょう。最初に足場の割を出す場合は、基準寸法として床板の寸法を幅600mm長さ1800mmとして並べていきます。

    2-3.割り付けの調整


    足場の割を出すと、建物の角や端の部分で建物と干渉したり、はみ出し過ぎたりすることがあるでしょう。そのような部分については、割り付けの調整を行います。

    割り付けの調整が上手くできるかが、足場設計のポイントです。足場のサイズは規格で決められており、メーター規格であれば、1800mm、1500mm、1200mm、900mmと決まられています。(インチ規格であれば、1829mm、1524mm、1219mm、914mm、610mmです)

    例えば、長さ1800mmの床板が、建物と300mm干渉していた場合、床板を1200mmに変更することで、建物との干渉を回避でき、建物との間に300mmの隙間を確保できるのです。

    一方、建物の端で1500mmはみ出た場合、建物との隙間300mmと足場の幅600mmを確保するため、床板の長さを1200mmにすることで、はみ出しを調整します。

    調整が難しい場合は、300の倍数で割り切れない場合です。例えば、建物端部で990mmはみ出した場合を考えてみましょう。このまま足場を組むと、建物との隙間の寸法は390mmです。

    隙間を少なくするために300mm短い足場に変更すると、建物との隙間が90mmとなります。どちらの場合も、作業性や安全性に影響があるでしょう。

    このような場合は、90mmを埋めるような補助足場を設けるか、余った寸法を反対側の隙間に均等に振り分けて調整します。この作業を繰り返して、建物周囲の足場の割を調整し、平面図に反映させます。


    2-4.高さを出す


    平面の図面が完成したら、次は立面図の図面を書きます。立面図で重要なのが、グランドレベルと最高の作業高さです。グランドレベルとは、建物の基準となる地盤の高さです。基礎や建物の基準となります。

    グランドレベルは建築現場が平坦とは限らないため、事前確認してどこを基準にするかを決めます。レベルが違う場合は、最も高い部分を基準にしましょう。

    低いところ基準にすると、位置ずれや倒壊防止をするための根がらみが組めなくなるからです。レベルが決まったら高さ方向の割り付けを行います。

    高さ方向にもメーター規格とインチ規格があり、決められた寸法がありますので、必要な作業高さに作業床が設置できるように割り付けて図面にします。

    足場の図面は、作業足場以外に建物への出入り口や階段などの位置を配置して完成です。図面が完成したら、図面通りの足場を組むために必要な部材を分類して使用数を数え、工事に向けた準備をします。

    3.まとめ




    足場は建築物の形に合わせて設計します。足場図面を書く上で重要なのは、工事現場を事前に確認して、作業を行う会社と足場の条件を明確にしておくことです。

    足場の割については、部材のサイズや建物との隙間を調整して、安全で作業性の良い足場を設計します。

    いざ足場を組んでいる時に、寸法が合わないことや足場部材が足りないということが発生しないように、図面でしっかり確認しましょう。

    足場部材の種類やデータについては、中央ビルト工業のホームページで公開されています。調整に便利な部材のデータもあるので、ダウンロードして活用して下さい。
  • 足場の組立て等特別教育とは?資格の取得方法も解説
    建設工事では、基本的に作業床となる足場の確保が必要になります。足場からの転落・墜落による労働災害を防ぐためにも、作業者は足場や作業方法についての知識、労働災害に関する知識などを知っておかなければなりません。

    労働災害が多発した背景から、平成27年に労働安全衛生規則の一部が改正され、「足場の組立て等特別教育」が追加されました。

    そこで今回は「足場の組立て等特別教育」について詳しく紹介していきます。講習内容や資格取得までの流れ、また「足場の組立て等作業主任者技能講習」との違いについても確認します。

    ▼ 目次
     1.足場の組立て等特別教育とは
     2.足場の組立て等特別教育の資格を取得するには
      2-1.  受講内容
      2-2.  受講資格
      2-3.  受講料
        3.足場の組立て等作業主任者技能講習とは違う
      3-1.  足場の組立て等作業主任者技能講習とは
      3-2.  足場の組立て等特別教育との違い
     4.まとめ


    1.足場の組立て等特別教育とは



    労働安全衛生法第59条の規定により、事業者は労働者が特定の危険性を伴う業務を行う場合に、安全又は衛生のための教育を行わなければなりません。

    足場を使う高所作業における災害や死亡事故が後を絶たない中、労働安全衛生規則が一部改正され「足場の組立て等特別教育」が追加されました。

    平成27年7月1日より、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務を行う場合は、必ず特別教育を修了しなければなりません。しかし地上や堅固な床上における補助作業や、足場上を歩行するだけの場合は対象ではありません。
     
    「足場の組立て等特別教育」を作業者に受講させていない、または無資格の作業者に足場の組み立て作業を行わせるなどの行為が発覚した場合、事業者に6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
     

    2.足場の組立て等特別教育の資格を取得するには





    次からは「足場の組立て等特別教育」の受講内容や受講資格、受講料について説明します。


    2-1.受講内容


    「足場の組立て等特別教育」のカリキュラムと講習時間は下記のとおりです。


     
    出典:建設業労働災害防止協会「足場の組立て等の業務に係る特別教育について」 


    講習は学科のみで、実技はありません。

    カリキュラムの合計時間は一般的に6時間ですが、平成27年7月1日の足場特別教育が義務化された時点で足場作業に従事していた方は、3時間の講習になります。ただし3時間の講習を受ける場合は、経験証明が必要です。

    また下記に該当する方は、特別教育を省略することができます。

    ・足場の組立て等作業主任者技能講習を修了している方
    ・建築施工系とび科の訓練(普通職業訓練)を修了した方、居住システム系建築科又は居住システム系環境科の訓練(高度職業訓練)を修了した方など足場の組立て等作業主任者技能講習規程(昭和 47 年労働省告示第 109 号)第1条各号に掲げる方
    ・とびに係る1級又は2級の技能検定に合格した方
    ・とび科の職業訓練指導員免許を受けた方
     

    2-2.受講資格


    「足場の組立て等特別教育」に関して、受講資格はありません。また実務経験が無くても受講できます。

    ただし年少者労働基準規則によって、18歳未満の方は高さ5メートル以上の場所で、墜落により作業者が危害を受けるおそれのある業務や、足場の組立て・解体又は変更の業務に就くことはできません。

    そのため18歳未満の方が「足場の組立て等特別教育」を受講して修了しても、修了証は発行されません。また地上又は床上における補助作業の業務しか就けませんので注意しましょう。


    2-3.受講料


    「足場の組立て等特別教育」の受講料は開催している各協会や団体などによって異なりますが、テキスト代込みで10,000円程度で受講できます。また、WEB講座でeラーニング形式による受講も可能です。

    WEB講座の受講費用は8,000円程度で、一般的な講習会の費用と変わりはありません。講習会場へ行くのが難しい方や最短で受講を修了したい方はWEB講座を利用すると良いでしょう。作業者に対してまとめて特別教育を受講させたい場合は、社内研修として講師を派遣するサービスもあります。

    特別教育を修了した後に、教育を実施した機関から修了書が発行されます。事業者は、作業者が修了した教育履歴を管理しなければなりません。修了証の多くは紙で発行されることが多いです。修了証は事業者が保管するように義務付けられています。


    3.足場の組立て等作業主任者技能講習とは違う



     
    「足場の組立て等特別教育」と並んで聞く言葉に「足場の組立て等作業主任者技能講習」があります。次からは、この2つの違いについて解説します。


    3-1.足場の組立て等作業主任者技能講習とは


    「足場の組立て等作業主任者」は、労働安全衛生法により定められた国家資格です。高さ5メートル以上の足場の組立てや解体、変更の作業を行う場合は、作業主任者を1名選任しなければなりません。

    作業主任者は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した方の中から選びます。選任された作業主任者は作業者に対して、安全に作業ができるように作業場の管理や作業指示、安全管理のための技能などを指導します。

    事業者は、選任した作業主任者の氏名と作業内容を記載したものを作業場の見やすい箇所に掲示し、作業者に周知しなければなりません。また作業主任者を2名以上選任した場合は、それぞれの職務の分担を明確にして掲示しましょう。


    3-2.足場の組立て等特別教育との違い


    足場の組立て等特別教育と足場の組立て等作業主任者技能講習との違いは、「作業をする人」「作業者の指揮をとる人」と受講対象者が異なることです。

    「足場の組立て等作業主任者技能講習」は作業場における管理・指導者のための国家資格を取得する講習です。技能講習会で行われる修了試験に合格しないと資格を取得できません。

    受講資格は満21歳以上で足場の組立てや解体、変更に関する作業に3年以上従事した経験を有する場合、満20歳以上で大学、高専、高校、中学で土木、建築または造船に関する学科を専攻しており、その後2年以上足場作業に従事した経験がある場合のいずれかになります。

    一方、「足場の組立て等特別教育」は作業者に必要な知識やルールを学ぶための教育です。足場の組立て、解体または変更作業に関わるすべての人が受講する必要があり、6時間のカリキュラムを受講すれば修了証が発行されます。

    このように「足場の組立て等作業主任者」と「足場の組立て等特別教育」は、資格取得の対象者や目的が異なります。両者の違いを理解して、必要に応じた資格を取得しましょう。

    4.まとめ



     
    安全で効率的に建設工事を行うためには、適切な足場が必要です。その足場を組み立てる全ての作業者は、正しい知識で作業をしなければなりません。

    また作業者に特別教育を受講させることは、事業者の責務でもあります。

    「足場の組立て等特別教育」で学ぶ内容をしっかりと理解し、足場の作業における、転落や墜落といった事故の防止に努めましょう。
     
  • 足場を利用する前に知っておくべきルール!労働安全衛生法と併せて解説
    1950年代から1970年代までの高度経済成長期時代に、政府や企業は多くの資金を投入して、多くの建築物をつくってきました。大量につくられた建築物は、築50~60年となり老朽化が進んできています。

    建造物の多くが建て替えや大規模補修時期を迎えています。解体や建設工事において、高所作業は必ずと言っていいほど必要な作業です。高所作業を安全かつ効率的に行うために仮設足場を設置する必要があります。

    単純に足場と言っても、数メートルのものから数十メートル以上のものまであります。そこで今回は、足場設置のルールについて詳しく解説していきます。


      ▼ 目次
       1.足場のルールはなぜ決められているのか
       2.労働安全衛生法とはどのような法律か
        2-1.  足場設置箇所について
        2-2.  足場使用時の措置について
        2-3.  足場材について
        2-4.  足場点検について
        2-5.  足場技能講習について
       3.足場利用の注意点
       4.まとめ

    1.足場のルールはなぜ決められているのか


    建設作業などで組まれる足場は、事故を防止するためにルールが決められています。厚生労働省が公表している「令和3年労働災害発生状況」によると、建築業の労働災害における死亡者数は、全産業の中で最も多い状況です。

    また、死亡災害の25%が転落・墜落によるものです。この傾向は災害統計を取り始めたときからほとんど変わりません。建築業で転落・墜落事故が発生するのは、高所での作業が多いからです。


    参考:厚生労働省「令和3年労働災害発生状況」 


    高所作業において転落や墜落する原因は、適切な足場の設置・利用をしていないことです。例えば一時的な作業だからといって足場を設置せずに、付近の出っ張りに足をかけて作業することで、転落や墜落事故が起こるのです。

    厚生労働省は足場からの墜落や転落事故を防止するため、平成21年6月に労働安全衛生規則を改正し、「足場・架設通路及び作業構台からの墜落・転落防止措置等」が見直されました。

    平成27年7月1日から施行され、足場からの墜落防止対策が強化されています。このように労働安全衛生法などによって、足場に関するルールが決められているのです。


    2.労働安全衛生法とはどのような法律か



     
    労働安全衛生法が制定された目的は、職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境を形成することです。

    具体的には、下記について定められています。

    ・事業者等の責務
    ・労働者の協力
    ・建設工事の注文者等への配慮

    建設業に関わる全ての人達は、労働安全衛生法に沿って計画的に労働災害防止に取り組む必要があります。

    高所作業において、適切な足場を設置することは事業者の責務であり、労働者は足場を正しく使用することに協力しなければなりません。

    2-1.足場設置箇所について


    足場の設置については労働安全衛生規則第563条で、「高さ2m以上の作業場所には、作業床を設けなければならない」とされています。

    また、足場の作業床については、同法第563条で、下記のように決められています。

    ・幅は40cm以上
    ・床材間の隙間は3cm以下
    ・床材と建地との隙間は12cm未満

    さらに墜落防止の措置として、労働者が墜落する危険のある箇所には足場の種類に関係なく、たわみが生じない強度の床材を使用する必要があります。また著しい損傷や変形、腐食がないかも確認して下さい。

    わく組足場は、交さ筋かいと以下のいずれかを設ける必要があります。

    ・高さ15cm以上40cm以下の桟
    ・高さ15cm以上の幅木
    ・これらと同等以上の機能を有する設備
    ・手すりわく

    2-2.足場使用時の措置について


    足場を使用する際は、墜落防止のため「墜落制止用器具」を着用します。以前は「安全帯」と呼ばれていましたが、安全帯に含まれている胴ベルト型(U字つり)は墜落を制止する機能がないことから、改正後の現在ではハーネス型(一本つり)と胴ベルト型(一本つり)のみが「墜落制止用器具」として認められています。

    原則として、墜落制止用器具はフルハーネス型を使用することになりますが、いくつか選定要件もあります。例えば高さ2m以上の作業床が設置できない箇所や、作業床の端・開口部などで手すり等が用意できない箇所の作業の場合は、特別教育の受講が必要になります。

    また高さ6.75m以下で着用者が墜落時に地面に到達する可能性がある場合、「胴ベルト型(一本つり)」も使用できます。

    しかし高さ6.75m以下であっても、5m以上の建設作業、2m以上の柱上作業等の場合にはフルハーネス型の着用が推奨されます。


    2-3.足場材について


    足場となる材料については、労働安全衛生規則第559条で著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならないとされています。

    また鋼管足場に使用する鋼管は、「日本産業規格A8951(鋼管足場)に定める単管足場用鋼管の規格に適合するもの」でなければなりません。

    木材の足場材を使用することは認められています。ただし特別な理由がない限り、強度が明確で変形や腐食に強い鋼管の足場材を使用した方が良いでしょう。


    2-4.足場点検について


    足場の点検については、労働安全衛生規則第567条に定められています。吊り足場を除く足場作業を行うときは、作業前に「足場用墜落防止設備の取り外し」と「脱落の有無」の点検をしましょう。異常を認めたときは、直ちに補修しなければなりません。

    屋外に設置する足場は強風や大雨、大雪などの悪天候、台風や地震などの災害が発生した場合、入念に点検する必要があります。

    なお、点検を行った場合は必ず点検結果を記録に残し、足場を使用する作業が終了するまで保存しなければなりません。


    2-5.足場技能講習について


    足場の組立てや解体、変更の作業に労働者を就かせるときは、特別教育の受講が必要です。ただし地上、堅固な床上での補助作業の場合は、特別教育を受講する必要はありません。

    特別教育は6時間のカリキュラムで、「足場及び作業の方法に関する知識や工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識」などを学びます。

    また、つり足場や張出足場、高さ5m以上の足場の組立てや解体、変更の作業を行う場合は、「足場の組立て等作業主任者」の資格を取得する必要があります。ただしゴンドラを使用するつり足場作業の場合は、足場の組立て等作業主任者の資格を取得する必要はありません。

    講習会は各県で開催されています。開催情報は「建設業労働災害防止協会」のホームページから確認できます。


    3.足場利用の注意点


    建築現場では、足場を組み立てる職人と足場を利用する職人に分かれます。足場を利用する職人は、足場を組み立てた職人を信じて高所作業を行います。

    全ての人が安心して使用できる足場を組み立てることが求められるため、足場を組む前の計画が重要になります。

    計画の段階から事故のリスクが高い「つり足場」などは、組立てや解体の高所作業が少なくなる設計が求められます。

    また、足場は一度組んだら長期間利用されるため、作業前の点検を徹底することも忘れてはなりません。


    4.まとめ



     
    建設現場などでの足場組立のルールは、関連法令や省令で詳細に決められていますので、現場を管理する立場の人は一度確認しておきましょう。

    法改正情報など、一覧で検索できます。ルールを守り、全ての従業員が安心して作業ができる環境を整える必要があります。

    参考:
    安全衛生情報センター