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コラム

  • 積算時に出てくる平米、立米とは?計算式や変換方法を解説 New
    建設工事の積算時に出てくる平米と立米について、それぞれの計算式や変換方法を知りたい方もいると思います。
    建設工事における積算は余計な出費を抑えるために重要な業務であるため、使われる単位の定義をしっかりと理解しておくことが大切です。

    本記事を読みそれぞれの計算方法を理解することで、素早く計算ができるようになるだけでなく、
    業務を効率的に進めることができるようになるでしょう。


    ▼ 目次
     1.平米の定義と計算式
       2.立米の定義と計算式
       3.平米から立米に変換する方法
       4.立米から平米に変換する方法
       5.建設工事における積算
       6.積算時に重要な歩掛
       7.  工事費用の種類
         7-1.  直接工事費
         7-2.  間接工事費
         7-3.  その他の費用
        8.  会社運営でも根幹となる積算業務
       9.  まとめ


    1.平米の定義と計算式

     

    平米は「平方メートル」あるいは「m2」とも表記され、国際的に使用されている面積の単位です。

    1平米は「タテ1m×ヨコ1m」の広さを表しています。

    「平方」は数を2乗することであり、日本ではかつてメートルのことを「米」と表記していたことから、
    「平方(2乗)」した「米(メートル)」として平米と表記されるようになりました。

    日常生活ではあまり一般的な表記ではなくなっていますが、建築・不動産業界では土地面積・建築面積・延べ床面積(建物面積)・
    専有面積などの広さを表す場合に、平米という表記が今でも使い続けてられています。

    また平米と同じように面積を表す単位としては、ほかに「坪」や「畳」があり、住宅の広さを表す際に使用されることが多いです。

    坪とは、日本古来の計量法である尺貫法の面積単位です。
    明治以降に国際的なメートル法が普及してきたことで廃止となりましたが、不動産業界では現在でも使用されています。

    1坪は約1.82mの正方形で、「1.82×1.82=3.31(m2)」で約3.3平米となります。

    同じく不動産業界で用いられている単位が畳です。
    1畳は地域によって異なっており、関西より西側の本間で1.82平米、関東より東側の江戸間で1.52平米となっています。

    西日本で暮らしていた人が上京した際に、同じ畳数なのに部屋が狭く感じるのもこの違いのためだといわれています。
    畳数を平米で換算する場合は、「1畳=1.62平米以上」と規定されています。
     
     

    2.立米の定義と計算式



    立米とは、「立方メートル」あるいは「m3」とも表記され、平米と共に建築業界では一般的に使用されている体積の単位です。

    1立米は「タテ1m×ヨコ1m×高さ1m」の体積を表しています。

    建設や土木の工事現場でコンクリート数量や土量を算出する際に使用され、
    何立米なのかをしっかり計算することによって余計な出費を削減することができます。

    3.平米から立米に変換する方法



    前述したように、平米と立米は異なる単位であるため、それぞれの単位に変換する方法があります。

    平米と立米の違いは「高さ」があるかないかで、その高さを乗算、除算することで変換することができるのです。

    具体例として、ある平面の短辺・長辺の長さが2mと4mだったとしましょう。
    この平面の面積は8平米です。さらに、この平面の高さを2m、3mとするときの体積はいくつになるでしょうか。

    空間の体積(タテ×ヨコ×高さ)は「面積(タテ×ヨコ)×高さ」で計算できるため、
    それぞれ「8平米×2m=16立米」「8平米×3m=24立米」のように計算されます。

    4.立米から平米に変換する方法



    今度は立米から平米に変換する方法を紹介します。
    先ほどの平米から立米に変換する場合では算出した平米数に高さを乗算しましたが、立米を平米に変換する場合は反対に除算をします。

    具体例として、ある空間の体積を40立米とし、高さを4m、5mとするときの面積について考えてみましょう。

    面積(タテ×ヨコ)=体積(タテ×ヨコ×高さ)÷高さで計算できるため、それぞれ「40立米÷4m=10平米」「40立米÷5m=8平米」となります。

    5.建設工事における積算



    積算とは、工事を行う前に歩掛に基づいて各工程の費用を予測し、
    それらを積み上げて工事全体にかかる費用を算出することです。

    建設工事はそれぞれ条件が異なるため、必要な費用も工事ごとに異なります。
    「施工を行う箇所の環境」「施工内容」「必要な作業員の数」などのさまざまな要因によって費用が変化するほか、
    不測の事態に備えたロス率なども考慮する必要があります。

    原価が一定ではない状況で赤字を出さないようにするためには、工事全体でどれくらいの費用がかかるのか、
    正確な積算を行う必要があります。

    6.積算時に重要な歩掛



    歩掛(ぶがかり)とは、一つひとつの作業を行うにあたって必要な手間を数値化したもののことをいいます。

    歩掛は作業員一人が8時間で行える作業の量を示しています。
    歩掛に労務単価を掛けることによって、労務費の算出が行えるようになります。

    同じ作業だとしても、新人とベテランとでは作業のスピードが異なることや、
    作業に求める質によっても労務費は変わってくるため、注意が必要です。

    7.工事費用の種類


    先ほど述べた歩掛は労務費のうちの一つで、赤字工事を減らすためにはほかにも算出しなければならない費用がたくさんあります。

    7-1.直接工事費


    直接工事費には「材料費」「労務費」「直接経費」の3種類があります。
    歩掛で紹介した労務費以外に、仕入れ価格や使用する量によって変わる材料費、特許使用料や水道光熱費、機械経費などが直接経費に該当します。

    塗装工事においては、材料の塗布量を算出する際に、先ほど紹介した平米の計算を使用して材料を塗布した面積の計算を行います。
    塗布した面積に塗圧を掛けることで塗布量がわかり、材料費の把握ができるのです。

    7-2.間接工事費


    間接工事費には「共通仮設費」「現場管理費」の2種類があります。
    機材などの運搬費や工事をするためにかかる準備費を共通仮設費といい、
    現場作業員の衣類や事務用品、自動車や工事に関する保険にかかる費用などを現場管理費といいます。


    7-3.その他の費用


    併せて「純工事費」と呼ばれる直接工事費と間接工事費以外にも工事管理費や工事の一時中断に伴う費用も発生します。

    また、会社を営むうえでは事務所の家賃や光熱費、広告宣伝費など、一般管理業務に関わる費用も発生するため、
    工事のたびに多くの計算をする必要があります。

    8.会社運営でも根幹となる積算業務

     
    積算は、設計図や仕様書から一つひとつの作業や材料を洗い出し、それぞれの費用を計算する業務です。

    積算の精度によって会社の利益や工事担当者の苦労が左右されるため、
    責任の重い業務ですが、その分やりがいも感じられる仕事です。

    積算がどんぶり勘定になってしまうと赤字の工事になってしまったり、
    反対に不当に利益を取りすぎてしまったりなど、会社の信頼にも大きく影響します。

    適切な積算を行えていれば、お客さんにきちんとした理由を説明でき、信頼関係の構築にもつながります。


    9.まとめ



    今回は建設工事の積算時に出てくる平米と立米について、それぞれの計算式や変換方法、また積算で扱う費用についても解説しました。
    平米と立米は「高さ」を乗算・除算することでそれぞれの単位に変換可能です。この計算は積算時に多く使用するため重要だといえます。

    本記事を参考に平米・立米の計算方法を理解し、素早く適切な計算で効率的に業務を進め、建設現場にかかる無駄な出費を減らしていきましょう。
  • 無足場工法とは?使われる状況とメリット・デメリットを解説
    外壁の補修を検討しているけれど、隣の建物と距離が近いために足場が組めず、悩んでいる方もいると思います。
    そのような場合におすすめしたい足場工法の1つに無足場工法があります。

    今回は、無足場工法が使われる状況や、メリット・デメリットを解説します。
    本記事を読むことで、近隣への影響に配慮した無足場工法を選択肢に入れられるようになるでしょう。
     


    ▼ 目次
     1.無足場工法とは
          1-1.  ロープアクセス
         1-2.  ゴンドラ作業
        2.  無足場工法はどんな場合に使われる?
         2-1.  隣家との距離が近い
         2-2.  隣家の敷地を貸してもらえない
       3.  無足場工法のメリット
           3-1.  足場費用のコストダウンと工期の短縮につながる
           3-2.  防犯上の心配がない
          3-3.  近隣や店舗への影響を最小限に抑えた工事ができる
       4.  無足場工法のデメリット
            4-1.  作業範囲が限られる
           4-2.  施工後の確認ができない
           4-3.  無足場工法に対応できる業者が少ない
        5.  まとめ


    1.無足場工法とは

     

    建物の補修工事や修繕工事を行う際に、足場を組み立てずに施工する方法を「無足場工法」といいます。
    無足場工法では建物の屋上に吊元となる器具を設置し、ロープやゴンドラを吊り下げて、作業員が上下左右に移動しながら作業を行います。

    無足場工法は高所での時間がかかる作業のように思えますが、ベテランの作業員が行うことで、
    仮設足場が組めない場所でも工期の短縮が可能です。

    仮設足場を設置する場合、雨などで足場が濡れることにより、足場上で滑って災害が起きる危険性がありますが、
    無足場工法にはその心配はありません。主に2種類の方法があるため、それぞれ解説します。


    1-1.ロープアクセス


    屋上に設置した器具と作業員が装着したフルハーネスをロープでつなぎ、作業箇所に下降する方法をロープアクセスといいます。
    ロープに体を預けて宙吊り状態で高所作業を行うため、一見危険なように思えますが、比較的安全性は高いです。

    安全の理由は、厳格な基準をクリアした産業用のロープを使用しており、このロープを外さない限り落下する心配がないためです。
    ロープアクセスは、無足場工法の中では主流な施工方法です。


    1-2.ゴンドラ作業


    ケージと呼ばれる箱を屋上から吊り下げ、
    中に乗った作業員がリモコン操作で上下左右に移動して作業を行う方法をゴンドラ作業といいます。
    ゴンドラ作業は、都心部などの建物直下に歩行者が多いエリアや、
    仮設足場は組み立てられないけれどスペースには余裕のある場合などに採用されます。


    2.無足場工法はどんな場合に使われる?




    外壁塗装やタイル・コンクリートの補修などの作業では、一般的に仮設足場を設置します。
    約40cmの床材とそれを支えるための支柱が10cmのため、組み立て時のスペースも考慮すると、
    仮設足場の設置には隣の建物との間に70cm以上の距離が必要です。

    しかし、作業場所の立地や近隣の状況によっては仮設足場を設置するスペースを十分に確保できない場合もあります。
    ここでは具体的な状況を2つ紹介します。

     

    2-1.隣家との距離が近い


    建物が密集している住宅地などでは隣家との距離が十分ではなく、仮設足場の設置ができないと判断される場合があります。
    また、都心部で仮設足場の設置を行おうとすると、足場材を積んだトラックや足場材を置くスペースが確保できない可能性もあります。

    外観に関しても、特にテナントが入っているビルなどは、
    仮設足場を設置してしまうと看板や店舗の外装が隠れてしまい営業妨害になりかねません。
    こういった場合にも無足場工法を採用することが有効です。


    2-2.隣家の敷地を貸してもらえない


    隣家との距離が近く、依頼主の敷地だけでは仮設足場を設置できない場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を組むことがあります。
    しかし、隣家と面識がなかったり良好な関係が築けていなかったりすると、敷地の所有者から承諾を得られないことも考えられます。

    隣家からの理解を得られない場合は、トラブルにならないよう、無足場工法が選択されます。


    3.無足場工法のメリット

     
    足場を必要としない無足場工法には、「足場費用のコストダウンと工期の短縮」
    「防犯上の心配がない」「近隣や店舗への影響を少なく工事が可能」という3つのメリットがあります。

    1つずつ詳しく見ていきましょう。

    3-1.足場費用のコストダウンと工期の短縮につながる


    無足場工法では、足場の組み立てや解体の必要がないため、工事費用を大幅に抑えることができます。

    新築工事や補修や修繕の範囲が広い工事の場合は、足場を組み立てた方が効率的ですが、
    部分的な作業のために足場を組み立てると非効率的で余計なコストが掛かってしまいます。

    実際に、仮設足場に関する費用は、外壁補修や修繕を行う際の費用全体の約30%を占めます。

    無足場工法は仮設足場の費用の大幅な削減だけでなく、組み立てや解体にかかる時間も発生しないため、
    工期の短縮にもつながります。
    また、仮設足場の設置には事前に近隣の方に許可を得る必要や、関係各所に届出を出す必要があり手間がかかりますが、
    無足場工法ならそういった手間も省けます。

    3-2.防犯上の心配がない


    入居者がいるマンションの補修や修繕工事などで仮設足場を設置すると、部外者がベランダなどから侵入しやすくなるため、
    防犯上不安に思う方もいるでしょう。実際、設置された仮設足場からベランダに侵入され、盗難などの被害を受けたという事例も多くあります。

    一方の無足場工法は、侵入経路となる仮設足場を作らないため、防犯面で安心できます。
    また、仮設足場を設置する場合、メッシュシートなどで建物が覆われてしまいます。
    これに伴い日差しや風通し、外の景色が遮られてしまうため、入居者の生活に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

    無足場工法ならば入居者の住空間の快適性が損なわれる恐れがなく、普段通りの生活を送ってもらうことができます。


    3-3.近隣や店舗への影響を最小限に抑えた工事ができる


    隣家との距離が近い場所で足場作業をする場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を設置する必要があったり、
    仮設足場の組み立て・解体時に音が発生したりと近隣に影響を与えてしまいます。

    一方、無足場工法なら仮設足場の組み立て・解体時の音や職人が足場上を移動する音が発生しないため、
    近隣や店舗営業への影響を最小限に抑えることができます。

    また、仮設足場を設置する場合は隣の建物との間に60~70cmの間隔を必要としますが、
    無足場工法であれば40cmほどの間隔があれば作業できるため、隣の建物との距離が近い場合でも有効です。

    4.無足場工法のデメリット

     
    メリットの多い無足場工法ですが、「作業範囲が限られる」「施工後の確認ができない」
    「対応している業者が少ない」などのデメリットも存在します。
    それぞれ解説していくので、デメリットも理解したうえで、適切な施工方法を選定しましょう。


    4-1.作業範囲が限られる


    無足場工法では、屋上にロープやゴンドラを設置して作業するため、
    三角屋根の建物や一部が突き出している形状の建物には使用できません。

    また、仮設足場ならば作業員が上下左右に自由に移動して作業ができるのに対し、
    無足場工法では移動範囲が限定されてしまいます。
    補修や修繕などで広範囲に作業を行う場合は、仮設足場を設置する工法のほうが作業効率が良いといえます。

    4-2.施工後の確認ができない


    無足場工法では、施工場所に作業員しか立ち入ることができないため、依頼主は補修状況を目視で確認することができません。
    補修後の状況を実際に目で見て確認したい依頼主に対しても、写真で確認してもらうしかないのです。


    4-3.無足場工法に対応できる業者が少ない


    徐々に注目されてきている無足場工法ですが、通常の足場工法に比べて対応している業者が少ないのが現状です。
    コスト面を考慮して無足場工法を選定したくても、地域やタイミングによっては対応できる業者が見つからない場合もあります。

    5.まとめ




    今回は、無足場工法が使われる状況やメリット・デメリットを解説しました。
    近隣への影響が少なく、コスト面でも優れた無足場工法ですが、
    利用するには施工する建物の形状・作業範囲・業者選定などの制限があります。

    そのため、細かな条件を考慮したうえで、無足場工法の採用を検討することが重要です。
    本記事を参考に無足場工法が選択肢に入るかどうかを含め、近隣への影響に配慮した安全な工事現場を目指しましょう。
  • ロングスパン工事用エレベーターとは?建設用リフトとの違いや設置基準を解説
    工事現場ではロングスパン工事用エレベーターという言葉を耳にしますが、どんな役割や設置基準があるか知っていますか?
    ロングスパン工事用エレベーターの設置基準を知っておくことで、現場の作業性はもちろん、安全性も向上します。

    今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説します。
    本記事を読むことで、ロングスパン工事用エレベーターの設置ルールについて理解し、
    現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。


    ▼ 目次
     1.ロングスパン工事用エレベーターとは?
        2.  建設用リフトとの違い
       3.  ロングスパン工事用エレベーターが使用される現場は?
       4.  ロングスパン工事用エレベーターの設置基準
            4-1.  ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生
           4-2.  ロングスパン工事用エレベーターの搬器
           4-3.  ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重
           4-4.  ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔
           4-5.  ロングスパン工事用エレベーターの安全装置
        5.  まとめ


    1.ロングスパン工事用エレベーターとは?



    ロングスパン工事用エレベーターは、建築や土木の工事現場において人や資材を運搬するために使用されるエレベーターのことです
    。運転に資格や就業制限などはありません。ただし、エレベーターの設置には行政への届出が必要になります。
    また「運転方法の周知」として、エレベーターを使用する労働者に運転の方法及び故障した場合における処置を周知させる規定があります。

    エレベーターの構造や周囲の安全設備については、厚生労働省の「エレベーター構造規格」によって強度や規制が課されています。
    ロングスパン工事用エレベーターの規格は、昇降速度が10m/min以下で、積載荷重は1トン程度の製品が一般的です。

    また、ロングスパン工事用エレベーターは、エレベータ構造規格第16条においては、
    「工事用エレベータであって、搬器として三メートル以上の荷台を使用し、定格速度が毎秒〇・一七メートル以下のものをいう」と定義されています。


    2.建設用リフトとの違い


    建設や土木の工事現場において、ロングスパン工事用エレベーターが人と資材をともに運搬できるのに対して、
    建設用リフトは、資材を運搬することのみを目的とするエレベーターのことを指します。

    建設用リフトは、押しボタンスイッチの操作によって簡単に荷物の揚重を行うことができます。
    ただし、建設用リフトの運転業務に従事するには、建設用リフト運転特別教育を修了するか、それに準じた処置を受ける必要があります。
     

    3.ロングスパン工事用エレベーターが使用される現場は?

     
    ロングスパン工事用エレベーターは、市街地などでクレーンなどの大型重機が利用できない、
    または利用しにくい立地条件の作業場所で材料や人の揚重を効率的に行うために活躍します。

    また、建設中の各階で使用する材料をクレーンにて揚重する場合、足場に荷揚げ用の開口ステージを組み立てなければならず、
    開口部となるため安全面でも非常にリスクが高いといえます。

    そこで、ロングスパン工事用エレベーターを適切に設置することで、作業性と安全性の向上を期待できます。


    4.ロングスパン工事用エレベーターの設置基準



    便利なロングスパン工事用エレベーターですが、適切に設置されていないと非常に危険で、事故の原因となります。
    実際に工事現場でのロングスパン工事用エレベーターに関する事故事例も少なくありません。

    事故を避けるには、厚生労働省の「エレベーター構造規格」に定められた設置基準をしっかりと守ることが重要です。
    ここではそのルールについて解説します。


    4-1.ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生


    ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生については、エレベータ構造規格において、
    「出入口(非常口を含む。次号において同じ。)の部分及び人が近づく恐れのない部分を除き壁又は囲いが設けられていること」や
    「出入口に戸が設けられていること」、「前項第一号の壁又は囲い及び二号の出入口の戸は不燃材料で造り、又は覆ったものでなければならない」
    と定められています。

    ここで述べられている「人が近づく恐れのない部分」とは、搬器の昇降する通路の周辺であって、
    床面から1.8m以上の部分で、周囲に足場などのない部分をいいます。

    また、「壁又は囲い」とは、人体等を昇降路と遮断するものであり、手指等が入らない鉄鋼等を用いたものを指します。

    ロングスパン工事用エレベーターによる挟まれ、巻き込まれ事故はよくある事例のため、手指が入らないよう、
    しっかりと養生する必要があります。

    4-2.ロングスパン工事用エレベーターの搬器


    ロングスパン工事用エレベーターの搬器は、人が乗る部分と荷を積む部分から成ります。
    エレベータ構造規格第21条第2項にて、人が乗る部分(搭乗席)の周囲は高さ1.8m以上の囲いを設け、
    頭上には堅固なヘッドガードを取り付けるよう定められています。

    人はこの囲いとヘッドガードが取り付けられた場所にしか乗ってはいけません。
    また、荷物を積む部分には高さ90cm以上の手すりを取り付けます。


    4-3.ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重


    エレベータ構造規格第22条において、ロングスパン工事用エレベーターの搬器の積載荷重は、
    「搭乗席の床面積一平方メートルにつき二百六十として計算を行って得た値に搭乗席以外の部分の
    床面積一平方メートルにつき百として計算を行って得た値を加えた値」以上でなければならないと記されています。

    具体例として、人が乗る部分(搭乗席)の床面積が1m2であり、その他の部分(荷物を積む部分)の床面積が5m2だとします。
    この場合の積載荷重は、以下のようになります。

    搭乗席:1(m2)×260(kg)=260(kg)
    その他:5(m2)×100(kg)=500(kg)
    ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重:260(kg)+500(kg)=760(kg)

    積載荷重は、ロングスパン工事用エレベーターの各メーカーと機種によって異なる値が定められているため、
    しっかりと確認して搬器の見えやすいところに掲示しておき、使用する際にその値を超えないよう管理しなければなりません。



    4-4.ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔


    エレベータ構造規格第23条において、ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔について
    「昇降路の出入口の床先と搬器の出入口の床先との間隔は、四センチメートル以下でなければならない」、
    「昇降路壁と搬器の出入口の床先との間隔は、十二・五センチメートル以下でなければならない」と定められています。

    つまり、各階の昇降路の接する床面において、床先の間隔を出入口部では4cm以下、
    その他の部分では12.5cm以下となるようにロングスパン工事用エレベーターを設けなければなりません。

    設置の際は、数センチずれただけでロングスパン工事用エレベーターと昇降路の床が接触してしまう恐れがあるため、
    経験を積んだ鳶工により、建物の逃げ墨や下げ振りなどを使用して設置してもらうとよいでしょう。

    4-5.ロングスパン工事用エレベーターの安全装置


    エレベータ構造規格第32条において、ロングスパン工事用エレベーターには、以下の安全装置を備えなければならないと記されています。

    ・搬器の昇降を知らせるための警報装置
    ・搬器の傾きを容易に矯正できる装置
    ・搬器の傾きが十分の一のこう配を超えないうちに動力を自動的に遮断する装置
    ・遮断設備が設けられているものにあっては、遮断設備が閉じられていない場合には、搬器を昇降させることができない装置
    ・走行式のものにあっては、搬器を最下部に下げた状態でなければ走行させることができない装置

    ロングスパン工事用エレベーターの搬器が昇降する際には、近くにいる作業員が挟まれたり巻き込まれたりしないよう、
    必ず警報音が鳴るように設定しておく必要があります。

    また、昇降しているうちに左右に傾きが生じてしまうため、それを自動で矯正する装置を備えるとともに、
    勾配が10分の1を超える前に停止する装置を備える必要があります。

    これらの装置が正常に稼働しているかを日々点検し、異常がない場合でも専門業者に定期的に点検を依頼する必要があります。


    5.まとめ




    今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説しました。
    便利なロングスパン工事用エレベーターですが、安全のための設置基準を遵守することが、現場での事故を防ぐためには重要です。

    本記事を参考にロングスパン工事用エレベーターを適切に使用し、現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。
  • 仮設機材(足場材)の安全率とは?求め方や法的根拠を解説
    安全率とは何かを知っていますか?
    安全率は仮設機材(足場材)を安全に使用するうえで重要なものです。
    今回は仮設機材(足場材)の安全率とその求め方や、法的根拠についても解説します。

    本記事を読むことで、仮設機材(足場材)の安全率を理解することができ、
    仮設機材使用時の事故・災害を減らすことにつながるでしょう。


    ▼ 目次
     1.仮設機材(足場材)とは?
        2.  仮設機材の役割
         2-1.  安全の確保
         2-2.  効率的な作業環境を整える
         2-3.  施工性を向上させる
         2-4.  リスク管理
         2-5.  環境保護
       3.  仮設機材の種類
           3-1.  建築用仮設機材(足場用仮設機材)
           3-2.  土木用仮設機材(支保工用仮設機材)
           3-3.  その他の仮設機材
        4.  安全率とは?
        5.  仮設機材(足場材)の安全率の求め方
        6.  仮設機材(足場材)の安全率に関する法的根拠
        7.  まとめ


    1.仮設機材(足場材)とは?

     
    仮設機材とは、建設現場などで使用される製品、または資材のことをいいます。
    作業床として使用される足場材や材料の揚重(ようじゅう)に使用されるリフトやウインチなども仮設機材の一種です。

    仮設機材は、マンションや病院などの高層建築物から木造住宅などの低層建築物まで、施工時に幅広く使用されます。

    また、仮設機材は建築の現場のほかに、高速道路やトンネルなどといった土木分野でも使用されます。
    具体的には、建築の現場と同様に、作業員の足場としてやコンクリートを打ち込むための型枠などに使用されています。

    仮設機材は建設現場において、どの作業においても安全かつ効率的に進めるうえで、なくてはならないものです。
    仮設機材は、工事が進むにつれて撤去されたり、建設の過程で仕上げに見えないように埋め込まれたりするため、
    完成後に見えることはありません。

    そのため日常生活ではあまり馴染みのない仮設機材という言葉ですが、よく見かける工事現場を囲うフェンス、
    建物を覆っている足場やシートも仮設機材の一種であり、意外と身近で活躍しています。


    2.仮設機材の役割


    建設現場を支えている仮設機材ですが、具体的にはどのような役割があるのでしょうか。
    ここでは仮設機材の役割を5つ紹介します。

     

    2-1.安全の確保


    仮設機材は、建築や土木といった建設現場の安全を確保するために重要な役割を果たします。
    例えば、足場や仮設柵などの機材は、高所作業や危険なエリアでの作業の安全性を確保しているのです。


    2-2.効率的な作業環境を整える


    仮設機材は、作業員が作業を行うための環境を整備する役割もあります。

    例えば、建設現場内に仮設のトイレや詰所などを整備することで、作業員が快適に過ごすことができます。
    現場の環境を整えることで作業員の健康状態を保つことができるだけでなく、やる気にもつながるため、
    生産性を向上させる効果があります。


    2-3.施工性を向上させる


    仮設機材は、建設現場におけるさまざまな作業の施工性を向上させます。
    具体的には、作業員が作業床として使用する足場や、重いものを揚重するためのウインチやリフトなどがこれに該当します。

    特に建設現場で作業を進めるうえでは、使用する資材をいかに楽に作業場所へ持っていけるかが重要です。
    そこで仮設機材を活用し材料運搬の手間を減らすことで、工期の短縮や作業の効率化を図ることができます。
     

    2-4.リスク管理


    仮設機材は、作業中のリスクを管理するためにも重要な役割を担っています。
    例えば、危険な作業エリアを区画する安全フェンスや、作業場所が暗い場合に使用する仮設照明などの機材は、
    作業現場での事故や災害を防ぐのに役立ちます。

    建設現場では、進捗に応じてクレーンなどの重機を使用した危険作業が発生します。
    作業に応じてその都度バリケードやフェンス、三角コーンなどで危険個所を区画することで、
    重機との接触事故を極力起こさないようにしましょう。

    また、地下・ピットなどがある建物や夜間作業、天気の悪い日などは、暗所での作業も発生します。
    暗所では手元や足元が見えづらく、事故のリスクが高くなるため、照明の設置が必須となります。


    2-5.環境保護


    仮設機材は、建設現場における環境保護にも貢献します。
    例えば、現場から出る粉塵や水などを外へ飛散させないための仮設防護シートや騒音・
    振動を計測する仮設環境対策機器などは、周辺環境への影響を最小限に抑えるのに役立ちます。

    また、建設工事は近隣の方の理解があってこそ成り立つものであるため、
    近隣とのトラブルが発生すると工事がストップしてしまう可能性もあります。
    近隣への影響を最小限に抑えるためにも、これらの仮設機材を必ず設置するようにしましょう。

    3.仮設機材の種類

     
    建設現場で多くの役割を担っている仮設機材は、その種類もさまざまです。
    ここでは大きく分けて3種類解説します。


    3-1.建築用仮設機材(足場用仮設機材)


    建築用仮設機材とは、建設現場にて、作業のために設置される作業床や仮設構造物に使用される機材のことをいいます。
    具体的には、枠組足場やくさび緊結式足場、近年主流となっている次世代足場などが挙げられます。

    3-2.土木用仮設機材(支保工用仮設機材)


    高所作業に用いられる足場は建築と同様、土木現場でも使用されます。
    ここでいう土木用仮設機材とは、橋梁・道路・トンネルなど、重量の大きな構造物に対して使用される仮設機材のことを指します。

    建築工事で使用されるよりも大きなサイズの足場材や、山留工事に使われるH型鋼などがその一種です。


    3-3.その他の仮設機材


    その他の仮設機材として挙げられるのが、建設物の天井に対して作業を行うために使用される作業台や脚立、
    立ち入り禁止区画を示すためのバリケードやそれを警告する看板などです。
    また、作業員が身に付けて使用することで高所からの墜落を防ぐ墜落制止用器具なども仮設機材に含まれます。

    仮設機材はほかにもさまざまな種類がありますが、どれも現場の安全対策と作業の効率化を支えています。

    4.安全率とは?



    安全率とは、製品を安全に使用するための許容値のことをいいます。
    仮設機材などの製品は、使用するなかで外部から荷重や力が加わることで、内部に応力が発生します。
    どれだけの応力がかかったら製品が壊れるのかを想定し、基準を設定したものが安全率です。

    安全率は、設計時にさまざまな条件を考慮して設定します。
    しかし、実際に使用している製品に想定外の過剰な応力が発生する可能性もあるでしょう。
    このような想定外の応力によって壊れないために、安全率は大きいほどよいといえます。

    一方で、安全率を大きくするデメリットとしては、製品のコストが上がり、性能が下がる点が挙げられます。
    具体的には、足場材などの強度を上げるために材料として重い鋼材を使用すると、製造コストが上がるだけでなく、作業員の作業性が下がります。

    5.仮設機材(足場材)の安全率の求め方



    材料の許容応力【N/mm2】をσa、材料の基準強さ【N/mm2】をσbとすると、
    仮設機材の安全率(S)の計算方法は以下のとおりです。

    S=σb/σa

    許容応力とは、製品を設計した際の材料に発生する最大応力のことです。
    製品ごとに値が異なるため、それぞれ計算が必要です。

    6.仮設機材(足場材)の安全率に関する法的根拠



    仮設機材においては、安全率を2.0~2.5程度と定めることが一般的となっています。

    その法的根拠として、労働安全衛生規則第241条において、型わく支保工の許容応力の値について
    「鋼材の許容曲げ応力及び許容圧縮応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の
    四分の三の値のうちいずれか小さい値の三分の二の値以下とすること」とあります。

    材料の種類に対してそれぞれ許容応力を計算してみると、ほとんどが引張強さに対して、2.0~2.5程度の安全率となります。
    これに基づき、仮設機材は安全率を2.0~2.5程度と定めているのです。

       

    7.まとめ



    今回は仮設機材(足場材)の安全率とその求め方、法的根拠について解説しました。
    建設現場での事故や災害をなくすためには、仮設機材を使用するうえで適切な安全率を考慮することが重要です。
    本記事を参考に、仮設機材(足場材)の安全率を理解し、仮設機材使用時の無事故・無災害を目指しましょう。
  • 足場工事の根がらみとは?設置基準や設置方法も解説
    建設現場では「根がらみ」という言葉を耳にしますが、どういったものか知っていますか?
    根がらみは足場を組み立てるうえで重要な部材の1つであり、設置の基準が決まっています。
    そこで今回は根がらみの設置基準や設置方法について詳しく解説します。

    本記事を読んで根がらみについてよく理解し、安全性の高い足場を組み立てることで、
    足場における無災害を実現できます。


    ▼ 目次
     1.足場工事の根がらみとは
       2.  足場工事の根がらみを設置する基準
         2-1.  くさび緊結式足場をビル工事用に用いる場合
        3.  足場工事の根がらみの設置方法
       4.  まとめ


    1.足場工事の根がらみとは

     

    足場工事の根がらみとは、足場の支柱と支柱の脚部を連結する水平部材のことです。
    根がらみを設置することで、1本の支柱に水平力が集中することがなくなり、
    建地の横滑りなどによる倒壊や、不同沈下を防ぐことができます。

    根がらみは和風建築に由来しているといわれており、伝統的な日本家屋にも用いられています。
    日本家屋は、柱を玉石にのせるだけの基礎を採用していることや床下が高いことが特徴です。
    そのため、強度を維持するために脚部を木製の板で連結させていました。

    この木製の板の部材を「根がらみ」または「根がらみ貫」と読んでいました。
    それが転じて、足場工事でも同じ名前が用いられています。
     
     

    2.足場工事の根がらみを設置する基準



    厚生労働省が発表している「足場先行工法のガイドライン」には、「根がらみは、できる限り低い位置に設置すること」
    「根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強すること」と記されています。

    このように、足場の根がらみは脚部のできるだけ低い位置に連続して設けなければなりません。
    建物の出入り口といった開口部を設ける場合は、開口部の両端のスパンを筋かいなどで補強する必要があります。

    また、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立及び使用に関する技術基準」においては、
    足場の脚部ついて「足場を組立てる地盤は、堅固な場所とする」「ねじ管式ジャッキ型ベース金
    具の下には、地盤の状況に応じて敷板(しきいた)又は敷盤(しきばん)を使用する」「敷板を使用する場合は、
    ねじ管式ジャッキ型ベース金具を2本以上の釘等により敷板に固定し、敷盤を使用する場合は、
    ねじ管式ジャッキベース金具を敷盤の使用方法に従い固定する」と表記されています。

    さらに、「桁行方向、梁間方向それぞれに根がらみを設置する。
    ただし、ねじ管式ジャッキベース型金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、
    桁行方向の根がらみを省略できる」という基準を示しています。

    梁間方向とは建物に対して垂直方向のことをいい、桁行方向とは建物と平行する方向のことをいいます。
    上記のようにねじ管式ジャッキベース型金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、
    桁行方向の根がらみを省略してもよい基準が設けられています。

    しかし、足場の下を作業通路として利用する以外はあまりメリットがないので、
    安全性を考慮して、梁間方向・桁行方向ともに全数設置することをおすすめします。

    また、中央労働災害防止協定の「労働安全衛生規則」第570条においては、
    「足場(脚輪を取り付けた移動式足場を除く。)の脚部には、足場の滑動又は沈下を防止するため、
    ベース金具を用い、かつ、敷板、敷角等を用い、根がらみを設ける等の措置を講ずること」と規定されています。

    この通り、根がらみ以外にも足場の滑動及び沈下防止のための対策が必要です。
    具体的には、足場を組む前に支柱の足元に敷板を並べ、
    支柱を受けるベース金具の四隅の穴に釘止めをして滑動を防止する方法があります。


    2-1.くさび緊結式足場をビル工事用に用いる場合


    仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立及び使用に関する技術基準」では、
    高さ45m以下で使用する本足場を「ビル工事用くさび緊結式足場」、軒の高さが10m未満の木造家屋等低層住宅の建築、
    補修及び解体工事に使用される足場を「住宅工事用くさび緊結式足場」と定義しています。

    根がらみに関しては、くさび緊結式足場をビル工事用に用いる場合と住宅工事用で用いる場合で、技術基準は同じです。

    すでに説明した通り、「桁行方向、梁間方向それぞれに根がらみを設置する。
    ただし、ねじ管式ジャッキベース型金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、桁行方向の根がらみを省略できる」
    「根がらみは、できる限り地面から近い位置に設置し、各緊結部付支柱に緊結する」などの基準が定められています。

    3.足場工事の根がらみの設置方法

     
    根がらみの設置方法は鳶工によってさまざまですが、以下の内容が一般的な手順です。

    1.後踏み側の支柱最下端にある緊結部に根がらみ用布材を打ち込んで相互に連結する
    2.前踏みの支柱を順次、外柱に根がらみ用布材でつないでいく

    根がらみは、くさび打ち込み用のハンマーを用いて、支柱の緊結部に打ち込んで設置します。
    また水平器やメジャー(スケール)などを用いて、建物との距離や根がらみが水平に設置されているかなどを確認する必要があります。

    建物との距離を間違って設置すると、せっかく積み上げた足場が外壁の仕上げに干渉してしまいます。
    また、根がらみが水平ではないと、足場がゆがんだまま積み上がるため、後ほど足場を組み直さなければならなくなります。

    根がらみの設置作業は安全性を考慮して、支柱を支える役と根がらみを設置する役の最低2名以上で行いましょう。
    加えて、正しい位置に水平に組むことができる鳶工に任せることをおすすめします。


    4.まとめ



    今回は足場工事の根がらみについて解説しました。根がらみは設置基準を守り、正しい方法で設置することが重要です。
    本記事を参考に足場に適切な根がらみを設置することで足場の安全性を高めるとともに、
    足場の組み直しなどの無駄な作業の手間やコストをなくしていきましょう。
     
  • 足場ブラケットの特徴や用途を解説!4種類の足場ブラケットも紹介
    外壁の形状が複雑な場合、建物の足元から組まれる足場に足場ブラケットを追加する必要があります。
    足場ブラケットにはいくつかの種類があり、それぞれを使い分けることで、作業性や安全性が向上します。

    本記事を読むことで、適切な足場ブラケットを検討できるようになります。
    現場での安全性を向上させるとともに、足場の組み替えなどに掛かる費用を抑えましょう。


    ▼ 目次
     1.足場ブラケットとは
        2.  足場ブラケットの特徴と用途
         2-1.  外壁の仕上げが複雑な形状
         2-2.  仕上げのための下地作業
         2-3.  建物と足場との乗り入れ
         2-4.  材料取り込み用のステージ
         2-5.  狭小地での一側足場
       3.  足場ブラケットの種類
           3-1.  固定ブラケット
           3-2.  伸縮ブラケット
           3-3.  張り出しブラケット
           3-4.  ネットブラケット
        4.  まとめ


    1.足場ブラケットとは

     
    足場ブラケットとは、足場の支柱から張り出した作業床を設置するために使用される部材です。
    ブラケットは、垂直荷重を負担するために三角形をしており、「持送り」と呼ばれることもあります。

    ブラケットを隣り合う支柱に平行に設置し、アンチと呼ばれる床材でつなぐことで、
    作業床として使うことができます。


    2.足場ブラケットの特徴と用途


    足場ブラケットは、アルミニウムなどの材質が一般的で、安全性と耐久性に優れているのが特徴です。
    最近は軽量なものが多いため、以前と比べ持ち運びや組み立てが容易になりました。

    ブラケットを使用するメリットとしては、外壁仕上げ前の作業に使用する足場を建物の足元から組み上げる必要がなく、
    外壁の仕上げを考慮した位置に設置すればよいため、簡易的で作業効率が良い点が挙げられます。
    また、用途としては以下の場合に使用されます。

     

    2-1.外壁の仕上げが複雑な形状


    外壁の仕上げが複雑な形状の場合、建物の足元から足場を組み上げると、
    外壁の仕上げに足場が干渉してしまったり、足場を組み上げる手間が掛かったりする場合があります。

    具体的には、外壁の仕上げ面に対して、建物の出入り口などにある庇(ひさし)が飛び出している場合などが考えられます。
    仕上げ物である庇は足場の支柱の荷重を負担できないため、ブラケットで持ち出すことが効果的です。

    このように、建物の形状に合わせて足場ブラケットを追加することで、効率的に作業を進めることができ、
    余計な作業に掛かるコストを抑えることができます。


    2-2.仕上げのための下地作業


    外壁の仕上げに必要な下地取付作業は、作業員が手を届かせたい対象と、
    外壁の仕上げを考慮して設置した足場との間に、少し距離がある場合が多いです。

    建物内部に「立馬」と呼ばれる可搬式作業台や高所作業車を設置できない場合には、
    足場からブラケットを張り出して作業床を設置する必要があります。

    また、下地の作業が終わったあとも、ブラケット足場なら簡単に解体することができるため、
    スムーズに仕上げ作業に移ることができます。


    2-3.建物と足場との乗り入れ


    外壁が仕上がるまでの間、建物と足場との渡り通路を設置することで、
    作業員の移動の手間が減り、作業の効率がアップします。

    建物の躯体と足場との間には外壁の仕上げ材が設置されるため、一般的に500mm程の距離が取られています。
    そのため、足場からブラケットを建物側に張り出すことで、作業員の作業通路として使用することができます。

    2-4.材料取り込み用のステージ


    建物の建設中は、さまざまな材料を建物内部に取り込む必要があります。
    高さのある建物に対しては、足場の外側に張り出しブラケットを使用してステージを組み、
    クレーンを使用して材料を取り込むことが、効率の良い材料の取り込み方法の1つです。

    この場合、墜落の危険がある開口部となるため、決められた積載荷重を守ることや
    墜落防止措置を設置することが重要です。


    2-5.狭小地での一側足場


    隣の敷地との距離が近接しており、一般的な二側足場を組み立てられない場合は、
    一側のブラケット足場を組むことがあります。

    ブラケットによる一側足場は簡易的で作業性が良い反面、二側足場よりも安全性が劣るため、
    足場の控えや壁つなぎを多くしたり、墜落防止用の親綱を設置したりするなどの対策が必要です。

    3.足場ブラケットの種類

     
    足場ブラケットには、さまざまな種類があります。
    用途によって使い分けることで、作業効率がアップし、コストも抑えられます。
    それぞれの特徴を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。


    3-1.固定ブラケット




    固定ブラケットとは、ブラケットの水平材の長さが一定であり、調整できないものを指します。
    水平材の長さは複数あり、外壁の仕上げとの距離に合わせて使い分けます。
    固定ブラケットには、支柱をクランプでつかむタイプと、くさび足場や次世代足場専用のくさび打ち込みタイプの2種類があります。

    クランプ式は、支柱のどこでもつかむことができるため、高さを自在に調整することができます。
    一方で、くさび打ち込みタイプは、足場の支柱に設けられているくさび受けにくさびを打ち込むため、
    ブラケットを設置する高さが限定されます。どちらも軽量な足場材で、重量をしっかりと支えられ、安定性があります。

    中央ビルト工業には、くさびブラケット(固定ブラケット)として、300mm、400mm、600mmの3種類の長さの製品があります。

    3-2.伸縮ブラケット




    伸縮ブラケットは、水平材の長さを100〜200mm程度、自在に調整できるブラケットを指します。
    ブラケット先端の差し込み菅が自在に伸縮し、抜け防止もされているので、安全に使用することができます。

    複雑な形状の外壁に対して幅広く使用できるため、一般的に固定ブラケットよりもリース代が高いです。

    中央ビルト工業の製品にも持送りわく(伸縮ブラケット)があり、
    調整範囲は300~500mm、500~750mm、750~1000mmの3種類です。


    3-3.張り出しブラケット


    張り出しブラケットは、足場の中段から作業床を拡張する際や、
    材料の取り込みステージの作業床受けとして使用されます。
    水平材の先端に支柱材の受けがあり、そこに支柱を差し込むことで作業床を拡張することができます。

    ステージとして使用する際は、作業床の積載荷重表示や開口部の墜落防止措置を必ず行う必要があり、
    張り出しブラケットの先端に支柱を差し込んで墜落防止の手摺として使用します。

    中央ビルト工業には、ジョイントブラケットとして、300mm、400mm、600mmの3種類の長さの製品があります。


    3-4.ネットブラケット


    ネットブラケットとは、建物躯体と足場との間に落下防止用のネットを設置するために設けるブラケットを指します。
    ネットブラケットと合わせてネットを設けることで、躯体と足場の間からものが落ちた場合でも、層間ネットに引っ掛かります。

    そのため、直下にいる作業員を落下物から守る重要な役割を担っています。
    ネットブラケットは、外壁の仕上げ作業に支障がある場合は、一時的に折りたたむことができます。
    作業終了後元に戻すだけでよいため、安全設備を簡単に再設置することができるメリットがあります。

       

    4.まとめ





    今回は、足場ブラケットの用途や種類、それぞれの特徴を解説してきました。
    適切なブラケットを選ぶことで、現場の作業員の作業性や安全性の向上につながるとともに、
    コストも削減することができます。

    本記事を参考に、適切な足場ブラケットを選定することで、足場に掛かる費用を抑え、
    効率よく、安全な現場を実現しましょう。
  • 足場の番線とは?締め方とポイントも解説
    建設現場にて足場材の固定などによく使われる番線ですが、
    固定する際の正しい締め方やポイントを知りたい方もいるでしょう。
    番線による足場板などの固定は、高所の足場上で作業する人の命を預かる重要な役割を担っています。

    本記事では、足場の番線の締め方を詳しく解説します。
    番線の適切な締め方を知ることで、安全な足場を設置し、建設現場における事故を防ぎましょう。


    ▼ 目次
     1.足場の番線とは
        2.  足場の番線の太さ
         2-1.  10番線
         2-2.  12番線
         2-3.  21番線(結束線)
       3.  足場の番線の締め方
           3-1.  2本締め
           3-2.  1本締め
       4.  足場の番線を縛る時のポイント
            4-1.  締めつけ過ぎない
           4-2.  足場材の角で絞る
           4-3.  番線同士の交点を輪のある先端に近づける(2本締めの場合)
           4-4.  締めた番線の余った先端は切って処理する
        5.  まとめ


    1.足場の番線とは

     
    番線とは、建設現場で足場などの結束に使用される鉄線のことをいいます。
    番号によって太さが異なることから番線と呼ばれます。
    番線は、焼きなましと呼ばれる方法によって熱処理されており、
    手で簡単に曲げられるほど柔らかいという特徴があります。

    番線は針金に似ていますが、針金よりも加工がしやすいため、
    足場材の緊結や梱包など作業の用途に合わせて幅広く使用されています。
    一方でサビやすい特徴があるため、仕上げ材などの固定には使用されません。
    番線は、太いものほど数字が小さいです。

    必要な強度や加工のしやすさなど、用途によって番線を使い分けることで作業効率をアップさせることができます。
    一般的な足場の作業においては、12番線が多く使用されています。
    通常はメートル単位で円形に束ねられて売られていますが、結束用に切断された状態で販売されているものもあります。

    番線を使用して足場材などを結束する際には「シノ」と呼ばれる工具を使用します。
    コツさえ覚えれば誰でも簡単に結束することができます。


    2.足場の番線の太さ




    建設現場で主に使用される番線は10番、12番、21番です。
    番線の強度や扱いやすさによって用途を使い分けることで作業効率が上がります。
    それぞれの特徴と主な用途を見ていきましょう。

     

    2-1.10番線


    型枠などの結束には、直径約3.2mmの10番線が使われます。
    生コンクリートの型としての役割を担っている型枠には、コンクリート打設時に大きな圧力がかかります。
    そのため、型枠の結束や押し引きに耐えられるよう、一般的12番線よりも少し太い10番線が多く利用されます。


    2-2.12番線


    建設現場で最も多く使われるのが、直径約2.6mmの12番線です。
    10番線より細いため、扱いやすく、一般的な足場材の緊結や荷崩れ防止のための結束に使用されます。


    2-3.21番線(結束線)


    21番線は結束線と呼ばれることが多く、足場の設置には基本的に使われることはありませんが、
    鉄筋の結束などに使用されます。
    直径約0.8mmの針金ほどの細さで、容易に扱えることから鉄筋の配筋作業においてはなくてはならない存在です。

    「ハッカー」と呼ばれる工具を結束線の輪に通して、手首をスナップすることで、鉄筋を縛ることができます。


    3.足場の番線の締め方

     
    足場の番線の締め方は、主に2種類あります。
    番線を絞めつけるために必要な工具は、番線を切るための「番線カッター」と、
    番線を締めつけるための「シノ」だけです。

    番線の締めつけ作業は、足場で作業する作業員の安全を守るための重要な作業の1つです。
    適切な締め方を解説するので、ぜひチェックして現場での事故をなくしましょう。

    3-1.2本締め




    建設現場の足場作業において最も多く使用される番線の締め方が、2本締めです。
    2本締めは、番線を番線カッターで縛りたい材料の幅に合わせてカットし、画像のように半分に折り曲げた部分に輪をつくります。

    この状態で、縛りたい資材同士の周囲に、ぐらつきがないよう最短距離で番線を巻きつけます。
    番線を巻きつけたら、交差させてできるだけ締め付けます。
    締め付けた番線同士を時計回り(左利きの場合は反時計回り)に軽くねじります。

    軽くねじったら輪の中にシノを2cm程差し込み、
    輪になっていない側の番線を巻き込みながら時計回り(左利きの場合は反時計回り)にさらにねじります。
    この際に、輪になっていない番線の先端を左手で固定しながらシノを回すのがポイントです。
    輪を2回転ほどねじると堅固に締めることができます。

    3-2.1本締め


    足場材を2本締めで縛りづらい場合や簡易的に縛りたい場合には、1本締めを使用します。
    1本締めでは、番線を半分に折り曲げずに使用します。
    2本締めの場合と同様に、番線を巻きつけ、交差させて締め上げます。
    交差した番線同士を時計回り(左利きの場合は反時計回り)に軽くねじります。

    ねじった交点にシノを近づけて、ねじり合わさっている番線をシノに巻きつけて輪をつくります。
    左手で番線の先端を固定しながら、右手のシノを時計回り(左利きの場合は逆)に回します。
    輪を2回転ほどねじると堅固に締めることができます。

    4.足場の番線を縛る時のポイント

     
    先述した足場の番線の縛り方には、堅固に締めるための方法や、
    その足場を安全に利用できるようにするためのポイントが4つあります。
    それぞれ解説するので、一緒に見ていきましょう。


    4-1.締めつけ過ぎない


    番線は引張方向の力には強いですが、ねじれには弱いため、締めつけすぎると破断してしまいます。
    そのため、締めつける際は、番線と足場材とのすき間がなくなってから半回転する程度がベストです。

    万が一、破断してしまった場合は、その番線は弱っているため、再利用せずに新しい番線を使用しましょう。

    4-2.足場材の角で絞る


    番線を交差させる交点は足場材の角にすると締め付けやすいです。
    角を利用すると番線と足場材のすき間を減らすことができ、シノを回す回数も少なくて済むため、作業効率が上がります。

    足場材の中央に番線の交点をつくると、足場を利用する作業員がその交点につまずいて転倒したり、
    転倒した勢いで足場から転落したりする恐れがあります。
    これらの理由からも、番線の交点は、角に設けるのがベストです。


    4-3.番線同士の交点を輪のある先端に近づける(2本締めの場合)


    2本締めの場合、足場材に巻きつけた番線同士の交点を、
    輪をつくったあとに2本の番線を交差させた部分に近づけると締め付けやすいです。

    交点を交差部分から遠ざけると足場材と番線との間にすき間が増え、
    番線を回す回数が増えてしまうため、あらかじめ近づけておくのがポイントです。



    4-4.締めた番線の余った先端は切って処理する


    番線を締めたあとに余った先端は短く切って処理しておくことをおすすめします。
    長いまま処理せずにおくと、足場を利用する作業員が番線に引っ掛かり、転倒や足場から転落する恐れがあるためです。

     

    5.まとめ




    今回は足場の番線の締め方について詳しく解説しました。
    足場を組む際に番線を適切に使用することは、足場上での事故を減らすための重要な要素の1つです。
    本記事で説明した番線の適切な締め方と処理方法を参考にすることで、現場での足場を原因とする事故をなくしましょう。
  • 仮設機材に使われる「メッキ」とは?ドブメッキとプレメッキの違いや特徴を解説
    鋼材の表面処理方法の1つにメッキがあります。
    メッキとはどのような処理方法で、どんな効果があるのか気になる方もいるでしょう。
    メッキの効果を知れば、建設資材の材質の検討やコストの削減ができます。

    今回はドブメッキとプレメッキの違いや、それぞれの特徴について解説します。
    本記事でメッキについて知ることで、耐食性やコストを考慮した建設資材の選定が可能になります。


    ▼ 目次
     1.メッキとは何か
       2.  ドブメッキ(溶融亜鉛メッキ)とは
         2-1.  ドブメッキの特徴
           2-2.  ドブメッキの作用
        3.  プレメッキ(高耐食めっき鋼板)とは
         3-1.  プレメッキの特徴と作用
       4.  仮設機材にはどちらが使用されている?
       5.  まとめ


    1.メッキとは何か

     
    メッキとは、金属や非金属の表面に薄い金属の膜を張る加工技術を総称する言葉です。
    メッキと同じく、よく知られた処理方法に塗装があります。
    塗装は塗料を塗膜する表面処理方法であるのに対して、メッキは素材の表面に金属の皮膜を生成する処理を行います。

    メッキは製品に金属特有の光沢を与え、見た目を美しく仕上げます。
    また生成された皮膜によって、劣化やサビ、摩擦の予防効果も期待できます。メッキの由来は、「滅金(めっきん)」にあるといわれています。

    「滅金」とは水銀に金を浸す作業で、水銀で覆われて金がなくなったように見えるため、このように呼ばれていました。
    その後次第に「鍍金(めっき)」と呼ばれるように変化し、現在ではJISで定められた正式な表記は「めっき」となっています。
     
     

    2.ドブメッキ(溶融亜鉛メッキ)とは



    ドブメッキとは表面処理方法の1つで、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸し、表面の亜鉛被膜を形成する方法のことです。
    メッキ槽に鋼材を浸ける様子から「ドブメッキ」のほかに「テンプラメッキ」とも呼ばれています。


    2-1.ドブメッキの特徴


    ドブメッキは、橋梁やプールのドーム、ガードレールなど、さまざまな用途に使用されています。
    そんなドブメッキには以下のメリットがあります。

    ■防錆効果が高い
    ドブメッキの特徴の1つに防錆効果の高さがあります。
    メッキ処理時の電気化学作用によって緻密な保護被膜を形成することで、素材を長期間腐食から守ることができます。
    また、亜鉛皮膜、酸化亜鉛被膜には長期間の耐食性があるだけでなく、犠牲防食作用によって、ピンホールや傷を防食してくれます。

    耐候性は、メッキの厚さに比例して高くなります。
    また、溶融亜鉛メッキ処理された鋼材はコンクリートの中でも防食性を発揮します。
    カルシウムを多く含んでいる打設直後のコンクリートは、強アルカリ環境です。

    溶融亜鉛メッキの表面は強アルカリによって溶解しますが、カルシウムと反応した溶融亜鉛メッキ表面には保護性皮膜が生成されます。
    この保護皮膜のおかげで、アルカリ環境でもほとんど溶解しなくなり、下地の亜鉛被膜を保護します。

    ■コストパフォーマンスが高い
    ドブメッキには、コストに対して高い耐食性が得られるという特徴もあります。
    また、大気中・土壌中・海水中でも、追加の保守工事なしで優れた防食効果が継続するため、ほかの防食方法と比べて経済的です。

    ■密着性が高い
    密着性の高さもドブメッキの特徴です。
    溶融亜鉛メッキ皮膜は、鋼材と亜鉛との合金反応によって密着しているため、塗装と比較すると密着性に優れており、
    衝撃や摩擦によって剥がれることが少ないです。そのため、長期間にわたって素材を保護することができます。

    ■処理にムラがない
    ドブメッキは、溶融亜鉛メッキ槽に鋼材を浸す工法のため、細部に手が届かないような複雑な形状の鋼材にも、
    十分な厚さの均一なメッキ皮膜を作ることができます。そのため、ムラがない美しい仕上がりになります。


    2-2.ドブメッキの作用


    ドブメッキには「保護皮膜作用」や「犠牲防食作用」、「合金層」と呼ばれる作用があります。
    それぞれを詳しく紹介します。

    ■保護皮膜作用
    ドブメッキの作用の1つに「保護皮膜作用」があります。
    「保護皮膜作用」とは、素材と亜鉛の合金が作られることで、
    亜鉛メッキの表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜が形成されることをいいます。

    この酸化皮膜は密着性が強く、剥がれ落ちることがありません。
    そのため、溶融亜鉛メッキ処理されたものは、ただの鉄素材と比較して腐食速度が遅くなります。

    ■犠牲防食作用
    亜鉛メッキ表面に薄い酸化亜鉛の皮膜が張られることで、よりサビに強くなります。
    万が一、傷によって素地が露出しても、傷周辺の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気化学的に素地を腐食から保護します。
    これを「犠牲防食作用」といい、サビが広がることを防ぐ効果があります。

    ■合金層
    ドブメッキの大きな特徴の1つとしては、「合金層」も挙げられます。「合金層」とは、2つの異なる金属同士の間に発生する層のことです。
    この化学反応によって亜鉛と鉄が強力に結合するため、メッキが剥離しにくくなります。よく比較される塗装に対し、剥がれにくさの面では、溶融亜鉛メッキのほうが優れています。

    3.プレメッキ(高耐食めっき鋼板)とは

     
    プレメッキ(高耐食めっき鋼板)は、ドブメッキよりも優れた耐食性と耐久性を兼ね備えた鋼板です。
    通常の鋼板にアルミニウム、マグネシウム、亜鉛を主成分とする特殊なメッキ層を皮膜させることで、
    屋外環境や水気の多い劣悪な環境でも長期間耐食性を保持できます。

    プレメッキはドブメッキと比べても10倍以上の耐食性があります。
    代表的なプレメッキの製品としてZAM鋼板やエコガル、スーパーダイマなどがあります。

    3-1.プレメッキの特徴と作用


    プレメッキはドブメッキよりも優れた耐食性を持ち、そのほかにも以下のような特徴があります。

    ■ドブメッキよりコストパフォーマンスが高い
    プレメッキはドブメッキと同じ作用を持つだけでなく、ドブメッキに比べて高い耐食性があります。
    通常の鋼板に必要なメッキ処理が不要で、製造にかかる時間やコストを削減できます。

    ■仕上がりがきれい
    プレメッキは、ドブ漬け処理する際にできるダレや溜まりがないため、表面がきれいに仕上がるという特徴があります。
    耐候性が必要で、化粧としてステンレスを使いたいけれどコストオーバーしてしまう場合や、
    スチールにメッキ処理では見た目が気になる場合にはプレメッキの使用が適しています。

    ■導電性に優れている
    電気の流れやすさ(導電性)は金属の種類によって異なります。
    プレメッキに含まれるアルミニウムは導電性に優れており、静電気を逃がしやすい特徴があります。
    電子機器などは静電気によって誤作動を起こすことがあるため、プレメッキは電子機器類と相性が良いといえるでしょう。

    ■アルカリに高い耐性がある
    プレメッキは表面に亜鉛系保護皮膜が形成されており、成分としてマグネシウムやアルミニウムを含んでいます。
    この保護皮膜はアルカリに対して耐性が高く、コンクリートなどのアルカリ成分の浸食を強力に防ぎます。

    4.仮設機材にはどちらが使用されている?



    仮設機材としては、現状はドブメッキのほうが多く使用されています。
    しかし、ZAMやエコガルなどドブメッキよりも耐食性に優れたプレメッキ製品もあります。
    プレメッキの方が仮設機材が長持ちし、安全性も高いです。

    中央ビルト工業の仮設機材も基本はドブメッキを使用していますが、
    幅木やスカイフェンスには高耐食鋼板を使用しています。

    【幅木】
    ・各社くさび緊結式足場(次世代足場)用(φ42.7、48.6兼用)
    ・枠組足場用
    ・折り畳み式(φ42.7、48.6兼用)
    ・アルミスカイガード専用幅木
    ・妻側幅木

    【スカイフェンス(養生枠)】

    ・枠組足場用
    高さ850mm:幅596mm、896mm、1196mm、1496mm、1796mmの5種類
    高さ862mm:幅606mm、910mm、1215mm、1520mm、1824mmの5種類

    ・くさび緊結式足場用
    高さ900mm:幅591mm、891mm、1191mm、1491mm、1791mmの5種類
    高さ900mm:幅601mm、905mm、1210mm、1515mm、1820mmの5種類
    高さ950mm:幅601mm、905mm、1210mm、1515mm、1820mmの5種類


    5.まとめ



    今回はドブメッキとプレメッキの違いやそれぞれの特徴について解説しました。
    鋼材の使用用途や使用される環境によってメッキ処理方法を使い分けることで、安全性の向上やコスト削減につながります。
    本記事を参考に適切なメッキ処理を選定することで、低コストかつ安全性の高い現場を実現しましょう。



  • 足場の耐用年数は?安全性確保のために知っておくべきこと
    建設現場で事故を起こさないためには、安全性の高い足場が必要であるため、
    足場の耐用年数について気になる現場責任者の方も多いでしょう。

    足場の耐用年数を知っておくことで、足場の劣化による事故や災害を未然に防ぐことができます。

    そこで今回は、足場の耐用年数と安全性確保のために必要な知識について紹介します。


    ▼ 目次
     1.足場の耐用年数は決まっている?
        2.  足場板の種類
         2-1.  金属製足場板
         2-2.  木製足場板
       3.  使用できない足場の特徴とは
           3-1.  材料
           3-2.  作業床
         3-3.  足場の組立て等作業主任者
           3-4.  点検
       4.  足場材は必ず認定品を使用する
        5.  まとめ


    1.足場の耐用年数は決まっている?

     
    実は、足場の耐用年数を定めた規定は存在しません。
    とはいえ、いつまでも使い続けて良いわけではないのです。
    組み立てられた足場は、現場によって異なるため足場材1本ごとに不良がないかを点検して、
    安全性を確保する必要があります。

    また国税庁が定める法定耐用年数の表 
    https://www.town.yubetsu.lg.jp/common/img/content/content_20201208_165220.pdf

    によると、足場材は工具の分類の「金属製柱及びカッペ」に該当するため、耐用年数は3年とされています。
    ただし、これはあくまでも目安であるため、足場材に異常がないか日々点検することが重要です。

    労働安全衛生規則において「事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはいけない」と定められています。
    足場材の点検方法は、厚生労働省の「経年仮設機材の管理指針」 にて示されています。

    https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h10-0.htm

    基本的には目視にて材料に著しい変形、損傷、さび等がないかを判断します。
    このように定められた指針に沿って点検することで、足場の安全性を確保します。


    2.足場板の種類

     

    足場板は直接荷重を受ける作業床として使用されます。
    足場板は大きく分けて金属製足場板と木製足場板の2種類あり、それぞれ強度や重量が異なります。

    足場の用途や作業性を考慮して、使い分けることで安全性の向上やコスト削減につながるため、
    ぜひチェックしてみてください。

     

    2-1.金属製足場板


    ここでは近年使用する現場が多い金属製足場板の中でも、スチール製足場板とアルミ製足場板の2種類を紹介します。

    ■スチール製足場板
    スチール製足場板は、木製の合板足場板よりもたわみは半分に劣りますが、重量は30%軽いです。
    そのため取り扱い易く、作業性に優れているため、労務コストを削減することができます。

    また、アルミ製足場板と比較するとやや重いですが、強度が高いため、たわみも少ないです。

    ■アルミ製足場板
    アルミ製足場板は、経年劣化による耐久性に優れ、安全性が高いです。
    重量も合板足場板の約半分で、作業性も良いため、近年多くの現場で使用されています。
    また、スチール足場板と比較すると軽いため、労務コストを削減することができます。


    2-2.木製足場板


    木製足場板には、合板足場板と杉足場板の2種類があります。ここではそれぞれの異なる特徴を紹介します。

    ■合板足場板
    合板足場板は、薄板を接着剤で木目に対して直交させて張り合わせており、伸縮しにくいのが特徴です。
    一般的には防腐剤が塗布されており、防腐効果があるため、長く使用することができます。

    滑りにくい加工で安全性が高く、軽量で扱いやすいため、良く使用される足場板です。

    ■杉足場板
    杉足場板は、国産杉材を使用した足場です。滑りにくい素材で柔軟性があり、荷重による振動を軽減してくれます。
    デメリットとしては、温度の変化によって木材が伸縮してしまうことです。

    平均して3年から5年程使用できますが、作業床として命を預かる重要な部材なので、
    強度が弱くなってきたら新しいものに取り替える必要があります。

    3.使用できない足場の特徴とは

     

    労働安全衛生規則は労働者の安全を確保するため、さまざまなルールが定められています。
    足場についてもルールがあり、その基準を満たしていないと足場を利用することができません。
    それぞれ解説するので、足場に関わる方は押さえておきましょう。

    3-1.材料


    労働安全衛生規則の材料について「事業者は、足場の材料については、
    著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはいけない」と定められています。
    先述した通り、目視でしっかりと確認することが重要です。

    3-2.作業床


    2mを超える高所で一側足場以外の足場を組む場合にはいくつかのルールが定められています。
    特に注意すべきルールは、「足場の床材間の隙間は、3cm以下にすること」です。

    床材には多少遊びがあるため、使用している間に床材同士の隙間が広がることがあります。
    専用の金具もしくは番線などで固定することをおすすめします。
    これらの基準が満たされていないと足場が使用できないため、注意が必要です。


    3-3.足場の組立て等作業主任者

    労働安全衛生規則では、「足場の組立て等作業主任者技術講習を修了した者のうちから、
    足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない」と定められています。

    またその職務として「材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと」や
    「器具、工具、要求性能墜落制止用器具及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと」などがあります。

    これらのルールを心得た足場の組立て等作業主任者を配置することで足場の安全性向上につながるため、
    適切な配置が重要です。


    3-4.点検

    労働安全衛生規則において足場を点検しなければならいタイミングが定められています。
    そのパターンは大きく分けて、「作業により足場を使用する前」と「台風や地震などの後」の2つです。

    台風や地震などの後については、足場の組立て等作業主任者である鳶工にて点検を行います。
    足場を利用する作業の前の点検については鳶工ではなく、足場を使用する工種の作業員にて行うのが一般的です。

    そのため、足場の点検方法は鳶工以外の作業員にもしっかりと周知しておくことが足場での事故を減らす上で重要です。


    4.足場材は必ず認定品を使用する

     
    仮設機材の認定基準に「厚生労働大臣が定める構造規格」があります。
    この基準を満たしていなければ、仮設機材を製造、販売又は貸与することはできません。
    そのため足場材は必ず認定品を使用する必要があります。

    認定品を確認する方法は、仮設材に表記されている仮設工業会認定マークです。
    仮設工業会が労働大臣が定める規格を元に認定基準を設け、その基準に合格した製品に仮設認定合格ラベルを表示しています。

    そのため、このマークが確認できれば安全性の高い規格の足場材と認識することができます。
     

    5.まとめ




    今回は、足場の耐用年数と安全性確保のため知っておくべきことについて解説しました。
    安全性の高い足場を設置するには、作業に適した足場材の選定と日々の足場材の点検が重要です。

    この記事を参考に、足場の耐用年数と安全性確保のために必要な知識を押さえて、足場上での事故や災害ゼロを目指しましょう。
  • 足場の組立費用はいくら?相場価格と単価について紹介
    工事現場で作業を進める上で、足場は欠かせないものです。
    そのような足場を組み立てるのに、どのくらいの費用が掛かるのか気になる現場責任者の方もいると思います。

    今回は足場の組立費用の相場価格と単価について紹介します。
    本記事を参考に適切な足場組立費用の相場を知ることで、不要な経費削減を実現できるでしょう。


    ▼ 目次
     1.足場の組立が必要な3つの理由
         1-1.  作業者の安全管理
         1-2.  品質の確保
         1-3.  近隣への配慮
       2.  足場の種類と各組立費用の単価相場
         2-1.  単管足場
           2-2.  くさび緊結式足場
            2-3.  枠組み足場
            2-4.  吊り足場
            2-5.  次世代足場
        3.  足場費用の計算方法
       4.  足場の組立費用が高くなる場合
       5.  足場の組立費用を安くする方法
           5-1.  複数の業者に見積もりを依頼する
           5-2.  工種毎で必要な足場をできるだけまとめて組む
           5-3.  外壁の仕上げ工事の搬入や取付計画を考慮した足場を計画する
       6.  まとめ


    1.足場の組立が必要な3つの理由

     
    工事現場を進める上で、足場が欠かせないものと前述しました。
    では、どういった理由で足場の組立が必要なのでしょうか。
     

    1-1.作業者の安全管理


    足場を設置する一番の目的は、高所で作業する職人さんの安全を守ることです。
    万が一、高所からの転落・墜落災害があった場合、被災した職人さんの命が危険にさらされます。

    現場で事故が起こると、現場の安全管理が整うまで工事が中断され、工期の延長に繋がります。
    また、現場責任者は安全配慮義務違反として、損害賠償責任を負うケースもあるのです。

    そのため、労働安全衛生規則に記載の通り、高さ2メートル以上での作業を行う場合は、
    足場等の適切な作業床を設けなければなりません。


    1-2.品質の確保


    外壁の作業において、それぞれの工種に合わせた適切な足場を設置していないと、
    施工品質の低下に繋がります。

    特に外壁は、直射日光や雨など外部からの影響を強く受けるため、足場の不備による作業性の低下で、
    漏水や外壁材の剥落などの重大な品質事故を起こす可能性があります。
    そんな品質事故を起こさないためにも、職人さんの作業性を考慮した足場の計画が重要です。

    1-3.近隣への配慮


    工事現場は近隣の方の理解があってこそ進められるため、近隣の方への配慮が必要です。
    特に作業の種類によっては、粉塵や外壁の吹き付け材などが近隣へ飛散する場合があります。

    そこで、組み立てられた足場の周囲をメッシュシートで囲うことで、飛散物が近隣建物に及ぼす影響を防ぎます。
    万が一、足場上でものを落とした際にも、それが外部へ飛散するのを防ぐ役割もあります。

    2.足場の種類と各組立費用の単価相場

     
    足場の組立費用は、1平方メートルあたり800〜1,500円が相場です。
    足場には以下の種類があり、それぞれの組立費用もやや異なります。

    ・単管足場
    ・くさび緊結式足場
    ・枠組み足場
    ・吊り足場
    ・次世代足場


    それぞれの特徴と単価を紹介します。

    2-1.単管足場




    単管足場は、一番シンプルで簡易的な足場です。
    単管パイプとクランプをベースにしているため、形状を変更しやすく、
    隣接地や敷地境界が近い場所でも適応しやすい点が利点です。
    しかし簡易的な組立であるため、他の足場と比べて強度と安全性が劣ります。

    狭いスペースに設置することから、作業員の作業性も落ちることが多く、
    この点がデメリットと言えるでしょう。
    低層の建物に向いており、単価は1平方メートル500円~800円が相場です。


    2-2.くさび緊結式足場




    くさび緊結式足場は、低中層建築などで多く使用されています。
    組立・解体が簡単で、作業性が良いことが特徴です。

    デメリットは組立・解体時のハンマーで打ち込む際に、大きな音が発生し、
    近隣への配慮が必要になることです。
    単価は1平方メートル800円~1,200円が相場です。

    2-3.枠組み足場




    枠組み足場は組立・解体が容易で、中高層の建物など幅広く使用できます。
    他の足場と比べて、幅が広いため、設置にスペースが必要です。
    単価は1平方メートル1,000円~1,500円が相場です。

    2-4.吊り足場




    吊り足場は地上から足場を組むのが困難な場合に、吊り下げて設置する足場です。
    高層マンション・橋などの高所作業で使われます。
    高層建築で時間短縮作業をするには有効ですが、落下対策など、難易度の高い安全性が求められます。
    単価は1平方メートル3,500円~が相場です。


    2-5.次世代足場




    次世代足場は「単管足場」・「くさび緊結式足場」・「枠組み足場」の規格を見つめ直すことで生まれた足場です。
    近年では、中高層の建物などで主流となりつつあります。
    足場の組立・使用時の安全性が高く、足場内の空間が広いため、作業性が良いなどの特徴があります。

    単価は1平方メートル1,200円~1,800円が相場です。

    3.足場費用の計算方法

     
    足場費用は以下の式から算出されます。

    足場費用=足場架面積×足場平米単価

    足場架面積とは、足場の外側の面積のことで、以下の式で計算します。

    足場架面積=(建物の外周+8メートル)×高さ

    例えば、建物の外周が100メートル、高さ15メートル、足場平米単価1,100円だとすると、
    足場費用は以下の式により、178万2,000円になります。

     足場架面積=(100+8)×15=1,620平方メートル
     足場費用=1,620×1,100=178万2,000円


    4.足場の組立費用が高くなる場合

     
    建物が高層になるほど、足場の単価が高くなる傾向にあります。
    また、高層建物の場合、倒壊防止対策などをきちんと行う必要があるため、
    組立費用が高額になりやすいのです。

    さらに、足場を組み立てる場所が狭く、作業性が悪い場合、
    基本単価より高い費用を請求される可能性があります。


    5.足場の組立費用を安くする方法

     
    ここまで足場組立費用についての相場を見てきました。
    直接工事費に加えて足場費用も考慮し高額になることも多いので、
    現場責任者の方ならできるだけ費用を抑えたいと思うことでしょう。
    ここでは足場組立費用を抑えるためのポイントを3点解説していくので、ぜひチェックしてみてください。


    5-1.複数の業者に見積もりを依頼する


    足場の施工業者や材料のリース業者など3〜5社の業者に見積もりを依頼しましょう。
    できるだけ低価格の業者を選ぶことで、費用を抑えられます。

    5-2.工種毎で必要な足場をできるだけまとめて組む


    外壁工事においても、建物によって複数の異なる作業があるため、
    それぞれの作業にあった足場を一度に組むことをおすすめします。
    特定の工種施工後に追加で行う組立や解体後に再度行う組立などの二度手間費用を抑えられます。


    5-3.外壁の仕上げ工事の搬入や取付計画を考慮した足場を計画する


    外壁工事の材料によって、搬入や取付方法を考慮していないと、
    足場を解体しなければならなくなる場合があります。

    具体的な対策は、材料のサイズと搬入方法を考慮して足場に荷取りステージを設ける方法が挙げられます。
    外壁と足場の間に材料を通す場合には、外壁と足場の距離を適切に離すことが大切です。

    このように、二度手間とならない計画を事前に立てることで、足場組立に掛かる費用を抑えられます。
     

    6.まとめ




    今回は、足場の組立費用の相場価格と単価について、さらに組立費用を抑える方法まで解説してきました。
    足場の費用を抑えるには、足場組立の計画を十分に検討することが重要です。

    本記事を参考に適切な足場組立費用の相場や、不要な出費の抑え方を知ることで、
    経費の削減を実現していきましょう。
  • 足場の種類を5つ紹介!サイズ規格の見分け方も
    建築現場で使用されている足場にはさまざまな種類があります。
    足場は、作業者が高い場所で安全に作業を行えるように設置します。

    一方で、足場は工事後に解体するため、解体が容易でなければなりません。
    つまり足場は、使用中にしっかりと作業者を支えるだけでなく、組み立てやすく解体しやすいものである必要があります。

    今回は、足場の種類とサイズ規格について解説します。


    ▼ 目次
     1.足場の種類について
         1-1.  くさび式足場
         1-2.  枠組足場
         1-3.  単管足場
         1-4.  吊り足場
           1-5.  移動式足場
       2.  足場の規格について
         2-1.  足場のサイズ規格とは
           2-2.  足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方
       3.  まとめ


    1.足場の種類について

     
    まずは、主な足場の種類について説明します。
     

    1-1.くさび式足場




    くさび式足場は、「くさび」と呼ばれる金具をハンマーで打ち込んで部材に
    接続することによって組み立てられる足場です。

    1980年に株式会社ダイサンが開発・販売したくさび式足場が広く普及したため、
    商品名の「ビケ足場」という通称で呼ばれることもあります。

    くさび式足場は、鋼管(鉄パイプ)を建地(支柱)として一定間隔で立て、そこに水平材や斜材を固定して組み上げます。
    これまでは主に低層建築のために使用されていましたが、近年では中層建築や一部の高層建築にも採用されています。

    この足場の利点は、組み立てや解体がハンマーを使って容易に行える点や、複雑な形状の建物にも対応できる点です。
    また、コストパフォーマンスも高い一方、場所によっては設置が難しい場合があります。


    1-2.枠組足場





    一般的に多くの現場で利用されているのが、枠組足場です。
    主に、鋼管を溶接して構築した建枠をベースに、脚注ジョイント・ジャッキ型ベース金具・
    床付き布枠・筋交い・鋼製布板などの部材を組み合わせて立てます。

    枠組足場は主に建物の外壁に沿って設置され、軽量でありながら高い強度を備え、
    組み立てや解体も比較的簡便なのが利点です。

    また、組み立てにハンマーを使用しないため、騒音もそれほど大きくありません。
    初期にはアメリカのビティスキャホード社から輸入されていたため、「ビティ足場」と呼ばれることもあります。


    1-3.単管足場




    単管足場は、直径48.6mmの鋼管を使用して組み立てる足場です。
    現在のように鋼管が主流となる前は、丸太が使用されていました。
    この足場では、単管にクランプと呼ばれる金具を接続し、さらにボルトで締め付けて組み立てを行います。

    欠点は、くさび式足場や枠組足場と比べると、組み立てや解体にやや時間がかかることです。
    その反面、足場の形状の自由度が高く、他の足場が使用できない狭小地でも組み立てが可能です。

    組み立て自体は比較的簡単であり、部材はホームセンターでも入手可能なため、DIYで使用する人も多いです。

    1-4.吊り足場




    吊り足場は、支持方法が他の足場とは異なり、上から吊り下げて組み立てるタイプの足場です。
    構築物の鉄骨の梁などから支持を取って、吊り下げた作業床を支えます。

    橋梁やプラントなど、足場を下から組み上げるのが困難な場所に設置できるのが特徴です。
    ただし、吊り足場は他の足場に比べて設置の難しい足場であるため、高さにかかわらず「足場の組立て等作業主任者」の選任が必要です。

    また、吊り足場は「吊り枠足場」と「吊り棚足場」に大別され、状況に合わせて使い分けられています。


    1-5.移動式足場




    移動式足場は、キャスター(車輪)が取り付けられた可動式の足場です。
    一度組み上げてしまえば容易に移動させられるため、効率的な施工が可能です。

    作業床は平らで広く、安全な作業が行えます。
    さらに、高さの調整も可能であり、天井や壁などの内装の仕上げ工事に適しています。

    ただし、勝手に動いてしまわないよう、作業中はブレーキをかけておかなければなりません。
    多くの移動式足場は、転倒を防止するために「アウトリガー」と呼ばれる補助用の支柱を立てて固定します。

    中央ビルト工業の1600幅ローリングタワーは、作業床の高さが5400ミリメートルまでであれば、
    キャスターを固定すればアウトリガーによる固定は必要ありません。
    移動後、すぐに作業が行えるため、作業性に優れています。

    移動式足場を使用する際は、作業者が乗った状態での移動は避け、
    足場の上では脚立やはしごを使用しないようにするなど、
    さまざまな注意点を守る必要があります。

    2.足場の規格について

     
    各建築現場の状況に対応するさまざまな種類の足場がありますが、
    それぞれの足場には規格が定められています。

    異なる種類の足場はもちろん、同じ種類の足場であっても、
    規格が異なる部材を混在させて使用することはできません。
    ここでは、足場の規格について説明します。

    2-1.足場のサイズ規格とは

    足場には、インチ規格とメーター規格という2種類の規格があります。

    インチ規格とは、主にアメリカやイギリスなどの海外で使用されている規格です。
    1インチは25.4ミリメートルで、建地のピッチは最も長いもので1829ミリメートル、短いもので610ミリメートルとなります。

    一方のメーター規格は、国際単位系(SI単位系)を採用したもので、日本をはじめとする多くの国で使用されています。
    メートル単位で設計された足場は数字のキリがよく、現場での利用が容易なため、
    国内の現場で足場を使用する際は、メーター規格が適切です。


    2-2.足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方




    足場にはメーター規格とインチ規格があることを説明しました。

    足場のサイズ規格が2種類ある理由は、中高層ビルやマンション、
    戸建て住宅などの幅広い場面で使用される枠組足場が、当初アメリカから輸入されていたためです。

    アメリカは長さの単位がインチであるため、輸入された足場もインチ規格のものでした。
    国内で使用されているメートル単位とは異なりますが、枠組足場が軽量かつ高い強度で組み立てやすかったことから、
    多くの現場で使用されました。

    その後、メーター規格の枠組足場が販売されるようになり、サイズ規格が異なる2種類が市場に流通するようになりました。
    同じ枠組足場ではありますが、サイズ規格が異なるものを混在させて使うことはできません。

    インチ規格とメーター規格は、実際に長さを計測することで区別できます。
    見た目だけでは区別が難しいため、足場部材が混在しないように管理する必要があります。

    日本の建物はメーター規格で建てられているため、インチ規格の足場は不要ではないかと思う方もいるかもしれませんが、
    実は国内にもインチ規格の建物があります。それは主に輸入住宅です。

    輸入住宅産業協会では、「海外の設計思想に基づき、資材別またはパッケージで輸入し、
    国内で建築される住宅」を輸入住宅と定義しており、日本の建築物にはない特徴が見られます。

    代表的なものとしては、2×4(ツーバイフォー)や2×6(ツーバイシックス)と呼ばれ、
    面と面を合わせて建てる「パネル工法」が挙げられます。

    日本の建築物は柱や梁で構成する「従来工法」で建てられているのに対し、
    輸入住宅は「パネル工法」が一般的となっています。

    「在来工法」に対する「パネル工法」のメリットとしては、間取りの自由度が高く耐震性が高いという点があります。
    さらに気密断熱性が高く、省エネ性能に優れています。

    これらのメリットから、輸入住宅を選ぶ人もいるのです。
    そのため、輸入住宅を建てる際にインチ規格の足場が使われることがあります。
     

    3.まとめ




    今回は、足場の種類とサイズ規格について解説しました。
    足場の選択は、どのような工事をするのかによって大きく変わります。
    足場メーカーの技術情報を確認して、工事内容に適した足場の種類とサイズ規格を選びましょう。
  • 屋根工事に使用する足場とは?特徴や設置する際の注意点など
    建築工事の際に必要な足場ですが、屋根の工事の場合、どのような種類や注意点があるのでしょうか。
    法律では、作業が2メートル以上の高さで行われる場合には、足場の設置を義務付けています。

    屋根工事においても、安全性と近隣住民への配慮を最優先に考え、
    適切な足場を設置することが重要です。
    それでは、屋根工事ではどのような足場を設置すればよいのでしょうか。

    今回は、屋根工事に使用する足場について解説します。

    ▼ 目次
     1.屋根工事に使用する足場の特徴
       2.  屋根足場の種類
       3.  屋根足場を設置する際の注意点
         3-1.  職人の安全確保
           3-2.  墜落防止対策を行う
         3-3.  近隣住民への配慮
       4.  屋根足場なら『マルチトラスB』
       5.  まとめ


    1.屋根工事に使用する足場の特徴

     
    屋根工事に使用する足場の特徴は、建物の外周に設置するような足場とは異なり、
    垂直ではないということです。

    多くの建物の屋根には雨を流すための勾配が付いているため、
    屋根の上で作業をするための足場も屋根の形状に合わせて組み立てる必要があります。

    一般的な戸建ての屋根工事で使用する屋根足場は、外壁工事用の足場とは異なり、
    作業者が乗る足場板は設置せず、単管パイプだけで組み立てられます。
    作業者は、屋根の上で単管パイプに体重を預けることによってバランスをとります。

    屋根工事で足場を設置する際に重要なのは、屋根勾配です。
    屋根勾配とは屋根の傾斜の角度のことで、水平方向に対する角度を示すものです。
    一般的に角度の単位は「度」で示しますが、日本の建築業界では屋根勾配を「寸」という単位で表します。

    古来、日本では長さや重さの単位として「尺貫法」が使用されていました。
    この「尺貫法」では、長さは「尺」、重さは「貫」が基本単位でした。

    「尺貫法」において「寸」は「尺」の10分の1の長さを表し、メートル法では約3.03センチメートルとなります。
    この単位は角度を示す際にも使用されていましたが、
    1891年(明治24年)に「度量衡法」が制定され、1951年(昭和26年)に「計量法」が制定されました。

    「計量法」の制定により、国内の製品についても、国際基準に基づいて長さや重さを正確に計測することができるようになりました。

    現在は、国際単位系(SI単位)に統一され、図面などではメートルを基準とする単位が使用されています。
    しかし建設現場では、江戸時代の名残である「尺貫法」が使用され続けています。
    そのため、建設現場では屋根勾配を「3寸」や「4寸」といった形で示すのです。

    ここでの「3寸」は、水平長さ10寸(約30センチメートル)に対して、
    垂直高さが3寸(約9センチメートル)の勾配を意味します。

    屋根勾配は建築物の用途・外観・屋根材の種類などによって決まり、
    「6寸」以上が急勾配、「3寸」~「5寸」が並勾配、「3寸」以下が緩勾配と区別されています。

    一般的には、足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
    屋根の形状や作業内容に応じて、足場設置の必要性を判断しましょう。

    2.屋根足場の種類

     
    一般的な屋根足場は、外壁工事で使用する足場と同じ材料を使用することができます。
    代表的な足場は、単管足場です。

    単管足場であれば、屋根の中心に棟があり四方に流れる形状の寄棟(よせむね)屋根や、
    屋根の1か所が頂点になっている方形(ほうぎょう)屋根のような、
    上と下で寸法が変わる屋根にも柔軟に足場を組むことができます。

    2枚の板を左右対称に合わせたいわゆる三角屋根である切妻(きりつま)屋根や、
    1枚が片方にだけ流れる片流れ屋根のような屋根には、くさび式足場で一定のピッチで組むこともできます。

    3.屋根足場を設置する際の注意点


    ここでは、屋根足場を設置する際の注意点について説明します。


    3-1.職人の安全確保

    一般的に屋根足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
    これは角度にすると約30度になります。
    一般的な道路の場合、傾斜が約3度あれば傾きを感じるでしょう。

    実際に30度の傾斜を体験すると、かなり傾いていることがわかります。
    単に「6寸」未満であることを理由に屋根足場は不要であると判断するのではなく、
    屋根の材質や状態も確認して足場の必要性を検討することが重要です。

    屋根の傾斜が「6寸」未満の場合、足場を設置する際は、
    顧客に対して設置の理由を明確に説明する必要があります。
    足場を設置すると、その分費用が増える可能性があるためです。

    足場の設置に伴う追加費用は顧客が負担することになりますので、
    足場の単価を明確に提示し、増加分の費用を計算できるようにしましょう。

    3-2.墜落防止対策を行う



    単に屋根足場を設置しただけでは、職人の安全は完全には確保されません。
    傾斜が緩やかで足場を設置しない場合であっても、墜落防止対策を行いましょう。

    平成26年1月に作成された
    「墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル」 
    https://www.mhlw.go.jp/content/000550445.pdf

    では、平成25年の建設業における墜落による死亡災害の特徴として、
    「屋根、屋上」からの墜落が17%となっており、
    「足場」からの墜落が次に多いという結果が示されています。

    こうした事故を防ぐために、屋根足場を設置するかどうかにかかわらず、墜落防止対策を行いましょう。
    具体的な墜落防止対策としては、屋根の上での作業を始める前に、
    墜落防止対策の要である最初の垂直親綱を設置することが挙げられます。

    垂直親綱に安全ブロックを連結し、墜落制止用器具のフックを取り付けることで、
    作業開始前から作業終了まで、作業者の墜落を防ぐことが期待できます。

    3-3.近隣住民への配慮

    屋根の上での作業を行う際は、ほこりやゴミが飛散する可能性があります。
    これらが近隣住民の敷地に落ちたり、建物に引っかかったりすることを防ぐために、
    養生シートを設置しましょう。

    工事期間中は、屋根の上という高い場所に作業者がいるため、視線が気になる近隣の方もいるでしょう。
    養生シートを設置することで、近隣の方は視線を感じずに済み、作業者も作業に専念することができます。

    また、設置や解体の作業を行う際は騒音が発生するため、防音シートを設置し、
    極力音が漏れないようにする配慮が必要です。
     

    4.屋根足場なら『マルチトラスB』



    ここまで、一般的な戸建て住宅の屋根を想定して、屋根足場について説明しました。
    ここからは、特殊な建物の屋根足場について説明します。
    特殊な建物の一例として、神社仏閣について考えてみましょう。

    神社仏閣には日本古来の建築様式が採用されており、その多くが本瓦葺きと呼ばれる工法によるもので、
    形は反り屋根が一般的となっています。

    神社仏閣に反り屋根が多い理由は、形の美しさだけでなく、木造の建物を雨から守り建物内に自然光を取り込むためです。
    建物の主体である「身舎」部分の屋根の勾配はきつくし、軒の勾配は緩くすることでこれを実現します。

    神社仏閣の屋根足場を組む際は、この屋根の反りがあるため、一般の戸建て住宅と同様の足場を組むことが困難です。
    このような場合、中央ビルト工業の『マルチトラスB』が有用です。

    『マルチトラスB』は、設計条件によっては25メートル飛ばすことができるジョイント式大空間用作業足場で、
    大スパンとなる素屋根や作業ステージ、渡り通路など、さまざまな用途に使用できます。

    素屋根とは、工事期間中に柱や壁などを雨で濡らさないようにする、雨養生のための仮設物です。
    素屋根を設置すれば、雨が降っていても工事を続けることができるため、
    工事期間が長い神社仏閣建築にとって、不可欠な仮設建物です。

    『マルチトラスB』は、ピンを差し込んでユニットとして使用することができます。
    また、部品点数が少なく、簡単に施工できるため、工期の短縮を期待できます。


    5.まとめ




    今回は屋根足場について解説しました。
    一般的な基準では、屋根足場を設置する目安は勾配「6寸」以上とされていますが、
    傾斜が緩やかな屋根であっても、屋根や屋上からの墜落災害が発生する可能性があるため、
    墜落防止対策は必ず行いましょう。
  • 建築現場の足場の種類とは?外部足場、内部足場、地足場の特徴をそれぞれ解説
    建築工事で必ず必要な足場は、工事に関わる職人にとって、なくてはならないといっても過言ではありません。

    足場は工事の初期段階から最後までさまざまな場所で使用されます。
    また、足場は1度組んだら終わりではなく、工事の進捗によって形を変えて利用されます。

    足場は職人の安全を確保するだけではなく、作業に専念して良い仕事をしてもらうためにも必要です。
    そのため、職人が作業しやすい足場を組むことが求められます。

    そこで今回は、作業ごとに組まれる足場の分類について解説します。

    ▼ 目次
     1.足場を大まかに分類すると
         1-1.  外部足場
         1-2.  内部足場
         1-3.  地足場
       2.  それぞれの特徴・組み立て方とは
         2-1.  外部足場の場合
           2-2.  内部足場の場合
         2-3.  地足場の場合
       3.  まとめ


    1.足場を大まかに分類すると

     
    足場の分類と聞くと、枠組み足場やくさび緊結式足場などを想像するかもしれませんが、
    ここでは、作業の場所ごとに利用される足場の分類について説明します。
     

    1-1.外部足場




    外部足場は建物の外側に組み立てる足場です。建物全体を取り囲むように組まれ、
    高さも建物と同じくらいになります。

    外部足場に求められることは、十分な強度があり、作業者が複数人移動しても安定していることです。
    外部足場は足場の中でも最も長い期間利用するため、天候の影響を受けないように配慮しなければなりません。

    具体的には台風などの強風時にもしっかりと耐える足場です。
    足場で使用される単管パイプは、外径48.6ミリメートルの棒状であるため、
    単管パイプ単体であれば余程の強風でなければ風の影響を受けることはないでしょう。

    しかし外部足場には通常、飛散防止ネットが設置されます。飛散防止ネットは風の力を受けやすく、
    その分足場にも大きな負荷がかかります。

    外部足場は足場の中でも高所まで組むため、
    飛散防止ネットにかかる力をしっかりと支えられるような施工と管理が必要です。


    1-2.内部足場





    工事が進み建物の床が完成すると、内装工事のための内部足場を設置します。
    内装工事には建物内部の床・壁・天井の仕上げをはじめ、電気・水道・ガス等の設備工事も含まれます。

    内装工事では上の階の床裏作業に見合う高さの足場が必要です。
    建築基準法では居室の天井高を2100ミリメートル以上と規定しており、高くする分には制限がありません。

    一戸建てやマンションでは2400ミリメートルの天井高が一般的です。
    天井高が2400ミリメートル程度の内装工事では、足場を組まずに脚立や立ち馬と呼ばれる可搬式作業台が使用されています。

    一方、工場や商業施設、体育館や劇場など用途が特定されている建物については、
    多くの場合5メートルを超えるため、外部足場のような足場を組むことがあります。

    脚立や立ち馬では届かない場所で、足場を移動しながら作業をする場合は、
    高所作業車やローリングタワーを利用する方法があります。



    1-3.地足場





    地足場は地面より下の、建物の基礎部分などの構造物をつくるために設置する足場です。

    建築工事において、基礎工事は建物の土台となる部分をつくる重要な作業であり、
    丈夫な鉄筋コンクリートで施工します。

    鉄筋コンクリートの施工で建物の強度などを確保するために初めに行う「配筋作業」では、
    作業員が基礎内部で安全に動き回ることができるよう、地足場を一時的に設置します。
    特に建物の土台となる基礎梁の組み立ての際に、作業員が基礎の内部で鉄筋を結束しながら移動するためにも地足場が不可欠です。

    次に行なわれる作業は「コンクリートの打設」。建物の基礎が均一な強度となるように、
    コンクリートを全体に均等に流し込むことがカギとなります。
    そのため作業員は地足場を移動しながら、打設する位置を調整しコンクリートを流し込みます。

    これらのプロセスで地足場が重要な役割を果たし、安全で効率的な環境と、建物の強度や安定性が確保されます。

    2.それぞれの特徴・組み立て方とは

     
    作業によって使い分けられている足場ですが、それぞれの足場の特徴と組み立て方について説明します。

    2-1.外部足場の場合

    外部足場の特徴は建物全体を覆うため、たくさんの足場資材を使用することです。
    資材が多いため組み立てる時には、多くの鳶職人が作業を行います。

    外部足場は建物の最上部まで足場を組み、作業には墜落リスクが伴います。
    そのため5メートル以上の高所で作業を行う場合は、フルハーネス型墜落制止用器具を使用しなければなりません。

    外部足場の組み立て方は、まず建物の図面をもとに足場の割りを行います。
    足場の割りは設計図となるもので、この段階で全体の構造が決まります。
    足場の割りが決まったら、設計図通りに足場を組みます。


    2-2.内部足場の場合

    内部足場の特徴は、建物の内部構造によってさまざまな選択肢があることです。
    住宅やマンションなどの天井高が2400ミリメートル程度であれば、
    脚立や立ち馬を使用すれば作業はできるため、足場を組み立てる必要はないでしょう。

    内部足場を使用する判断基準としては、足場以外の方法で作業床を設けられるかということがポイントになります。
    内部足場を組み立てる場合、外部足場と違い建物の内部に多くの資材を運搬しなければならないため、非常に手間がかかります。

    また建物の内部に外部足場のような足場を組むと、作業者の移動や資材の運搬に影響します。
    内部足場を検討する場合、できるだけ手間のかからない方法を優先に考えます。

    内部足場の手段として最初に検討するのが高所作業車です。
    高所作業車は、高いもので25メートルまで伸ばすことができ、移動が容易であることから、
    多くの工事現場で利用されています。

    しかし高所作業車は通路を確保しなければ利用できません。建物内部で通路が狭い、段差がある場合、
    高所作業車が入っていけません。その際は、ローリングタワーの利用を検討しましょう。

    ローリングタワーであれば、6メートル程度までの作業床を簡単に組み立てることができます。
    また、高所作業車が入れない場所でも、資材をバラして運搬できるため、最小限の資材運搬で足場を設置することができます。

    高所作業車やローリングタワーは床面が水平な場所でなければ使用できないため、
    傾いた床面の場合は単管足場などを組む必要があります。

    2-3.地足場の場合

    地足場は地面よりも下で行う作業のために組む足場です。
    ビルやマンションなどの大規模な建築物は、大きく強固な基礎が必要となるため、地面を掘って基礎を施工します。

    地足場は基礎工事を行う職人が、基礎の上を移動したり配筋作業をしたりするために組み立てます。
    建物の中心を貫くように設置して、基礎の上を移動できる足場です。

    地足場の組み方は、基礎として地面を掘った場所に捨てコンと呼ばれるコンクリートを流し込みます。
    捨てコンは基礎をつくる前に地盤に流し込むコンクリートのことで、地足場は捨てコンの上に組み立てることになります。

    地足場は単管で組まれることが多く、その理由は高さや設置場所の調整に自由度があるからです。
    地足場は基礎工事の進捗によって何度か組み直すこともあります。

    地足場を組む上で注意することは、最後に基礎のコンクリートを流し込む時に干渉しないことです。
    足場がコンクリートで固められてしまい解体できなくなってしまいます。

    コンクリートを流し込む前に、地足場の建地の位置を確認しましょう。
     

    3.まとめ




    今回は、建築工事の作業ごとに組まれる足場の分類について解説しました。
    どの足場も作業者の安全と作業のしやすさのために組まれるものです。
    資材も共用することが可能であるため、使い方を工夫して作業の効率化に取り組んでみては如何でしょうか。
  • 【足場材】単管クランプとは?種類と特徴について解説
    足場の種類が枠組足場の場合、決まった資材を準備すれば、工具などを使用せずに組み立てることができます。

    くさび緊結式足場であれば、梁となるパイプの両端にある「くさび」と呼ばれる突出部を建地の「コマ」にはめ込み、
    ハンマーで打ち込み緊結して組み立てます。

    どちらの足場も、組み立て・解体を容易に行えるため、多くの工事現場で利用されています。

    しかし枠組足場やくさび緊結式足場は、規格で寸法等が決められており、
    複雑な形状の土地や狭小地での使用には適していません。

    自由度の高い足場を組む場合は、単管足場を使用します。
    単管足場は、ラチェットレンチやインパクトレンチを使用し、
    単管パイプと単管クランプを組み合わせることで自由度の高い足場を組むことができます。

    そこで今回は、自由度の高い足場を組むために必要な単管クランプについて解説します。

    ▼ 目次
     1.単管クランプとは
       2.  一般的な単管クランプの特徴
       3.  単管クランプの種類
         3-1.  直交型クランプ
           3-2.  自在型クランプ
         3-3.  3連クランプ
         3-4.  垂木止めクランプ
         3-5.  板止めクランプ
       4.  単管クランプを使う時の注意点
         4-1.  逆さクランプに注意!
         4-2.  締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用
         4-3.  単管クランプカバーで作業者を保護
       5.  まとめ


    1.単管クランプとは

     
    単管クランプとは、足場の骨格となる単管パイプを緊結するための金具です。

    単管クランプには、ボルトとナットが付いており、
    ラチェットレンチやインパクトレンチなどを使ってナットを締め付けることで単管パイプと緊結します。
    単管クランプには、用途に合わせてさまざまな種類があります。

    2.一般的な単管クランプの特徴

     
    単管クランプは、単管パイプ同士をしっかりと固定できる構造になっています。

    また単管クランプ自体の強度が弱くては足場を支えることができないため、強度の強い鉄製が一般的です。

    ただし、そのまま屋外で使用すると雨などによって腐食してしまうため、腐食予防としてクロメートメッキが施されています。

    クロメートメッキは装飾用のメッキではありませんが、薄い金色に近く、新品の製品には光沢があります。

    緊結する単管パイプを簡単に把持できるよう、単管クランプにはボルトとナットが付いています。
    単管パイプに取り付ける際は、ナットを緩めてボルト部を開き、そこに単管パイプを挟み込むことができます。

    その後、インパクトレンチなどを使ってナットを締め付けて単管パイプを固定します。

    3.単管クランプの種類


    単管クランプは用途によってさまざまな種類があります。
    ここでは、単管クランプの種類について説明します。


    3-1.直交型クランプ

    直交型クランプは、単管パイプを直角に緊結するために使用します。
    足場工事で最も使用されている単管クランプで、単管パイプを直角に組むことができ、強い強度を得られます。

    足場1スパンの積載荷重が400キログラムに規制されているところ、
    単管クランプの許容荷重は500キログラムのため、十分耐えることができます。

    3-2.自在型クランプ



    自在型クランプは、単管パイプの角度を自由に調整できるものを指します。
    自在型クランプは直交型クランプとは異なり、2つのクランプがつながっているだけで角度は固定はされていません。

    そのため角度を自由に調整できることがメリットですが、
    自在型クランプ単体の許容荷重は350キログラムと、直交型クランプと比べて低くなります。

    自在型クランプを使用する場合は、足場の許容荷重に影響がないか、注意が必要です。

    3-3.3連クランプ

    3連クランプには、単管パイプを把持するクランプが3つ連結されています。
    直交クランプのように直角に固定できるタイプと、自在クランプのように角度を調整できるタイプがあります。

    1本の建地に対して足場用の単管パイプを2本設置する場合などには、
    3連クランプを使用することで、足場用のパイプを平行に組むことができます。

    3-4.垂木止めクランプ

    垂木止めクランプは、単管パイプと木材を固定するためのものです。
    単管足場では、自由度の高い足場を組むために、部材の一部に木材を使用することがあります。

    木材は、工事現場での加工が容易で、垂木止めクランプに直接ネジで固定することができます。
    垂木止めクランプの種類にも、直交タイプや平行タイプ、自在タイプなどがあります。

    3-5.板止めクランプ


    板止めクランプは、単管クランプに木の板を固定するために使用します。
    留め金部分がコの字になっているため、一般的なコンパネなどの厚さ12ミリメートルの板材を挟み込めるようになっています。



    4.単管クランプを使う時の注意点


    自由度の高い足場を組むことができる単管クランプですが、
    使用時にはいくつかの注意点があります。
    ここでは、具体的な注意点について説明します。


    4-1.逆さクランプに注意!

    単管クランプはその構造から、どのような方向にも取り付けることができます。
    建地の単管パイプに取り付ける場合、締め付けるボルトがどの向きにあっても、クランプの強度に影響はありません。

    しかし、横さんの単管パイプを取り付ける場合は、ボルトの向きに注意しなければなりません。
    締め付けるボルトが横さんの単管パイプの下側になってしまうと、横さんにかかっている力が加わることになります。

    単管クランプのボルトは単管パイプを締め付けるためのものなので、横さんからの力が加わると、ボルトに余計な負荷がかかります。

    ボルトに負荷がかかり続けると、ナットが緩んでくる可能性があります。
    その結果単管クランプが開いてしまった場合に、ボルトが下側にあると、
    それまで把持していた単管パイプが落下するかもしれません。

    ボルトを下側に取り付けることを逆さクランプといい、単管クランプを設置する場合は、
    この逆さクランプに注意しなければなりません。 

    4-2.締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用




    単管クランプを取り付ける際は、適切な工具を用意する必要があります。

    単管クランプを締め付ける工具としてよく利用されているのが、ラチェットレンチです。
    ラチェットレンチは、工具にラチェットと呼ばれる機構が組み込まれており、
    回転方向を一方向に制限することができます。回転方向を一方向にすることで、連続的に締め付け作業ができます。

    回転方向の切り替えはレバーで行えるため、ナットを緩める時にも同じように使用することができます。

    単管クランプの設置・解体作業をする場合は、17×21サイズのラチェットレンチを準備するとよいでしょう。

    ラチェットレンチよりも効率的に作業ができる工具として、インパクトレンチがあります。
    インパクトレンチは、モーターを使用した電動工具で、ラチェットレンチよりも短時間で楽に、
    ナットの締め付けや取り外しを行うことができます。

    インパクトレンチは内部にハンマーと呼ばれる打撃機構が組み込まれているのが特徴で、
    これにより締める・緩めるといった作業がスムーズになります。

    現在主流となっているバッテリー方式のインパクトレンチを使用する場合は、
    作業開始前にしっかり充電しておきましょう。

    4-3.単管クランプカバーで作業者を保護

    単管クランプを組んだあとは、カバーを取り付けましょう。
    組んだだけの状態では、単管クランプの部分が単管パイプから突き出たままです。

    足場は多くの作業者が使用するため、突き出た部位があると、そこに引っかかったりぶつかったりすることがあります。

    重い工具や荷物を運ぶことの多い作業者が単管クランプにぶつかると、当たり所が悪ければ、ケガをしてしまう可能性があります。
    法的な設置義務はありませんが、作業者を守るためにも、単管クランプカバーを取り付けましょう。

    5.まとめ




    今回は単管クランプについて解説しました。
    単管クランプの種類と特徴を理解することで、自由度のある足場が組めるようになります。

    また、単管クランプを使用して足場を組む際は、
    逆さクランプやケガに注意して、安全に取り組みましょう。
  • 物流の2024年問題が建設業界に与える影響と今後の対策
    EC(Electronic Commerce)の発展は、ビジネスや私たちの生活に大きな影響を与えています。
    ECは「電子商取引」のことであり、一般の消費者に商品を販売するだけでなく、
    消費者同士や企業同士の取引など、あらゆる取引に利用されています。

    EC業界を支えているのは、WEBサイトを運営するIT業界と商品を発注者まで配送する物流業界です。
    IT業界では、AI技術や人工知能を活用し、日々革新を遂げています。

    一方、物流業界では大きな課題を抱えており、その影響はEC業界だけでなく、製造業や建設業にも及んでいます。

    そこで今回は、物流業界の課題が建設業界に与える影響について解説します。
     


    ▼ 目次
     1.物流業界の2024年問題とは何か
       2.  物流の2024年問題が建設業界に及ぼす影響は?
        3.  建設業界が取り組むべき対策
           3-1.  DX化による業務効率化
         3-2.  労働時間や条件の見直し
           3-3.  顧客との価格交渉
       4まとめ

    1.物流業界の2024年問題とは何か

     

    物流業界の2024年問題とは、2024年4月以降にドライバーの時間外労働時間が規制されることによって
    生じる問題の総称のことです。

    物流業界は、ドライバーの慢性的な長時間労働によって人手不足を補っていましたが、
    2024年4月以降ドライバーの時間外労働時間は年間960時間に制限されるため、
    業務量に対して深刻な人手不足になることが予想されています。

    そもそも、働き方改革関連法に伴い労働基準法が改正されることの狙いは、
    少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や育児や介護との両立など、働く人々が多様な働き方を選択できる社会の実現です。

    改正労働基準法で定められた時間外労働時間の上限は、原則月45時間、年360時間。
    大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から施行されていました。
    物流や建設・医療関係については猶予が設けられていましたが、2024年4月以降適用されます。

    またドライバーにとって絶対に避けたい交通事故ですが、現実はドライバーの長時間労働が原因による事故だけでなく、
    長距離の連続運転による事故も発生しています。

    物流業界には430(ヨンサンマル)休憩というルールがあり、4時間を超えて連続運転をする場合には、
    30分以上の休憩等を確保しなければなりません。

    改正前はこちらの休憩時間も単純に「運転をしなければよい」とされていました。
    しかし改正後は「必ず休憩にあてなければならない」とされるため、ドライバーは運転時間にも注意する必要があります。

    2.物流の2024年問題が建設業界に及ぼす影響は?


    では物流業界の2024年問題によって、建設業界にはどのような影響があるのでしょうか。

    まず考えられるのが、建設工事に関わる資材が、予定通りに届かなくなる可能性があることです。
    建設工事に使われる資材は、大きな物が多く数もたくさん必要です。
    運搬に使用する車両も大型の特殊車両が必要となることもあり、対応できる運転手も限られます。

    物流業界の人手不足により、工事の日程通りに資材が届かないと、顧客と契約した期限までに建物が完成できなくなる可能性があります。

    次に考えられる影響は、運送費用の高騰です。工事の日程通りに資材が届かないとなると、
    余分に費用をかけて別途運搬方法を確保しなければなりません。

    建設業界では資材の価格高騰によって、建設コストが上昇している状況です。
    物流業界の2024年問題によって、建設業界にも資材到着の遅延や運送費高騰などの問題が発生する可能性があります。


    3.建設業界が取り組むべき対策

     
    ここでは建設業界が取り組むべき対策について説明します。

    3-1.DX化による業務効率化


    政府が実施を支援する働き方改革の取り組みには、DX化の推進があります。
    生産性の向上や生活と仕事の両立を支援するために、ハードウェアやソフトウェアの環境整備を進め、
    最新のIT技術を活用する必要があります。

    しかし、これまでアナログ的な業務が多いとされていた建設業では、何から取り組めば良いかわからないことも多いことでしょう。
    業務のDX化を推進するためには、ITリテラシーが高い人材が不可欠です。

    社内でデジタル人材を育成し各部署に配属することで、職場の業務を一から見直すことはもちろん、
    デジタル化に抵抗感を持つ人たちも、業務の効率化を実感することに繋がります。

    身近な取り組みとしては、書類の保管や管理業務のデジタル化が挙げられます。
    さらにクラウドサービスなどを活用して、会社全体の情報を連携することでも効率化を図ることができます。




    一般的にDX化による業務の効率化は、主に事務作業に関する事例が多く紹介されていますが、
    現場の作業においてもロボットを利用し、足場の組立や解体を行う取り組みが行われています。

    足場の組立や解体作業では、多くの資材運搬を行わなければなりません。
    これまで工事現場での運搬作業は作業者が行っていましたが、肉体的負担が大きい運搬作業をロボットが行うことで、
    少ない作業者によって工事を行うことができます。現在はまだ試験段階ですが、近い将来実用化することが期待されています。


    3-2.労働時間や条件の見直し

    DX化による業務効率化を行ったとしても、根本的な人手不足が解消されるとは限りません。
    根本的な人手不足を解消するためには、足場業界で働く人を増やす必要があります。

    人手不足の原因は、若年層の在職率が著しく減少していることや、リーマンショック以降に建設業の需要が一時的に激減したため、
    仕事の無くなった職人たちの多くが他の職種に転職したことも挙げられます。

    足場業界や建設業界では、若年層の就業者を増やすために、工業高校などと連携して技能体験研修を行い、
    建設業に関する理解を深める活動を実施しています。また人材の流出を防ぐために、
    労働条件や賃金条件の見直しを行って待遇改善に取り組む必要もあります。

    さらに社会保険の加入や福利厚生の拡充といったことについても改善し、人手不足解消のためにあらゆる対策を実施することも欠かせません。
    経営者にとっては財務的な負担となりますが、賃金上昇や待遇改善については、働き方改革の一環として国や関係団体から要請されています。

    3-3.顧客との価格交渉

    DX化による業務改善や、待遇改善を行うためには資金が必要となるため、
    経営者は発注者に対しての価格交渉が求められます。
    2024年4月以降、単に受注を増やすだけでは労働時間の上限規制があるため、売り上げを確保することが難しくなるでしょう。

    発注者もこれまでと同じコストでは、同様のサービスを提供してもらえなくなる可能性があります。
    政府も2024年問題の対策として、適切な価格転換を促しており、価格交渉の実態を把握するために、
    毎年9月と3月に調査を実施して結果を公表しています。

    参考:
    中小企業庁「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」 
    https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/

    価格交渉に応じない企業は名前を公表されるため、これまで価格交渉に応じてもらえなかった状況が改善傾向となって、
    今後は適切な価格交渉が実施しやすくなります。
     
       

    4.まとめ



     
    今回は、物流業界の2024年問題が建設業界にどのような影響を及ぼすのかについて解説しました。
    2024年4月からは、物流業界も建設業界も法律の猶予期間が終了し、違反をすれば罰則を受けます。

    両業界ともガイドラインを作成してルールを順守する準備を進めていますが、2024年問題の解決策は人手不足の解消です。
    そのために、発注者に対して適切な価格交渉を行い、業務のDX化や待遇改善に取り組みましょう。