建築現場で使用されている足場にはさまざまな種類があります。
足場は、作業者が高い場所で安全に作業を行えるように設置します。
一方で、足場は工事後に解体するため、解体が容易でなければなりません。
つまり足場は、使用中にしっかりと作業者を支えるだけでなく、組み立てやすく解体しやすいものである必要があります。
今回は、足場の種類とサイズ規格について解説します。
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▼ 目次 |
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1.足場の種類について |
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1-1. くさび式足場 |
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1-2. 枠組足場 |
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1-3. 単管足場 |
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1-4. 吊り足場 |
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1-5. 移動式足場 |
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2. 足場の規格について |
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2-1. 足場のサイズ規格とは |
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2-2. 足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方 |
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3. まとめ |
1.足場の種類について
まずは、主な足場の種類について説明します。
1-1.くさび式足場
くさび式足場は、「くさび」と呼ばれる金具をハンマーで打ち込んで部材に
接続することによって組み立てられる足場です。
1980年に株式会社ダイサンが開発・販売したくさび式足場が広く普及したため、
商品名の「ビケ足場」という通称で呼ばれることもあります。
くさび式足場は、鋼管(鉄パイプ)を建地(支柱)として一定間隔で立て、そこに水平材や斜材を固定して組み上げます。
これまでは主に低層建築のために使用されていましたが、近年では中層建築や一部の高層建築にも採用されています。
この足場の利点は、組み立てや解体がハンマーを使って容易に行える点や、複雑な形状の建物にも対応できる点です。
また、コストパフォーマンスも高い一方、場所によっては設置が難しい場合があります。
1-2.枠組足場
一般的に多くの現場で利用されているのが、枠組足場です。
主に、鋼管を溶接して構築した建枠をベースに、脚注ジョイント・ジャッキ型ベース金具・
床付き布枠・筋交い・鋼製布板などの部材を組み合わせて立てます。
枠組足場は主に建物の外壁に沿って設置され、軽量でありながら高い強度を備え、
組み立てや解体も比較的簡便なのが利点です。
また、組み立てにハンマーを使用しないため、騒音もそれほど大きくありません。
初期にはアメリカのビティスキャホード社から輸入されていたため、「ビティ足場」と呼ばれることもあります。
1-3.単管足場
単管足場は、直径48.6mmの鋼管を使用して組み立てる足場です。
現在のように鋼管が主流となる前は、丸太が使用されていました。
この足場では、単管にクランプと呼ばれる金具を接続し、さらにボルトで締め付けて組み立てを行います。
欠点は、くさび式足場や枠組足場と比べると、組み立てや解体にやや時間がかかることです。
その反面、足場の形状の自由度が高く、他の足場が使用できない狭小地でも組み立てが可能です。
組み立て自体は比較的簡単であり、部材はホームセンターでも入手可能なため、DIYで使用する人も多いです。
1-4.吊り足場
吊り足場は、支持方法が他の足場とは異なり、上から吊り下げて組み立てるタイプの足場です。
構築物の鉄骨の梁などから支持を取って、吊り下げた作業床を支えます。
橋梁やプラントなど、足場を下から組み上げるのが困難な場所に設置できるのが特徴です。
ただし、吊り足場は他の足場に比べて設置の難しい足場であるため、高さにかかわらず「足場の組立て等作業主任者」の選任が必要です。
また、吊り足場は「吊り枠足場」と「吊り棚足場」に大別され、状況に合わせて使い分けられています。
1-5.移動式足場
移動式足場は、キャスター(車輪)が取り付けられた可動式の足場です。
一度組み上げてしまえば容易に移動させられるため、効率的な施工が可能です。
作業床は平らで広く、安全な作業が行えます。
さらに、高さの調整も可能であり、天井や壁などの内装の仕上げ工事に適しています。
ただし、勝手に動いてしまわないよう、作業中はブレーキをかけておかなければなりません。
多くの移動式足場は、転倒を防止するために「アウトリガー」と呼ばれる補助用の支柱を立てて固定します。
中央ビルト工業の1600幅ローリングタワーは、作業床の高さが5400ミリメートルまでであれば、
キャスターを固定すればアウトリガーによる固定は必要ありません。
移動後、すぐに作業が行えるため、作業性に優れています。
移動式足場を使用する際は、作業者が乗った状態での移動は避け、
足場の上では脚立やはしごを使用しないようにするなど、
さまざまな注意点を守る必要があります。
2.足場の規格について
各建築現場の状況に対応するさまざまな種類の足場がありますが、
それぞれの足場には規格が定められています。
異なる種類の足場はもちろん、同じ種類の足場であっても、
規格が異なる部材を混在させて使用することはできません。
ここでは、足場の規格について説明します。
2-1.足場のサイズ規格とは
足場には、インチ規格とメーター規格という2種類の規格があります。
インチ規格とは、主にアメリカやイギリスなどの海外で使用されている規格です。
1インチは25.4ミリメートルで、建地のピッチは最も長いもので1829ミリメートル、短いもので610ミリメートルとなります。
一方のメーター規格は、国際単位系(SI単位系)を採用したもので、日本をはじめとする多くの国で使用されています。
メートル単位で設計された足場は数字のキリがよく、現場での利用が容易なため、
国内の現場で足場を使用する際は、メーター規格が適切です。
2-2.足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方
足場にはメーター規格とインチ規格があることを説明しました。
足場のサイズ規格が2種類ある理由は、中高層ビルやマンション、
戸建て住宅などの幅広い場面で使用される枠組足場が、当初アメリカから輸入されていたためです。
アメリカは長さの単位がインチであるため、輸入された足場もインチ規格のものでした。
国内で使用されているメートル単位とは異なりますが、枠組足場が軽量かつ高い強度で組み立てやすかったことから、
多くの現場で使用されました。
その後、メーター規格の枠組足場が販売されるようになり、サイズ規格が異なる2種類が市場に流通するようになりました。
同じ枠組足場ではありますが、サイズ規格が異なるものを混在させて使うことはできません。
インチ規格とメーター規格は、実際に長さを計測することで区別できます。
見た目だけでは区別が難しいため、足場部材が混在しないように管理する必要があります。
日本の建物はメーター規格で建てられているため、インチ規格の足場は不要ではないかと思う方もいるかもしれませんが、
実は国内にもインチ規格の建物があります。それは主に輸入住宅です。
輸入住宅産業協会では、「海外の設計思想に基づき、資材別またはパッケージで輸入し、
国内で建築される住宅」を輸入住宅と定義しており、日本の建築物にはない特徴が見られます。
代表的なものとしては、2×4(ツーバイフォー)や2×6(ツーバイシックス)と呼ばれ、
面と面を合わせて建てる「パネル工法」が挙げられます。
日本の建築物は柱や梁で構成する「従来工法」で建てられているのに対し、
輸入住宅は「パネル工法」が一般的となっています。
「在来工法」に対する「パネル工法」のメリットとしては、間取りの自由度が高く耐震性が高いという点があります。
さらに気密断熱性が高く、省エネ性能に優れています。
これらのメリットから、輸入住宅を選ぶ人もいるのです。
そのため、輸入住宅を建てる際にインチ規格の足場が使われることがあります。
3.まとめ
今回は、足場の種類とサイズ規格について解説しました。
足場の選択は、どのような工事をするのかによって大きく変わります。
足場メーカーの技術情報を確認して、工事内容に適した足場の種類とサイズ規格を選びましょう。