足場の種類が枠組足場の場合、決まった資材を準備すれば、工具などを使用せずに組み立てることができます。
くさび緊結式足場であれば、梁となるパイプの両端にある「くさび」と呼ばれる突出部を建地の「コマ」にはめ込み、
ハンマーで打ち込み緊結して組み立てます。
どちらの足場も、組み立て・解体を容易に行えるため、多くの工事現場で利用されています。
しかし枠組足場やくさび緊結式足場は、規格で寸法等が決められており、
複雑な形状の土地や狭小地での使用には適していません。
自由度の高い足場を組む場合は、単管足場を使用します。
単管足場は、ラチェットレンチやインパクトレンチを使用し、
単管パイプと単管クランプを組み合わせることで自由度の高い足場を組むことができます。
そこで今回は、自由度の高い足場を組むために必要な単管クランプについて解説します。
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▼ 目次 |
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1.単管クランプとは |
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2. 一般的な単管クランプの特徴 |
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3. 単管クランプの種類 |
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3-1. 直交型クランプ |
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3-2. 自在型クランプ |
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3-3. 3連クランプ |
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3-4. 垂木止めクランプ |
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3-5. 板止めクランプ |
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4. 単管クランプを使う時の注意点 |
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4-1. 逆さクランプに注意! |
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4-2. 締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用 |
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4-3. 単管クランプカバーで作業者を保護 |
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5. まとめ |
1.単管クランプとは
単管クランプとは、足場の骨格となる単管パイプを緊結するための金具です。
単管クランプには、ボルトとナットが付いており、
ラチェットレンチやインパクトレンチなどを使ってナットを締め付けることで単管パイプと緊結します。
単管クランプには、用途に合わせてさまざまな種類があります。
2.一般的な単管クランプの特徴
単管クランプは、単管パイプ同士をしっかりと固定できる構造になっています。
また単管クランプ自体の強度が弱くては足場を支えることができないため、強度の強い鉄製が一般的です。
ただし、そのまま屋外で使用すると雨などによって腐食してしまうため、腐食予防としてクロメートメッキが施されています。
クロメートメッキは装飾用のメッキではありませんが、薄い金色に近く、新品の製品には光沢があります。
緊結する単管パイプを簡単に把持できるよう、単管クランプにはボルトとナットが付いています。
単管パイプに取り付ける際は、ナットを緩めてボルト部を開き、そこに単管パイプを挟み込むことができます。
その後、インパクトレンチなどを使ってナットを締め付けて単管パイプを固定します。
3.単管クランプの種類
単管クランプは用途によってさまざまな種類があります。
ここでは、単管クランプの種類について説明します。
3-1.直交型クランプ
直交型クランプは、単管パイプを直角に緊結するために使用します。
足場工事で最も使用されている単管クランプで、単管パイプを直角に組むことができ、強い強度を得られます。
足場1スパンの積載荷重が400キログラムに規制されているところ、
単管クランプの許容荷重は500キログラムのため、十分耐えることができます。
3-2.自在型クランプ
自在型クランプは、単管パイプの角度を自由に調整できるものを指します。
自在型クランプは直交型クランプとは異なり、2つのクランプがつながっているだけで角度は固定はされていません。
そのため角度を自由に調整できることがメリットですが、
自在型クランプ単体の許容荷重は350キログラムと、直交型クランプと比べて低くなります。
自在型クランプを使用する場合は、足場の許容荷重に影響がないか、注意が必要です。
3-3.3連クランプ
3連クランプには、単管パイプを把持するクランプが3つ連結されています。
直交クランプのように直角に固定できるタイプと、自在クランプのように角度を調整できるタイプがあります。
1本の建地に対して足場用の単管パイプを2本設置する場合などには、
3連クランプを使用することで、足場用のパイプを平行に組むことができます。
3-4.垂木止めクランプ
垂木止めクランプは、単管パイプと木材を固定するためのものです。
単管足場では、自由度の高い足場を組むために、部材の一部に木材を使用することがあります。
木材は、工事現場での加工が容易で、垂木止めクランプに直接ネジで固定することができます。
垂木止めクランプの種類にも、直交タイプや平行タイプ、自在タイプなどがあります。
3-5.板止めクランプ
板止めクランプは、単管クランプに木の板を固定するために使用します。
留め金部分がコの字になっているため、一般的なコンパネなどの厚さ12ミリメートルの板材を挟み込めるようになっています。
4.単管クランプを使う時の注意点
自由度の高い足場を組むことができる単管クランプですが、
使用時にはいくつかの注意点があります。
ここでは、具体的な注意点について説明します。
4-1.逆さクランプに注意!
単管クランプはその構造から、どのような方向にも取り付けることができます。
建地の単管パイプに取り付ける場合、締め付けるボルトがどの向きにあっても、クランプの強度に影響はありません。
しかし、横さんの単管パイプを取り付ける場合は、ボルトの向きに注意しなければなりません。
締め付けるボルトが横さんの単管パイプの下側になってしまうと、横さんにかかっている力が加わることになります。
単管クランプのボルトは単管パイプを締め付けるためのものなので、横さんからの力が加わると、ボルトに余計な負荷がかかります。
ボルトに負荷がかかり続けると、ナットが緩んでくる可能性があります。
その結果単管クランプが開いてしまった場合に、ボルトが下側にあると、
それまで把持していた単管パイプが落下するかもしれません。
ボルトを下側に取り付けることを逆さクランプといい、単管クランプを設置する場合は、
この逆さクランプに注意しなければなりません。
4-2.締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用
単管クランプを取り付ける際は、適切な工具を用意する必要があります。
単管クランプを締め付ける工具としてよく利用されているのが、ラチェットレンチです。
ラチェットレンチは、工具にラチェットと呼ばれる機構が組み込まれており、
回転方向を一方向に制限することができます。回転方向を一方向にすることで、連続的に締め付け作業ができます。
回転方向の切り替えはレバーで行えるため、ナットを緩める時にも同じように使用することができます。
単管クランプの設置・解体作業をする場合は、17×21サイズのラチェットレンチを準備するとよいでしょう。
ラチェットレンチよりも効率的に作業ができる工具として、インパクトレンチがあります。
インパクトレンチは、モーターを使用した電動工具で、ラチェットレンチよりも短時間で楽に、
ナットの締め付けや取り外しを行うことができます。
インパクトレンチは内部にハンマーと呼ばれる打撃機構が組み込まれているのが特徴で、
これにより締める・緩めるといった作業がスムーズになります。
現在主流となっているバッテリー方式のインパクトレンチを使用する場合は、
作業開始前にしっかり充電しておきましょう。
4-3.単管クランプカバーで作業者を保護
単管クランプを組んだあとは、カバーを取り付けましょう。
組んだだけの状態では、単管クランプの部分が単管パイプから突き出たままです。
足場は多くの作業者が使用するため、突き出た部位があると、そこに引っかかったりぶつかったりすることがあります。
重い工具や荷物を運ぶことの多い作業者が単管クランプにぶつかると、当たり所が悪ければ、ケガをしてしまう可能性があります。
法的な設置義務はありませんが、作業者を守るためにも、単管クランプカバーを取り付けましょう。
5.まとめ
今回は単管クランプについて解説しました。
単管クランプの種類と特徴を理解することで、自由度のある足場が組めるようになります。
また、単管クランプを使用して足場を組む際は、
逆さクランプやケガに注意して、安全に取り組みましょう。