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コラム

2023.05.22
コラム
足場の層間ネットとは?特徴や設置基準も解説
建築現場の高所作業で大切なのが、落下防止対策です。
作業者はもちろん、道具や材料などの落下も防止しなければなりません。

そのため、高所作業の足場には国の法律で落下防止対策が決められています。
(安衛則537条及び、安衛則563条参照)
 

今回は落下防止対策の中でも、物の落下防止措置である層間ネットについて説明します。
 


▼ 目次
 1.足場の層間ネットとは
   2.  足場の層間ネットの特徴
       2-1.  素材
     2-2.  結び方
     2-3.  使用期限
   3.  安全ネットの設置基準は?
     3-1.  設置基準
     3-2.  間隔や高さの算出
   4.  まとめ


1.足場の層間ネットとは


労働安全衛生規則で「防網」とも呼ばれる層間ネットは安全ネットの一部で、
主に物の落下防止措置のために設置するものです。

高さが2メートル以上の場所で作業を行う場合は、足場を組んで作業床を設けなければなりません。
また架設通路には手すりや中さんの設置、足元には高さ15センチメートル以上の幅木を設置します。

さらに物体が落下した場合に備え、それらを受け止めるためにメッシュシート又は層間ネットを設置します。
落下による事故を防止するために、2重3重で対策を行わなければなりません。

足場と躯体の間に張る小幅のネットである層間ネットは、物の落下防止措置だけでなく、
作業中に手すり、中さん、幅木等を外さなければいけない場合や手すり等が設けられない箇所へ措置するものでもあります。
しかし、手すりや中さん、幅木等に直接代わるものではありませんので注意しましょう。 

2.足場の層間ネットの特徴


物の落下防止措置のため層間ネットは欠かせないものです。
ここでは層間ネットの特徴について説明します。

2-1.素材


層間ネットに使われる素材として、ナイロンやポリエステルがあります。
どちらの材料も層間ネットとして十分な強度を有していますが、
特にポリエステルのネットは、耐候性と耐衝撃性に優れているとされています。

屋外で使用されることの多い層間ネットには、耐水性や耐候性が求められますが、
ナイロンもポリエステルも屋外での使用に適した材料です。

2-2.結び方


層間ネットの結び方には有結節と無結節、ラッセルがありますので、それぞれを紹介します。

■ 有結節
有結節は糸の交差している部分に結び目があるネットで、無結節は結び目が無いネットです。
有結節のネットは強度がある反面、結び目があるためネットを束ねる際にごわつきがあります。

■ 無結節
無結節は網糸の交差している部分に結び目が無いため、網糸を作る際に網目も同時に形成できるため生産性が高いのが特徴です。
また、糸の交差部に結び目が無いので、ネットを束ねる際にごわつきが少なく、かつ軽量で使用しやすいです。

■ ラッセル
無結節と同じ結び目の無いネットで、ラッセルと言う種類があります。
ラッセルはレース状に編み込まれたネットで、ラッセルネットとも呼ばれ多くの場所で使われています。

2-3.使用期限


ナイロンやポリエステルは、石油を原料とした合成繊維であるため、
製造されてから一定の時間が経つと劣化します。そのため層間ネットには、使用期限が決められています。
一般的な層間ネットの使用期限は製造年月から1年です。

製造年月については、製品ラベルから確認できます。使用期限が過ぎた層間ネットは、
安全性が確保されませんので必ず交換するようにして下さい。

3.安全ネットの設置基準は?


層間ネットを含む足場の安全ネットは、正しく設置しないと落下防止対策になりません。
そのため、一般社団法人仮設工業会では『安全ネットの構造等に関する安全基準と解説』として、
墜落による危険を防止するためのネットの設置基準を定めています。

ここでは、落下対策におけるネットの設置基準について説明します。


3-1.設置基準



ネットの設置基準として決められているのが、落下高さ、ネット下部のあき、ネットの垂れです。

■ 落下高さ
落下高さとは、墜落のある作業床からネットの支持面までの垂直距離です。
落下高さまでの距離が長いと落下時の衝撃が大きくなるため、作業床から離れすぎないように設置します。

■ ネット下部のあき
ネット下部のあきは、設置したネットの支持面から下部にある床面などまでの垂直距離です。
落下物をネットで受けた時に、ネット下部の床面などに衝突を回避するために必要な距離を確保する必要があります。

■ ネットの垂れ
ネットの垂れとは、設置したネットの最低部からネットが取り付けられている支持面までの垂直距離のことです。設置した際に、ネットが垂れすぎていないように設置します。
 

3-2.間隔や高さの算出



算出に用いる記号を説明します。

正方形ネットの場合は一辺の長さを、長方形ネットの場合は短辺の長さを記号Lで表します。
ネットの支持間隔を記号Aで表します。ネットは紐によって足場などに結び付けます。
支持間隔とは固定物に結び付けた紐の間隔のことです。

■ 落下高さの算出式
落下高さ(H1)の算出式は次の通りです。
単体ネットの場合:H1≦0.25×(L+2A)
複合ネットの場合:H1≦0.20×(L+2A)
ただし、A≦Lの範囲ではA=Lとして計算します。

単体ネットとは、1枚のネットのこと。複合ネットとは、単体ネットを複数つなぎ合わせたネットのことです。

落下高さをH1以下にすることで作業者が墜落した場合、人体にかかる加速度を147m/s2以下にでき、
落下者への衝撃を減らせます。

■ ネット下部のあきの算出式
ネット下部のあき(H2)の算出式は次の通りです。
H2≧0.85×(L+3A)÷4
ただし、A≦Lの範囲ではA=Lとして計算します。

■ ネットの垂れの算出式
ネットの垂れ(S)の算出式は次の通りです。
S≦0.2×(L+2A)÷3

■ 算出例
実際に以下の条件で算出をしてみます。
・使用するネットのサイズ:4m×8mの単体ネット(L=4m)
・ネットの支持間隔:2.88m(A=2.88m) 
※A≦Lのため、A=LとなりAは4mとなります。

落下高さ≦0.25×(L+2A)=0.25×(4m+2×4m)=3m
ネット下部のあき≧0.85×(L+3A)÷4=0.85×(4m+3×4m)÷4=3.4m
ネットの垂れ≦0.2×(L+2A)÷3=0.2×(4m+2×4m)÷3=0.8m

計算の結果、落下高さは3m以下、ネット下のあきは3.4m以上、ネットの垂れは0.8m以下となります。
実際に設置した状態を考えると、落下高さとネットの垂れは設置方法によって、最小に抑えられますが、
ネット下のあきが確保できるかがポイントです。

ネットに作業者が落下した場合、ネットは設置してある高さから落下の衝撃を受けながら下がります。
そのためネットが下がっても、下の床や機械などにぶつからないスペースを確保しなければなりません。

しかし屋内の足場などの場合、ネット下のあきが確保できないこともあるでしょう。
そのような場合は、ネットのLサイズを小さくするなどの対応が必要です。
工事現場の状況に合わせてネットを選択しましょう。
 

4.まとめ



建設現場では高所作業を行うために足場を組みますが、作業時の墜落対策を万全に行う必要があります。
さらに万が一、物が落下した時の対策も重要です。

ネットを設置する場合は設置基準がありますので、設置基準を守って利用しましょう。

足場の層間ネットとは?特徴や設置基準も解説