建設現場では業界特有の専門用語があります。高所作業などリスクの高い現場で、コミュニケーションに問題があると、ミスや事故の原因になりかねません。
とは言うものの、経験が浅い人にとっては専門用語を覚えるまでに時間がかかるでしょう。そこで今回は、足場業界で使われている専門用語について説明します。
|
▼ 目次 |
|
1.足場業界でよく使われる専門用語20選 |
|
1-1. アウトリガー |
|
1-2. 朝顔 |
|
1-3. 犬走り |
|
1-4. インパクト |
|
1-5. ウインチ |
|
1-6. 越境(えっきょう) |
|
1-7. 親綱 |
|
1-8. 壁つなぎ |
|
1-9. 仮囲い |
|
1-10. キャットウォーク |
|
1-11. 狭小地(きょうしょうち) |
|
1-12. くさび緊結式足場 |
|
1-13. 現調 |
|
1-14. 工期 |
|
1-15. 子方 |
|
1-16. 下げ振り |
|
1-17. 駄目 |
|
1-18. 談合 |
|
1-19. ばらし |
|
1-20. 屋根足場 |
|
2.まとめ |
1.足場業界でよく使われる専門用語20選
足場と言っても、いくつかの種類があります。まずは、足場の種類について説明します。
足場業界では、鳶と呼ばれる職人が作業を行っています。記録上、鳶職の歴史は日本最古の建築物である、法隆寺建立の時代までさかのぼります。約1400年前からある職業です。
鳶職と聞くと、気性が荒く粗暴な人が多いという印象を持つ人もいるかもしれません。しかし危険な高所で作業を行うため、ちょっとしたミスや油断が重大事故につながる可能性があり、常に緊張感を持って作業を行っています。そのため、つい言葉が荒くなることもあるでしょう。
足場業界では、鳶職とのコミュニケーションが重要となります。次からは足場業界で鳶職がよく使っている専門用語20個を厳選して説明します。
1-1.アウトリガー
アウトリガーとは足場やクレーン車、脚立など、高さがあってバランスの悪い物が転倒しないために支える部材のことです。足場の現場では、特に移動式足場であるキャスター付きローリングタワーで使われています。
アウトリガーを使用する場合は転倒防止のため、先端の支柱が地面と隙間ができないようにしっかり設置します。隙間を作らないためには地面に直接設置するのではなく、一定の面積のある敷板の上に設置するのがポイントです。
1-2.朝顔
朝顔とは足場からの落下事故を防止するため、足場側面に上向きに傾斜させて取り付ける防護柵のことです。建設現場が道路や歩道などに隣接している場合に、落下物などから歩行者を保護する役割を果たします。
上向きに傾斜しているので、落下物が朝顔内に留められるのが特徴です。設置には道路占用の許可が必要で車道上は5m以上、歩道上は4m以上の高さを設ける必要があります。
1-3.犬走り
犬走りとは建築物の周囲にある、幅600mm以上の隙間のことです。犬走りにはコンクリートで固めたり、砂利を敷き詰めたりする2種類の方法があります。犬走りの由来は、犬1匹が通れるくらいの細い道とされています。
犬走りの目的はもともと日本家屋には雨どいが無かったため、雨の跳ね返りから建物を保護したり、建物の周りに雑草が生えないようにしたりすることです。
工事する際には足場の設置に使用するので、事前に犬走りを確認することが重要です。
1-4.インパクト
インパクトとはインパクトドライバーの略称で、ビスやボルトを締めたり緩めたりする時に使う電動工具です。インパクトは、モータにハンマーと呼ばれる打撃する部品が取り付いており、ハンマーが打撃することで、大きなトルクが得られます。
打撃による強い衝撃でネジを締めつけたり、緩めたりできるためインパクトドライバーと呼ばれています。
1-5.ウインチ
ウインチとはワイヤーをドラムに巻き付ける構造で、動力によって物を上げ下ろしする機械です。足場組み作業では、重い足場資材の荷揚げ荷下ろしに使用されます。
1-6.越境(えっきょう)
越境とは、敷地の境界線を越えることです。建設工事で足場を設置する場合、最低でも50cm程度の幅が必要です。敷地境界までの幅が50cm未満しか無いと、一般的な足場が設置できません。
必要な幅が確保できない場合は、越境して足場を組む必要があります。もし越境する場合は、近隣の敷地を使用させてもらう必要があります。
近隣の敷地使用については民法209条に明記されており、隣地の利用を請求できます。ただし、隣人の承諾が無ければ立ち入ることもできません。
1-7.親綱
親綱とは高所作業において作業者の墜落を防止するため、墜落制止用器具のフックを掛けるロープのことです。
1-8.壁つなぎ
壁つなぎは足場の倒壊や変形を防ぐため、建築物と足場を連結する金具のことです。金具には種類があり、躯体打ち込みインサートや先付けプレートアンカーなどがあります。
1-9.仮囲い
仮囲いとは、工事期間中に建築現場の外周を囲う仮設の塀のことです。仮囲いを設置する目的は、工事期間中の安全確保、第3者災害の防止、盗難防止、騒音・塵挨の飛散防止などがあります。
1-10.キャットウォーク
キャットウォークとは、高所に設置された設備などのメンテナンス用に施工された点検通路のことです。劇場や体育館などは、照明やその他の設備が高所にあることが多いため、点検や修理を行うためにキャットウォークを建設時に設置します。
1-11.狭小地(きょうしょうち)
狭小地とは、20坪以下の狭い土地のことです。しかし足場の現場では「建物と建物の間の現場」のことを指します。狭小地に建物を建てる場合は、敷地境界ギリギリまで建物を建てることが多いため、足場を立てるスペースが狭くなり、足場組立ての難易度が高くなります。
1-12.くさび緊結式足場
くさび緊結式足場とは、支柱(建地)にコマと呼ばれる緊結部を一定間隔に備えた鉄パイプ(鋼管)に、くさびの付いた鉄パイプをハンマーで打ち込んで緊結して組み立てる足場のことです。
1980年に株式会社ダイサンが日本で初めて販売した足場で、ビケ足場と呼ばれることもあります。くさび緊結式足場は、主に中高層建築の施工に採用されています。
1-13.現調
現調とは現地調査の略称で、現場を下見する意味で使われます。現調は工事の依頼者から送付された画像やGoogleマップからある程度把握できますが、実際に現場を下見しないとわからないことも多くあります。
1-14.工期
工期とは、工事が行われる期限や期間のことです。建設工事の工期は契約時に決められ、天候に左右されることがあるため、ある程度余裕を持った期間が設定されています。
1-15.子方
職長の指示に従って作業を行う鳶職人のことです。
1-16.下げ振り
下げ振りは糸の先に付けた重りを垂らして、柱や壁が垂直に施工されているか調べる道具です。糸と重りだけの道具ですが、簡単に垂直かどうかを調べることができます。
1-17.駄目
工事後に見つかった不具合のことで、不具合を直す工事を駄目工事と言います。
1-18.談合
談合とは競争入札がある公共工事などにおいて、競合する事業者同士が事前に入札金額を話し合って協定を結ぶことです。過度の競争を回避することや、高い価格で落札するために行われる行為です。
談合は談合罪という刑罰があり、刑法96条で3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方が課せられます。
1-19.ばらし
ばらしとは、足場を解体することです。足場以外にも、建物基礎の型枠をばらす作業などもばらしと言います。
1-20.屋根足場
屋根足場とは、屋根の上に設置する足場のことです。マンションのように屋根が平らであれば足場を組む必要はありません。傾斜のある屋根で作業する場合には足場を設置します。
2.まとめ
足場業界でよく使われる専門用語について解説しました。専門用語が多くあり、用語を把握していないと、作業中やミーティングの時の会話を理解するのが難しくなります。
仕事中のコミュニケーションを円滑にするためにも、足場職人を目指す人、足場職人になったばかりの人は、専門用語の勉強をしておきましょう!