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コラム

2023.03.13
コラム
足場の組立て等特別教育とは?資格の取得方法も解説
建設工事では、基本的に作業床となる足場の確保が必要になります。足場からの転落・墜落による労働災害を防ぐためにも、作業者は足場や作業方法についての知識、労働災害に関する知識などを知っておかなければなりません。

労働災害が多発した背景から、平成27年に労働安全衛生規則の一部が改正され、「足場の組立て等特別教育」が追加されました。

そこで今回は「足場の組立て等特別教育」について詳しく紹介していきます。講習内容や資格取得までの流れ、また「足場の組立て等作業主任者技能講習」との違いについても確認します。

▼ 目次
 1.足場の組立て等特別教育とは
 2.足場の組立て等特別教育の資格を取得するには
  2-1.  受講内容
  2-2.  受講資格
  2-3.  受講料
    3.足場の組立て等作業主任者技能講習とは違う
  3-1.  足場の組立て等作業主任者技能講習とは
  3-2.  足場の組立て等特別教育との違い
 4.まとめ


1.足場の組立て等特別教育とは



労働安全衛生法第59条の規定により、事業者は労働者が特定の危険性を伴う業務を行う場合に、安全又は衛生のための教育を行わなければなりません。

足場を使う高所作業における災害や死亡事故が後を絶たない中、労働安全衛生規則が一部改正され「足場の組立て等特別教育」が追加されました。

平成27年7月1日より、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務を行う場合は、必ず特別教育を修了しなければなりません。しかし地上や堅固な床上における補助作業や、足場上を歩行するだけの場合は対象ではありません。
 
「足場の組立て等特別教育」を作業者に受講させていない、または無資格の作業者に足場の組み立て作業を行わせるなどの行為が発覚した場合、事業者に6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
 

2.足場の組立て等特別教育の資格を取得するには





次からは「足場の組立て等特別教育」の受講内容や受講資格、受講料について説明します。


2-1.受講内容


「足場の組立て等特別教育」のカリキュラムと講習時間は下記のとおりです。


 
出典:建設業労働災害防止協会「足場の組立て等の業務に係る特別教育について」 


講習は学科のみで、実技はありません。

カリキュラムの合計時間は一般的に6時間ですが、平成27年7月1日の足場特別教育が義務化された時点で足場作業に従事していた方は、3時間の講習になります。ただし3時間の講習を受ける場合は、経験証明が必要です。

また下記に該当する方は、特別教育を省略することができます。

・足場の組立て等作業主任者技能講習を修了している方
・建築施工系とび科の訓練(普通職業訓練)を修了した方、居住システム系建築科又は居住システム系環境科の訓練(高度職業訓練)を修了した方など足場の組立て等作業主任者技能講習規程(昭和 47 年労働省告示第 109 号)第1条各号に掲げる方
・とびに係る1級又は2級の技能検定に合格した方
・とび科の職業訓練指導員免許を受けた方
 

2-2.受講資格


「足場の組立て等特別教育」に関して、受講資格はありません。また実務経験が無くても受講できます。

ただし年少者労働基準規則によって、18歳未満の方は高さ5メートル以上の場所で、墜落により作業者が危害を受けるおそれのある業務や、足場の組立て・解体又は変更の業務に就くことはできません。

そのため18歳未満の方が「足場の組立て等特別教育」を受講して修了しても、修了証は発行されません。また地上又は床上における補助作業の業務しか就けませんので注意しましょう。


2-3.受講料


「足場の組立て等特別教育」の受講料は開催している各協会や団体などによって異なりますが、テキスト代込みで10,000円程度で受講できます。また、WEB講座でeラーニング形式による受講も可能です。

WEB講座の受講費用は8,000円程度で、一般的な講習会の費用と変わりはありません。講習会場へ行くのが難しい方や最短で受講を修了したい方はWEB講座を利用すると良いでしょう。作業者に対してまとめて特別教育を受講させたい場合は、社内研修として講師を派遣するサービスもあります。

特別教育を修了した後に、教育を実施した機関から修了書が発行されます。事業者は、作業者が修了した教育履歴を管理しなければなりません。修了証の多くは紙で発行されることが多いです。修了証は事業者が保管するように義務付けられています。


3.足場の組立て等作業主任者技能講習とは違う



 
「足場の組立て等特別教育」と並んで聞く言葉に「足場の組立て等作業主任者技能講習」があります。次からは、この2つの違いについて解説します。


3-1.足場の組立て等作業主任者技能講習とは


「足場の組立て等作業主任者」は、労働安全衛生法により定められた国家資格です。高さ5メートル以上の足場の組立てや解体、変更の作業を行う場合は、作業主任者を1名選任しなければなりません。

作業主任者は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した方の中から選びます。選任された作業主任者は作業者に対して、安全に作業ができるように作業場の管理や作業指示、安全管理のための技能などを指導します。

事業者は、選任した作業主任者の氏名と作業内容を記載したものを作業場の見やすい箇所に掲示し、作業者に周知しなければなりません。また作業主任者を2名以上選任した場合は、それぞれの職務の分担を明確にして掲示しましょう。


3-2.足場の組立て等特別教育との違い


足場の組立て等特別教育と足場の組立て等作業主任者技能講習との違いは、「作業をする人」「作業者の指揮をとる人」と受講対象者が異なることです。

「足場の組立て等作業主任者技能講習」は作業場における管理・指導者のための国家資格を取得する講習です。技能講習会で行われる修了試験に合格しないと資格を取得できません。

受講資格は満21歳以上で足場の組立てや解体、変更に関する作業に3年以上従事した経験を有する場合、満20歳以上で大学、高専、高校、中学で土木、建築または造船に関する学科を専攻しており、その後2年以上足場作業に従事した経験がある場合のいずれかになります。

一方、「足場の組立て等特別教育」は作業者に必要な知識やルールを学ぶための教育です。足場の組立て、解体または変更作業に関わるすべての人が受講する必要があり、6時間のカリキュラムを受講すれば修了証が発行されます。

このように「足場の組立て等作業主任者」と「足場の組立て等特別教育」は、資格取得の対象者や目的が異なります。両者の違いを理解して、必要に応じた資格を取得しましょう。

4.まとめ



 
安全で効率的に建設工事を行うためには、適切な足場が必要です。その足場を組み立てる全ての作業者は、正しい知識で作業をしなければなりません。

また作業者に特別教育を受講させることは、事業者の責務でもあります。

「足場の組立て等特別教育」で学ぶ内容をしっかりと理解し、足場の作業における、転落や墜落といった事故の防止に努めましょう。
 
足場の組立て等特別教育とは?資格の取得方法も解説