1950年代から1970年代までの高度経済成長期時代に、政府や企業は多くの資金を投入して、多くの建築物をつくってきました。大量につくられた建築物は、築50~60年となり老朽化が進んできています。
建造物の多くが建て替えや大規模補修時期を迎えています。解体や建設工事において、高所作業は必ずと言っていいほど必要な作業です。高所作業を安全かつ効率的に行うために仮設足場を設置する必要があります。
単純に足場と言っても、数メートルのものから数十メートル以上のものまであります。そこで今回は、足場設置のルールについて詳しく解説していきます。
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▼ 目次 |
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1.足場のルールはなぜ決められているのか |
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2.労働安全衛生法とはどのような法律か |
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2-1. 足場設置箇所について |
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2-2. 足場使用時の措置について |
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2-3. 足場材について |
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2-4. 足場点検について |
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2-5. 足場技能講習について |
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3.足場利用の注意点 |
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4.まとめ |
1.足場のルールはなぜ決められているのか
建設作業などで組まれる足場は、事故を防止するためにルールが決められています。厚生労働省が公表している「令和3年労働災害発生状況」によると、建築業の労働災害における死亡者数は、全産業の中で最も多い状況です。
また、死亡災害の25%が転落・墜落によるものです。この傾向は災害統計を取り始めたときからほとんど変わりません。建築業で転落・墜落事故が発生するのは、高所での作業が多いからです。
参考:
厚生労働省「令和3年労働災害発生状況」
高所作業において転落や墜落する原因は、適切な足場の設置・利用をしていないことです。例えば一時的な作業だからといって足場を設置せずに、付近の出っ張りに足をかけて作業することで、転落や墜落事故が起こるのです。
厚生労働省は足場からの墜落や転落事故を防止するため、平成21年6月に労働安全衛生規則を改正し、「足場・架設通路及び作業構台からの墜落・転落防止措置等」が見直されました。
平成27年7月1日から施行され、足場からの墜落防止対策が強化されています。このように労働安全衛生法などによって、足場に関するルールが決められているのです。
2.労働安全衛生法とはどのような法律か
労働安全衛生法が制定された目的は、職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境を形成することです。
具体的には、下記について定められています。
・事業者等の責務
・労働者の協力
・建設工事の注文者等への配慮
建設業に関わる全ての人達は、労働安全衛生法に沿って計画的に労働災害防止に取り組む必要があります。
高所作業において、適切な足場を設置することは事業者の責務であり、労働者は足場を正しく使用することに協力しなければなりません。
2-1.足場設置箇所について
足場の設置については労働安全衛生規則第563条で、「高さ2m以上の作業場所には、作業床を設けなければならない」とされています。
また、足場の作業床については、同法第563条で、下記のように決められています。
・幅は40cm以上
・床材間の隙間は3cm以下
・床材と建地との隙間は12cm未満
さらに墜落防止の措置として、労働者が墜落する危険のある箇所には足場の種類に関係なく、たわみが生じない強度の床材を使用する必要があります。また著しい損傷や変形、腐食がないかも確認して下さい。
わく組足場は、交さ筋かいと以下のいずれかを設ける必要があります。
・高さ15cm以上40cm以下の桟
・高さ15cm以上の幅木
・これらと同等以上の機能を有する設備
・手すりわく
2-2.足場使用時の措置について
足場を使用する際は、墜落防止のため「墜落制止用器具」を着用します。以前は「安全帯」と呼ばれていましたが、安全帯に含まれている胴ベルト型(U字つり)は墜落を制止する機能がないことから、改正後の現在ではハーネス型(一本つり)と胴ベルト型(一本つり)のみが「墜落制止用器具」として認められています。
原則として、墜落制止用器具はフルハーネス型を使用することになりますが、いくつか選定要件もあります。例えば高さ2m以上の作業床が設置できない箇所や、作業床の端・開口部などで手すり等が用意できない箇所の作業の場合は、特別教育の受講が必要になります。
また高さ6.75m以下で着用者が墜落時に地面に到達する可能性がある場合、「胴ベルト型(一本つり)」も使用できます。
しかし高さ6.75m以下であっても、5m以上の建設作業、2m以上の柱上作業等の場合にはフルハーネス型の着用が推奨されます。
2-3.足場材について
足場となる材料については、労働安全衛生規則第559条で著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならないとされています。
また鋼管足場に使用する鋼管は、「日本産業規格A8951(鋼管足場)に定める単管足場用鋼管の規格に適合するもの」でなければなりません。
木材の足場材を使用することは認められています。ただし特別な理由がない限り、強度が明確で変形や腐食に強い鋼管の足場材を使用した方が良いでしょう。
2-4.足場点検について
足場の点検については、労働安全衛生規則第567条に定められています。吊り足場を除く足場作業を行うときは、作業前に「足場用墜落防止設備の取り外し」と「脱落の有無」の点検をしましょう。異常を認めたときは、直ちに補修しなければなりません。
屋外に設置する足場は強風や大雨、大雪などの悪天候、台風や地震などの災害が発生した場合、入念に点検する必要があります。
なお、点検を行った場合は必ず点検結果を記録に残し、足場を使用する作業が終了するまで保存しなければなりません。
2-5.足場技能講習について
足場の組立てや解体、変更の作業に労働者を就かせるときは、特別教育の受講が必要です。ただし地上、堅固な床上での補助作業の場合は、特別教育を受講する必要はありません。
特別教育は6時間のカリキュラムで、「足場及び作業の方法に関する知識や工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識」などを学びます。
また、つり足場や張出足場、高さ5m以上の足場の組立てや解体、変更の作業を行う場合は、「足場の組立て等作業主任者」の資格を取得する必要があります。ただしゴンドラを使用するつり足場作業の場合は、足場の組立て等作業主任者の資格を取得する必要はありません。
講習会は各県で開催されています。開催情報は「
建設業労働災害防止協会」のホームページから確認できます。
3.足場利用の注意点
建築現場では、足場を組み立てる職人と足場を利用する職人に分かれます。足場を利用する職人は、足場を組み立てた職人を信じて高所作業を行います。
全ての人が安心して使用できる足場を組み立てることが求められるため、足場を組む前の計画が重要になります。
計画の段階から事故のリスクが高い「つり足場」などは、組立てや解体の高所作業が少なくなる設計が求められます。
また、足場は一度組んだら長期間利用されるため、作業前の点検を徹底することも忘れてはなりません。
4.まとめ
建設現場などでの足場組立のルールは、関連法令や省令で詳細に決められていますので、現場を管理する立場の人は一度確認しておきましょう。
法改正情報など、一覧で検索できます。ルールを守り、全ての従業員が安心して作業ができる環境を整える必要があります。
参考:
安全衛生情報センター