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  • 積算時に出てくる平米、立米とは?計算式や変換方法を解説
    建設工事の積算時に出てくる平米と立米について、それぞれの計算式や変換方法を知りたい方もいると思います。
    建設工事における積算は余計な出費を抑えるために重要な業務であるため、使われる単位の定義をしっかりと理解しておくことが大切です。

    本記事を読みそれぞれの計算方法を理解することで、素早く計算ができるようになるだけでなく、
    業務を効率的に進めることができるようになるでしょう。


    ▼ 目次
     1.平米の定義と計算式
       2.立米の定義と計算式
       3.平米から立米に変換する方法
       4.立米から平米に変換する方法
       5.建設工事における積算
       6.積算時に重要な歩掛
       7.  工事費用の種類
         7-1.  直接工事費
         7-2.  間接工事費
         7-3.  その他の費用
        8.  会社運営でも根幹となる積算業務
       9.  まとめ


    1.平米の定義と計算式

     

    平米は「平方メートル」あるいは「m2」とも表記され、国際的に使用されている面積の単位です。

    1平米は「タテ1m×ヨコ1m」の広さを表しています。

    「平方」は数を2乗することであり、日本ではかつてメートルのことを「米」と表記していたことから、
    「平方(2乗)」した「米(メートル)」として平米と表記されるようになりました。

    日常生活ではあまり一般的な表記ではなくなっていますが、建築・不動産業界では土地面積・建築面積・延べ床面積(建物面積)・
    専有面積などの広さを表す場合に、平米という表記が今でも使い続けてられています。

    また平米と同じように面積を表す単位としては、ほかに「坪」や「畳」があり、住宅の広さを表す際に使用されることが多いです。

    坪とは、日本古来の計量法である尺貫法の面積単位です。
    明治以降に国際的なメートル法が普及してきたことで廃止となりましたが、不動産業界では現在でも使用されています。

    1坪は約1.82mの正方形で、「1.82×1.82=3.31(m2)」で約3.3平米となります。

    同じく不動産業界で用いられている単位が畳です。
    1畳は地域によって異なっており、関西より西側の本間で1.82平米、関東より東側の江戸間で1.52平米となっています。

    西日本で暮らしていた人が上京した際に、同じ畳数なのに部屋が狭く感じるのもこの違いのためだといわれています。
    畳数を平米で換算する場合は、「1畳=1.62平米以上」と規定されています。
     
     

    2.立米の定義と計算式



    立米とは、「立方メートル」あるいは「m3」とも表記され、平米と共に建築業界では一般的に使用されている体積の単位です。

    1立米は「タテ1m×ヨコ1m×高さ1m」の体積を表しています。

    建設や土木の工事現場でコンクリート数量や土量を算出する際に使用され、
    何立米なのかをしっかり計算することによって余計な出費を削減することができます。

    3.平米から立米に変換する方法



    前述したように、平米と立米は異なる単位であるため、それぞれの単位に変換する方法があります。

    平米と立米の違いは「高さ」があるかないかで、その高さを乗算、除算することで変換することができるのです。

    具体例として、ある平面の短辺・長辺の長さが2mと4mだったとしましょう。
    この平面の面積は8平米です。さらに、この平面の高さを2m、3mとするときの体積はいくつになるでしょうか。

    空間の体積(タテ×ヨコ×高さ)は「面積(タテ×ヨコ)×高さ」で計算できるため、
    それぞれ「8平米×2m=16立米」「8平米×3m=24立米」のように計算されます。

    4.立米から平米に変換する方法



    今度は立米から平米に変換する方法を紹介します。
    先ほどの平米から立米に変換する場合では算出した平米数に高さを乗算しましたが、立米を平米に変換する場合は反対に除算をします。

    具体例として、ある空間の体積を40立米とし、高さを4m、5mとするときの面積について考えてみましょう。

    面積(タテ×ヨコ)=体積(タテ×ヨコ×高さ)÷高さで計算できるため、それぞれ「40立米÷4m=10平米」「40立米÷5m=8平米」となります。

    5.建設工事における積算



    積算とは、工事を行う前に歩掛に基づいて各工程の費用を予測し、
    それらを積み上げて工事全体にかかる費用を算出することです。

    建設工事はそれぞれ条件が異なるため、必要な費用も工事ごとに異なります。
    「施工を行う箇所の環境」「施工内容」「必要な作業員の数」などのさまざまな要因によって費用が変化するほか、
    不測の事態に備えたロス率なども考慮する必要があります。

    原価が一定ではない状況で赤字を出さないようにするためには、工事全体でどれくらいの費用がかかるのか、
    正確な積算を行う必要があります。

    6.積算時に重要な歩掛



    歩掛(ぶがかり)とは、一つひとつの作業を行うにあたって必要な手間を数値化したもののことをいいます。

    歩掛は作業員一人が8時間で行える作業の量を示しています。
    歩掛に労務単価を掛けることによって、労務費の算出が行えるようになります。

    同じ作業だとしても、新人とベテランとでは作業のスピードが異なることや、
    作業に求める質によっても労務費は変わってくるため、注意が必要です。

    7.工事費用の種類


    先ほど述べた歩掛は労務費のうちの一つで、赤字工事を減らすためにはほかにも算出しなければならない費用がたくさんあります。

    7-1.直接工事費


    直接工事費には「材料費」「労務費」「直接経費」の3種類があります。
    歩掛で紹介した労務費以外に、仕入れ価格や使用する量によって変わる材料費、特許使用料や水道光熱費、機械経費などが直接経費に該当します。

    塗装工事においては、材料の塗布量を算出する際に、先ほど紹介した平米の計算を使用して材料を塗布した面積の計算を行います。
    塗布した面積に塗圧を掛けることで塗布量がわかり、材料費の把握ができるのです。

    7-2.間接工事費


    間接工事費には「共通仮設費」「現場管理費」の2種類があります。
    機材などの運搬費や工事をするためにかかる準備費を共通仮設費といい、
    現場作業員の衣類や事務用品、自動車や工事に関する保険にかかる費用などを現場管理費といいます。


    7-3.その他の費用


    併せて「純工事費」と呼ばれる直接工事費と間接工事費以外にも工事管理費や工事の一時中断に伴う費用も発生します。

    また、会社を営むうえでは事務所の家賃や光熱費、広告宣伝費など、一般管理業務に関わる費用も発生するため、
    工事のたびに多くの計算をする必要があります。

    8.会社運営でも根幹となる積算業務

     
    積算は、設計図や仕様書から一つひとつの作業や材料を洗い出し、それぞれの費用を計算する業務です。

    積算の精度によって会社の利益や工事担当者の苦労が左右されるため、
    責任の重い業務ですが、その分やりがいも感じられる仕事です。

    積算がどんぶり勘定になってしまうと赤字の工事になってしまったり、
    反対に不当に利益を取りすぎてしまったりなど、会社の信頼にも大きく影響します。

    適切な積算を行えていれば、お客さんにきちんとした理由を説明でき、信頼関係の構築にもつながります。


    9.まとめ



    今回は建設工事の積算時に出てくる平米と立米について、それぞれの計算式や変換方法、また積算で扱う費用についても解説しました。
    平米と立米は「高さ」を乗算・除算することでそれぞれの単位に変換可能です。この計算は積算時に多く使用するため重要だといえます。

    本記事を参考に平米・立米の計算方法を理解し、素早く適切な計算で効率的に業務を進め、建設現場にかかる無駄な出費を減らしていきましょう。
  • 無足場工法とは?使われる状況とメリット・デメリットを解説
    外壁の補修を検討しているけれど、隣の建物と距離が近いために足場が組めず、悩んでいる方もいると思います。
    そのような場合におすすめしたい足場工法の1つに無足場工法があります。

    今回は、無足場工法が使われる状況や、メリット・デメリットを解説します。
    本記事を読むことで、近隣への影響に配慮した無足場工法を選択肢に入れられるようになるでしょう。
     


    ▼ 目次
     1.無足場工法とは
          1-1.  ロープアクセス
         1-2.  ゴンドラ作業
        2.  無足場工法はどんな場合に使われる?
         2-1.  隣家との距離が近い
         2-2.  隣家の敷地を貸してもらえない
       3.  無足場工法のメリット
           3-1.  足場費用のコストダウンと工期の短縮につながる
           3-2.  防犯上の心配がない
          3-3.  近隣や店舗への影響を最小限に抑えた工事ができる
       4.  無足場工法のデメリット
            4-1.  作業範囲が限られる
           4-2.  施工後の確認ができない
           4-3.  無足場工法に対応できる業者が少ない
        5.  まとめ


    1.無足場工法とは

     

    建物の補修工事や修繕工事を行う際に、足場を組み立てずに施工する方法を「無足場工法」といいます。
    無足場工法では建物の屋上に吊元となる器具を設置し、ロープやゴンドラを吊り下げて、作業員が上下左右に移動しながら作業を行います。

    無足場工法は高所での時間がかかる作業のように思えますが、ベテランの作業員が行うことで、
    仮設足場が組めない場所でも工期の短縮が可能です。

    仮設足場を設置する場合、雨などで足場が濡れることにより、足場上で滑って災害が起きる危険性がありますが、
    無足場工法にはその心配はありません。主に2種類の方法があるため、それぞれ解説します。


    1-1.ロープアクセス


    屋上に設置した器具と作業員が装着したフルハーネスをロープでつなぎ、作業箇所に下降する方法をロープアクセスといいます。
    ロープに体を預けて宙吊り状態で高所作業を行うため、一見危険なように思えますが、比較的安全性は高いです。

    安全の理由は、厳格な基準をクリアした産業用のロープを使用しており、このロープを外さない限り落下する心配がないためです。
    ロープアクセスは、無足場工法の中では主流な施工方法です。


    1-2.ゴンドラ作業


    ケージと呼ばれる箱を屋上から吊り下げ、
    中に乗った作業員がリモコン操作で上下左右に移動して作業を行う方法をゴンドラ作業といいます。
    ゴンドラ作業は、都心部などの建物直下に歩行者が多いエリアや、
    仮設足場は組み立てられないけれどスペースには余裕のある場合などに採用されます。


    2.無足場工法はどんな場合に使われる?




    外壁塗装やタイル・コンクリートの補修などの作業では、一般的に仮設足場を設置します。
    約40cmの床材とそれを支えるための支柱が10cmのため、組み立て時のスペースも考慮すると、
    仮設足場の設置には隣の建物との間に70cm以上の距離が必要です。

    しかし、作業場所の立地や近隣の状況によっては仮設足場を設置するスペースを十分に確保できない場合もあります。
    ここでは具体的な状況を2つ紹介します。

     

    2-1.隣家との距離が近い


    建物が密集している住宅地などでは隣家との距離が十分ではなく、仮設足場の設置ができないと判断される場合があります。
    また、都心部で仮設足場の設置を行おうとすると、足場材を積んだトラックや足場材を置くスペースが確保できない可能性もあります。

    外観に関しても、特にテナントが入っているビルなどは、
    仮設足場を設置してしまうと看板や店舗の外装が隠れてしまい営業妨害になりかねません。
    こういった場合にも無足場工法を採用することが有効です。


    2-2.隣家の敷地を貸してもらえない


    隣家との距離が近く、依頼主の敷地だけでは仮設足場を設置できない場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を組むことがあります。
    しかし、隣家と面識がなかったり良好な関係が築けていなかったりすると、敷地の所有者から承諾を得られないことも考えられます。

    隣家からの理解を得られない場合は、トラブルにならないよう、無足場工法が選択されます。


    3.無足場工法のメリット

     
    足場を必要としない無足場工法には、「足場費用のコストダウンと工期の短縮」
    「防犯上の心配がない」「近隣や店舗への影響を少なく工事が可能」という3つのメリットがあります。

    1つずつ詳しく見ていきましょう。

    3-1.足場費用のコストダウンと工期の短縮につながる


    無足場工法では、足場の組み立てや解体の必要がないため、工事費用を大幅に抑えることができます。

    新築工事や補修や修繕の範囲が広い工事の場合は、足場を組み立てた方が効率的ですが、
    部分的な作業のために足場を組み立てると非効率的で余計なコストが掛かってしまいます。

    実際に、仮設足場に関する費用は、外壁補修や修繕を行う際の費用全体の約30%を占めます。

    無足場工法は仮設足場の費用の大幅な削減だけでなく、組み立てや解体にかかる時間も発生しないため、
    工期の短縮にもつながります。
    また、仮設足場の設置には事前に近隣の方に許可を得る必要や、関係各所に届出を出す必要があり手間がかかりますが、
    無足場工法ならそういった手間も省けます。

    3-2.防犯上の心配がない


    入居者がいるマンションの補修や修繕工事などで仮設足場を設置すると、部外者がベランダなどから侵入しやすくなるため、
    防犯上不安に思う方もいるでしょう。実際、設置された仮設足場からベランダに侵入され、盗難などの被害を受けたという事例も多くあります。

    一方の無足場工法は、侵入経路となる仮設足場を作らないため、防犯面で安心できます。
    また、仮設足場を設置する場合、メッシュシートなどで建物が覆われてしまいます。
    これに伴い日差しや風通し、外の景色が遮られてしまうため、入居者の生活に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

    無足場工法ならば入居者の住空間の快適性が損なわれる恐れがなく、普段通りの生活を送ってもらうことができます。


    3-3.近隣や店舗への影響を最小限に抑えた工事ができる


    隣家との距離が近い場所で足場作業をする場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を設置する必要があったり、
    仮設足場の組み立て・解体時に音が発生したりと近隣に影響を与えてしまいます。

    一方、無足場工法なら仮設足場の組み立て・解体時の音や職人が足場上を移動する音が発生しないため、
    近隣や店舗営業への影響を最小限に抑えることができます。

    また、仮設足場を設置する場合は隣の建物との間に60~70cmの間隔を必要としますが、
    無足場工法であれば40cmほどの間隔があれば作業できるため、隣の建物との距離が近い場合でも有効です。

    4.無足場工法のデメリット

     
    メリットの多い無足場工法ですが、「作業範囲が限られる」「施工後の確認ができない」
    「対応している業者が少ない」などのデメリットも存在します。
    それぞれ解説していくので、デメリットも理解したうえで、適切な施工方法を選定しましょう。


    4-1.作業範囲が限られる


    無足場工法では、屋上にロープやゴンドラを設置して作業するため、
    三角屋根の建物や一部が突き出している形状の建物には使用できません。

    また、仮設足場ならば作業員が上下左右に自由に移動して作業ができるのに対し、
    無足場工法では移動範囲が限定されてしまいます。
    補修や修繕などで広範囲に作業を行う場合は、仮設足場を設置する工法のほうが作業効率が良いといえます。

    4-2.施工後の確認ができない


    無足場工法では、施工場所に作業員しか立ち入ることができないため、依頼主は補修状況を目視で確認することができません。
    補修後の状況を実際に目で見て確認したい依頼主に対しても、写真で確認してもらうしかないのです。


    4-3.無足場工法に対応できる業者が少ない


    徐々に注目されてきている無足場工法ですが、通常の足場工法に比べて対応している業者が少ないのが現状です。
    コスト面を考慮して無足場工法を選定したくても、地域やタイミングによっては対応できる業者が見つからない場合もあります。

    5.まとめ




    今回は、無足場工法が使われる状況やメリット・デメリットを解説しました。
    近隣への影響が少なく、コスト面でも優れた無足場工法ですが、
    利用するには施工する建物の形状・作業範囲・業者選定などの制限があります。

    そのため、細かな条件を考慮したうえで、無足場工法の採用を検討することが重要です。
    本記事を参考に無足場工法が選択肢に入るかどうかを含め、近隣への影響に配慮した安全な工事現場を目指しましょう。
  • ロングスパン工事用エレベーターとは?建設用リフトとの違いや設置基準を解説
    工事現場ではロングスパン工事用エレベーターという言葉を耳にしますが、どんな役割や設置基準があるか知っていますか?
    ロングスパン工事用エレベーターの設置基準を知っておくことで、現場の作業性はもちろん、安全性も向上します。

    今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説します。
    本記事を読むことで、ロングスパン工事用エレベーターの設置ルールについて理解し、
    現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。


    ▼ 目次
     1.ロングスパン工事用エレベーターとは?
        2.  建設用リフトとの違い
       3.  ロングスパン工事用エレベーターが使用される現場は?
       4.  ロングスパン工事用エレベーターの設置基準
            4-1.  ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生
           4-2.  ロングスパン工事用エレベーターの搬器
           4-3.  ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重
           4-4.  ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔
           4-5.  ロングスパン工事用エレベーターの安全装置
        5.  まとめ


    1.ロングスパン工事用エレベーターとは?



    ロングスパン工事用エレベーターは、建築や土木の工事現場において人や資材を運搬するために使用されるエレベーターのことです
    。運転に資格や就業制限などはありません。ただし、エレベーターの設置には行政への届出が必要になります。
    また「運転方法の周知」として、エレベーターを使用する労働者に運転の方法及び故障した場合における処置を周知させる規定があります。

    エレベーターの構造や周囲の安全設備については、厚生労働省の「エレベーター構造規格」によって強度や規制が課されています。
    ロングスパン工事用エレベーターの規格は、昇降速度が10m/min以下で、積載荷重は1トン程度の製品が一般的です。

    また、ロングスパン工事用エレベーターは、エレベータ構造規格第16条においては、
    「工事用エレベータであって、搬器として三メートル以上の荷台を使用し、定格速度が毎秒〇・一七メートル以下のものをいう」と定義されています。


    2.建設用リフトとの違い


    建設や土木の工事現場において、ロングスパン工事用エレベーターが人と資材をともに運搬できるのに対して、
    建設用リフトは、資材を運搬することのみを目的とするエレベーターのことを指します。

    建設用リフトは、押しボタンスイッチの操作によって簡単に荷物の揚重を行うことができます。
    ただし、建設用リフトの運転業務に従事するには、建設用リフト運転特別教育を修了するか、それに準じた処置を受ける必要があります。
     

    3.ロングスパン工事用エレベーターが使用される現場は?

     
    ロングスパン工事用エレベーターは、市街地などでクレーンなどの大型重機が利用できない、
    または利用しにくい立地条件の作業場所で材料や人の揚重を効率的に行うために活躍します。

    また、建設中の各階で使用する材料をクレーンにて揚重する場合、足場に荷揚げ用の開口ステージを組み立てなければならず、
    開口部となるため安全面でも非常にリスクが高いといえます。

    そこで、ロングスパン工事用エレベーターを適切に設置することで、作業性と安全性の向上を期待できます。


    4.ロングスパン工事用エレベーターの設置基準



    便利なロングスパン工事用エレベーターですが、適切に設置されていないと非常に危険で、事故の原因となります。
    実際に工事現場でのロングスパン工事用エレベーターに関する事故事例も少なくありません。

    事故を避けるには、厚生労働省の「エレベーター構造規格」に定められた設置基準をしっかりと守ることが重要です。
    ここではそのルールについて解説します。


    4-1.ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生


    ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生については、エレベータ構造規格において、
    「出入口(非常口を含む。次号において同じ。)の部分及び人が近づく恐れのない部分を除き壁又は囲いが設けられていること」や
    「出入口に戸が設けられていること」、「前項第一号の壁又は囲い及び二号の出入口の戸は不燃材料で造り、又は覆ったものでなければならない」
    と定められています。

    ここで述べられている「人が近づく恐れのない部分」とは、搬器の昇降する通路の周辺であって、
    床面から1.8m以上の部分で、周囲に足場などのない部分をいいます。

    また、「壁又は囲い」とは、人体等を昇降路と遮断するものであり、手指等が入らない鉄鋼等を用いたものを指します。

    ロングスパン工事用エレベーターによる挟まれ、巻き込まれ事故はよくある事例のため、手指が入らないよう、
    しっかりと養生する必要があります。

    4-2.ロングスパン工事用エレベーターの搬器


    ロングスパン工事用エレベーターの搬器は、人が乗る部分と荷を積む部分から成ります。
    エレベータ構造規格第21条第2項にて、人が乗る部分(搭乗席)の周囲は高さ1.8m以上の囲いを設け、
    頭上には堅固なヘッドガードを取り付けるよう定められています。

    人はこの囲いとヘッドガードが取り付けられた場所にしか乗ってはいけません。
    また、荷物を積む部分には高さ90cm以上の手すりを取り付けます。


    4-3.ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重


    エレベータ構造規格第22条において、ロングスパン工事用エレベーターの搬器の積載荷重は、
    「搭乗席の床面積一平方メートルにつき二百六十として計算を行って得た値に搭乗席以外の部分の
    床面積一平方メートルにつき百として計算を行って得た値を加えた値」以上でなければならないと記されています。

    具体例として、人が乗る部分(搭乗席)の床面積が1m2であり、その他の部分(荷物を積む部分)の床面積が5m2だとします。
    この場合の積載荷重は、以下のようになります。

    搭乗席:1(m2)×260(kg)=260(kg)
    その他:5(m2)×100(kg)=500(kg)
    ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重:260(kg)+500(kg)=760(kg)

    積載荷重は、ロングスパン工事用エレベーターの各メーカーと機種によって異なる値が定められているため、
    しっかりと確認して搬器の見えやすいところに掲示しておき、使用する際にその値を超えないよう管理しなければなりません。



    4-4.ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔


    エレベータ構造規格第23条において、ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔について
    「昇降路の出入口の床先と搬器の出入口の床先との間隔は、四センチメートル以下でなければならない」、
    「昇降路壁と搬器の出入口の床先との間隔は、十二・五センチメートル以下でなければならない」と定められています。

    つまり、各階の昇降路の接する床面において、床先の間隔を出入口部では4cm以下、
    その他の部分では12.5cm以下となるようにロングスパン工事用エレベーターを設けなければなりません。

    設置の際は、数センチずれただけでロングスパン工事用エレベーターと昇降路の床が接触してしまう恐れがあるため、
    経験を積んだ鳶工により、建物の逃げ墨や下げ振りなどを使用して設置してもらうとよいでしょう。

    4-5.ロングスパン工事用エレベーターの安全装置


    エレベータ構造規格第32条において、ロングスパン工事用エレベーターには、以下の安全装置を備えなければならないと記されています。

    ・搬器の昇降を知らせるための警報装置
    ・搬器の傾きを容易に矯正できる装置
    ・搬器の傾きが十分の一のこう配を超えないうちに動力を自動的に遮断する装置
    ・遮断設備が設けられているものにあっては、遮断設備が閉じられていない場合には、搬器を昇降させることができない装置
    ・走行式のものにあっては、搬器を最下部に下げた状態でなければ走行させることができない装置

    ロングスパン工事用エレベーターの搬器が昇降する際には、近くにいる作業員が挟まれたり巻き込まれたりしないよう、
    必ず警報音が鳴るように設定しておく必要があります。

    また、昇降しているうちに左右に傾きが生じてしまうため、それを自動で矯正する装置を備えるとともに、
    勾配が10分の1を超える前に停止する装置を備える必要があります。

    これらの装置が正常に稼働しているかを日々点検し、異常がない場合でも専門業者に定期的に点検を依頼する必要があります。


    5.まとめ




    今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説しました。
    便利なロングスパン工事用エレベーターですが、安全のための設置基準を遵守することが、現場での事故を防ぐためには重要です。

    本記事を参考にロングスパン工事用エレベーターを適切に使用し、現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。


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